第12話 息苦しい2年間
時は風呂場で死にかけてから1週間が過ぎた頃
学校の制服に身を包み俺は玄関下で靴の紐を入念に結ぶ
まるで小学校に初めて行く新小学一年生の気分だ
いやまぁ…客観的にみたら不思議な事じゃないけどさ
制服は夏服を取り出したため、半袖に仕上がっている
服に使われている大半の色は薄水色で素材はサラサラでかつ生地がしっかりしていてこの薄さに対して相当丈夫だ
腰上辺りに巻くベルトによって膝下ぐらいにまで伸びるワンピースに区切りをつけている
セーラー服みたいな襟が首周りにあり、胸元まで届く襟の先端には蝶々結びの紐が括り付けており、これはただの装飾のようだ
ちなみに家にはこの服を長袖にしたものとこの服の上から羽織る用の紺色のブレザーがあり、そちらは布が分厚く防寒対策がバッチリであった
「…楽しみだなぁ。」
軽いステップも交えながら家から出て学校に向かう
正直時間がわからないため、部屋の窓から学生が見えた瞬間に家を出たのだが…
大丈夫そうだな
周りを見ると、同じ服を着た学生たちがちらほらいる
学校に着くと、門の手前の壁に人だかりが複数できていた
なんだ?
と思い1番近い所に近づいてみると、喜びの声を上げる者、隣の人とハイタッチする者、「来年は同じになるといいな」と少し悲しげな顔を見せる者など様々であった
多分これは…クラス決め…かなぁ?
皆が集まってる中央には何が規則的に置かれた文字が載っている看板があるのだが…
俺!読めないんだよ!
あれ?どうしよう。もしこれがクラス名簿とかだったら自分のクラス分からなくね?
結構まずくね?
誰か、先輩とか…
チクショー先輩と行けば良かった…なんで朝起きた時にはいなかったんだろ。
早く目覚めたから早く家を出たとか?
腹が減ってるからなんかイライラしてんな…
あっ…
先輩ご飯食べに行ったのか
つい納得して手でポンッと音を鳴らした
「リュウカちゃんおはよう〜」
人混みから一歩引いたところで看板をポケーっと見ているとフユナ先生が声をかけてきた。
タイミング神か?
フユナ先生は胸あたりで手を振りながらてくてくとこっちにやってくる
「おはようございます。ちょっと自分の書かれている所が分かんなかくて…」
「リュウカちゃんは私と同じ教室よ。一緒に行きましょう。」
フユナ先生のご厚意に乗っかってそのまま教室へと向かっていった
…?同じ教室?…あっ!フユナ先生はうちのクラスの担任なのか!
でもギルドも担当してなかった?
「フユナ先生ってギルドでも勤務してなかった?」
「あー…それなんだけどね。最近この街の教師が不足してるらしくてね。文字の読み書きぐらいしか教えない下の生徒たちは別の国営のギルドとかの職員が担当することになったのよ。なんか私、このまま従業員不足が続けば魔法学科の教師もやらされそうで怖いのよね」
へぇ〜そうなのか。大変なんだなぁ。やっぱりどの世界でも教師不足はあるんだな
フユナ先生がガチャっと教室の前側の外開きの扉を開ける
教室の席は階段状になっており、後ろにいくにつれて高くなって行ってる
これぞファンタジーってのが出てきたね。こうゆうの憧れてたんだよなぁ
龍?知らん知らん
中には6人ぐらいの子供がばらばらに座っており、皆一斉にこちらを上から見上げる…
かと思うとすぐさま下を向き自分の荷物を確認しだした
先生が来たんだぞ?普通こう…先生の元へ行くとかあるだろ
「リュウカちゃんは…えーっと…ここね」
案内されたのは教室を入って手前から二列目の…教室の前には教卓があり、その壁には黒板が貼られているのだが、そこから見て1番右側だ
俺はそこに腰掛けて暇だったので教室内を眺めていた
…一年生だから誰なのかわからなかったのか
というか不安だもんな。どんな先生かも分からないしね
今気付いたのだが、さっきからここにいる生徒全員がチラッチラッと隙を見てフユナ先生を観察している
ふふふ、なんだか微笑ましいじゃないか
ちなみに教卓から見て右側…つまり俺の席の近くの壁は窓でできており、左側には廊下がある感じになっている
窓はガラスではなく外開きの扉が括り付けられており、今は開けるだけいっぱい開いている
あ、そうそうガラスの件についてなんだが…
聞くところによるとガラスは高価なもんであまり大きいものは手に入らないらしい。だから小さいものはちょっと高いけどリーズナブル、窓並みのサイズになると金持ち御用達となるそうだ
フ…匿名Fがそう言っていた
当人は窓際で外をじっと眺めている
「おはようございま〜す!」
威勢の良い声が教室にこだまする
元気な子もいるね。よかったよかった
その声を境に人がどんどんと流れてきて…
やがて教室の席は人で埋まり、おおよそ30人といったところかな。
隣の席の子はオラオラ系の金髪男子だった
近づきたくねぇ〜
などと周りを観察していると、教壇に立ったフユナ先生が声を張り上げる
「皆さーん!おはようございまーす!ギ年ギ組の担任になりました。マキメ・フユナと申します。みんな〜!ギ年間よろしくね!」
少しの不安要素はあるけどこれからの学校生活…楽しくありますように
…と、思っている時期が私にもありました
「みんな〜!ギ年間ありがとうございました!忘れ物しないようにね〜!」
一年生になってから1年がたち、俺たちは今日終業式を行い一年生を終えた
いやぁ〜あっという間だったな〜
っておいっっ!!!!!!!
おかしいだろっ!!!!
この1年間何も起きなかったんだが!!???
友達も1人も出来なかったよ!!!!
ぼっちだったよ!!!!
入学式から1週間…周りの人に話しかける機会を損ね、そこからずぶずぶとボッチ街道まっしぐら
…うぅ…泣きそう
あのくそ金髪野郎がぁ!
初日から自席で8人ぐらいの男子囲ってんじゃねぇよ!!!
そのせいで席から動けなかったわ!!!!
ちょっと怖くて机に突っ伏して寝たふりしてたわ!!
…それは俺のせいでもあるな…
まぁいい!地獄の1年は過ぎ去った!!
これから俺は2年生を謳歌するのさ!!!
さて、時は少し飛んで2年生入学式
俺は平仮名に当たるところの当たり障りなく読めるようになったのだ。数字もいけるぞ
この体が5歳で良かったよ。一年生の教育プログラムによって基礎からみっちり叩き込んでくれたからな
俺はアラビア数字が好きだからな。人と話す時以外基本これを使うぜ!
…人と話せればね。
隣また金髪野郎だよ!!
ちくしょー!!!!
これから2年生もなんの特徴もない地獄のような学校生活を送ることとなるんだが…
1つだけあったな。2年生中に思い出に残る事。いや2つあるな
1つ目は二年生は漢字を、そして数学…算数を勉強したのだが…
やはり相手は齢6がやる程度のものばかり。無双しまくった。
それだけ
そして2つ目、こっちが本命
2年生の終わり頃、3年生になると科目が別れるため、それを決めるために科目選択を行なったのだ
まずは本人がどこに行きたいかという事を調査する希望書を書いた
俺はもちろん魔法科を選んだ
魔法には強い憧れがあるのだ
次に魔法科の場合、魔法適性があるのかという審査を行う必要があった
そこでは一定以上の魔力も必要と書かれており、終わったと思った
なぜかというと、授業の合間に昼寝する事を強要された俺は睡眠が好きになってしまったらしく、1年間をひたすら睡眠に費やしてしまったのだ
そのため魔力を増やす修行のことなど頭になく、赤子の魔力しかないと思っていたのだ
だが、ここはアズサ姉さんが俺に10倍以上の魔力を風呂場の時にぶち込んでくれたおかげでぎりぎり通れた
アズサ姉さんには風呂場の時から2週間ぐらいの期間、猛烈にお腹が空いた時に助けてもらったなぁ
…今でもたまに夕食を頂いてるけどね
そうそう、俺の魔力が増えたことは後で発覚した事実なんだがなんで発覚したかというと…
少しその話をしようか
まず、あの鑑定板には病気になった時名前の隣に[病]というマークが表示される。その部分を追い鑑定して病名が分かるらしい
あぁ、これは一年生の冬に起きた話なのだが、この街は冬に流行る病がある。簡単にいうとインフルみたいなもんで症状も類似している
話の流れ的に分かると思うが俺は流行り病に患い、その時に鑑定したのだ
HPが1,3倍ぐらい、SPが1,2倍ぐらい増えていて成長したなぁとか思ってたらMPが10倍近く増えていた。
正直最初理解できず、病気で体温が高いのにその状態の脳が処理落ちしたもんで無事知恵熱も発症した
普通に死ぬかと思った
…一年生で思い出あったじゃん…
こんなのが唯一の思い出とかやだなぁ
まぁそんなこんなして無事、そんな無事でもないけど俺は3年生から魔法について学べることが決まったのだ
もう学校には期待しないけどね!!!
とか言いながら少し期待している俺であった
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