永遠の童貞を代償に最強のチートを得た俺は、異世界で非モテライフを満喫する

まるせい(ベルナノレフ)

第1話 最初は四択

『選ぶのじゃ』


 目の前には四つの選択肢が浮かび上がっていた。


 ①『あらゆる剣技を扱える勇者として転生する』


 ②『あらゆる魔法を扱える賢者として転生する』


 ③『あらゆる精霊に好かれる精霊使いとして転生する』


 ④『それら全てを得られる代わりに永遠の童貞に転生する』


 SNSなどでよくある、どれをとっても自分に利がある絶対に損をしない選択肢というやつだ。


 これまで俺は、この手の投稿を見るたび無意味だと笑ってきた。


「自分ならどうする?」といくら考えたところで得られるものはなく、実際に議論したところで手に入らないので虚しいだけだからだ。


『選ぶのじゃ』


 だが、こうして目の当たりにすると、あの問題はこんなにも薄っぺらいものだったのかと思わざるを得ない。


 勇者になる? 賢者になる? 精霊使いになる?


 どれも成功を約束されているようでありながら、得た後の人生について一切触れられていないのだ。


 レベルがどうだとか得られるスキルがどうだとか……。


 そもそもこの空間からして非常に胡散臭い。

 先程まで自分がどうしていたかを思い出そうとするが、直前の記憶のみすっぽり抜け落ちている。


 記憶による干渉が起きているのは明らかで、異世界転生の前兆ではないかと推測が立つ。


『選ぶのじゃ』


 先程から聞こえてくる声は、まるでそれ以外言えないかのように同じ言葉を繰り返しており、老人口調から神を推測させようとしているのだろうか?


 本来なら、ここにずっとい続けて状況が変わるのを待つのも手かもしれないが、退屈極まりないこの場にいるのは面倒だ。


 そうなると、やることといえば目の前の選択肢について考えることだろう。


 勇者に賢者に精霊使い。どれもおそらくとても強力な職業だと思う。

 剣と魔法のバランスが取れた勇者は前線でも活躍できるだろうし、攻撃に治療に補助と魔法を扱える賢者はパーティを支える欠かせない職業。


 自然現象を操る精霊使いは森羅万象を操作し、気候をも操ることができるかもしれない。


 人智を超えた途方もない力を持つ可能性があるこれらの職業はまず間違いなく異世界でも活躍できるし引っ張りだこになるだろう……。


「というか、選択肢一つしかなくね?」


『選ぶのじゃ』


 だが、それは能力に限った話であって、実際にモテるかどうかについて話は別だ


 手前味噌な話になってしまうのだが、我が家はかなり裕福な家庭だった。

 商社勤務の父親がおり、住んでいたのはタワーマンション。幼少期より習い事をさせてもらっていたおかげか、勉学・スポーツにも秀でておりクラスでも俺より優秀な人間はそうそういなかった。


 一流大学に現役で合格し、数年が経つのだが…………。


 これまで一切女性と親しくなったことがなかった!


 正直、顔も悪くなければ服もブランドを着ているしモテないまでも浮いた話の一つくらいあってもおかしくなかった。


 だけど、周囲に女性が寄りつくことはなく、今後もモテることはあり得ないだろう。


 その点を加味すると、かの条件に対しても見方が変わってくる。



 ①『あらゆる剣技を扱える勇者として転生する』←ただしモテないから一生童貞です


 ②『あらゆる魔法を扱える賢者として転生する』←ただしモテないから一生童貞です


 ③『あらゆる精霊に好かれる精霊使いとして転生する』←ただしモテないから一生童貞です


 ④『それら全てを得られる代わりに永遠の童貞に転生する』←デメリット無し!


 普通の人間なら、童貞を確定させるかどうかで悩むかもしれないが、俺にとってはデメリットが存在していない。



『選ぶのじゃ』


「せっかくだから、俺は④を選択するぜ!」


 真っ白な光が降り注ぎ、浮遊感を感じる。


 こうして俺は、なんだかよくわからないうちに異世界に転生することになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年12月23日 12:15
2024年12月24日 12:15

永遠の童貞を代償に最強のチートを得た俺は、異世界で非モテライフを満喫する まるせい(ベルナノレフ) @bellnanorefu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ