第10話 新たな対戦相手

「賢一です……彼女の人格には4人の人格があるらしいとの事です。しかも、彼等にもよく分かっていない人格があると説明を受けました。その人格は他のどの人格より破壊的で殺戮を楽しむというものです……」


賢一はスマホで相手に向かって会話し、カメラのモニターを確認する。すると、美怜が拘束衣を着せられた状態で眠っている姿が映し出されていた。


「そうです……一応、2人の人格は制御できています……はい……分かりました、彼女をもっと戦わせ新しい人格を引き出してみようと思います……はい……尽力致します……」


そう言うと通話を終了し賢一は溜息をつくと美玲の顔を眺めたのである。


(組織は彼女を使って何がしたいんだ……?)


彼はそう思いながら考え込んでいると目の前に彰がいる事に気付き驚きの表情をしたのだ。


「兄さん、組織は彼女をどうする気なんだろう?」

「わからん……恐らくだが彼女を究極の人間兵器にしたいのかもしれん。それで、もっと戦わせ新しい人格を引き出して最終的に人格の統合をして制御したいのかも……」


そう答えると彰も納得して頷いていたのである。すると、彼はふと何かを思い出したかのように質問したのであった。


「彼女から出てきた人格を区別する為に名前を付けたらどうだい……?」

「そうだな……じゃあ、お前なら何て付ける?」


賢一がそう聞くと彰は腕を組んで考え込み始めたのである。そして、暫くして彼は答えたのであった。


「僕は彼等の性格のイメージから取って、『尊大』・『冷徹』なんてどうだろう……?」

「いいんじゃないか? それで決定だな……」


双子はそう言うと施設のスタッフ達にもその事を伝えて了解を得たのであった。すると、賢一はモニターで眠る美玲の顔を再び眺めたのである。


(彼女はこれからどう変わっていくんだろうか……?)


そう思うと不安が込み上げてくるのだが、同時に楽しみでもあったのだ。何故なら、今まで誰も成し遂げられなかった事に挑戦するのだから……。




美玲は目を覚ますと拘束衣を外されたが、今日試合がある事を彰から伝えられた。そして、彼女は部屋で此れからについて聞かされたのである。


「これから、君は相手と戦うんだ……。心配しなくていい、いつも通りに相手と向き合えばいいんだ……」


彼女は、彰にそう言われても未だに実感が湧かずにいた。だが、それ以上に気になる事があり彼に質問したのであった。


「……本当に人を殺してもいいの……?」


すると、彼は少し間を置いて答えたのだ。


「ああ……そうだ……正確には君の人格が目覚めて殺しているから問題ない……。前にも言ったように警察はおろか、誰にも気付かれないように処理できるんだ……」


彼女はそれを聞いてもまだ納得できずに自分の手で無意識に頬を触ると、雲川から付けられた頬の切り傷が傷跡もなく治っていたのであった。


「怪我が治っている……?」


美玲はそう呟くと、不思議そうな顔で質問をしてきたのである。


「君が寝ている間に僕が治療をしたのさ……、他の医者が治療しても一生消えない傷跡が残るだろうね」

「どうして……?」


すると、彰は彼女の頬の傷を優しく触りながら説明を始めたのである。


「僕の能力で傷を治療したからだよ……。だから、もし手足が切断されても僕が手術して繋げれば後遺症もなく動かせるよ。あっ! 首や胴体を切断されたりしたら無理だけどね」

「……」


彼が自分の能力を嬉々として喋る姿に美玲は引きつった顔をしながら唖然としていた。そして、彼女は心の中で疑問に思っていた事を彰に聞いたのであった。


「貴方達、兄弟は……何故、裏社会で闇医者みたいな事をしているの……?」


美玲の質問に彼は少し間を置くと口を開き答え始める。


「それは、僕達の能力が裏社会においても必要な存在だからさ……」


そして、彼女の質問に対して寂しげな表情で答えるのであった。その言葉を聞いた彼女はただ黙って聞いているだけであったのだ……。


「だから、僕達の能力を証明出来ない以上、裏で生きていくしかないんだよ……。そして、その道を選んだ事を後悔もしていない……」

「……」


彼女は黙って聞いていたが、彼の寂しそうな表情を見ると何も言えずに黙り込んでいた。そして、彼は美玲の肩に手を置き話し掛ける。


「ごめんね……。上手く、君の質問に答えられなくて……」

「いえ、別に大丈夫です……」


そう言うと彼の顔をジッと見詰めたのである。すると、彰は照れ臭そうにしながらも微笑んでいたのだ。


(本当に裏社会で生きていて後悔はないの……?)


心の中でそんな疑問が生まれていると、彼は咳払いをし話を切り替えたのである。


「じゃあ、そろそろ行こうか?」

「はい……」


美玲が返事をすると二人は部屋を出て試合場に向かうのであった……。




2人は試合場に着くと、美玲は緊張した様子で深呼吸を繰り返して緊張を和らげていた。すると、彼女は彰に話し掛けるのであった。


「あの……戦う事でしか人格が表れないの?」

「彼等も身の危険を感じて表れるから、君を助ける筈だ」


彼はそう言うと彼女の手を優しく握ると微笑み掛けたのだ。そして、美怜は彰に見送られながら入り口の中に入ると、暗がりの中に相手が薄っすら現れたのである。

中に入った途端、中にいる男が見え柵越しに話しかけてきたのである。


「今日はよろしくお願いします……」


相手は丁寧に挨拶して頭を下げたので美玲も慌てて頭を下げると挨拶をした。


「こ……こちらこそ宜しくお願いします……」


そして、お互い柵を通して相手を見詰めていた。男は30代ぐらいで痩せ型の体型で黒縁の眼鏡をかけており、目は糸のように細い。

そして、彼はシャツを着ていて下にはジーパンを履いている服装であった。すると、男は美玲を見ると笑みを浮かべ話し掛けるのであった。


「私は五十嵐いがらしたくみという者です……貴女の名は?」

「えっ……わ……私は月宮美怜です……」


美怜がそう答えると彼は笑みを浮かべながら彼女の事を見詰めていたのであった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る