【カクヨムver】異世界転移してしまった【犬】に生きる道はないのだろうか?
鍛弧(かこ)
零話 ご主人と犬
夢から覚め、ごはんをもらうためにご主人を起こしにいく。
「ハァハァハハァ」
そんな声を出しながら、ご主人を起こす。
「わかった。わかった。ごはん用意するからどいてくれ」
こんな朝が毎日繰り返されている。
ご主人との出会いは、たぶん4年前だと思う。
ペットショップで初めて会った。
ご主人は、飛び跳ねながらこっちを見ている。
うっすら聞こえる声は、今でも鮮明に覚えてる。
『お母さん!この犬!この犬だよ!この犬あの小説で出ている犬に似ているよ!』
なにかお母さんに言われてご主人は、しょんぼりしていた。
その日は帰っていった。
その日から、ご主人は一人でも毎日のように僕のところに来た。
そして、いつの間にかご主人の家にいた。
(この人はいつも来てた人だ!)
何か月か経って、ご主人とも親交が深くなった。
ご主人は、中学校?って場所に行くようになったらしい。
朝、家を出る時間も早くなった。でも僕と遊んでくれた。
勉強も大変そうだし、よくお母さんともけんかをしている。
お母さんが言うに、反抗期ってやつらしい。
そしてすぐに高校?って場所に行くようになったらしい。
帰りも遅くなった。でも僕と遊んでくれる。
でもある日を境に、ご主人は家を出なくなってしまった。
よくお母さんと喧嘩をしている。なんだか家の空気も悪い。
でも僕は、ご主人が好きだ。
僕とずっと遊んでくれる『同族』だからだ。
(今日もボールで遊んでくれるのかな?)
でも今日は違った。
「ちあ、おいで」
(ん?今日は何をするんだろう?)
「今日は、アニメってやつを見るぞ!」
(アニメ?なんだそれ...)
でも僕はじっと動いている画面を見た。
(これご主人は面白いのか?なんかずっと画面が動きながら声がするだけだぞ?)
僕は暇で寝ようとした時だった。
ご主人は言った。
「アニメっていうのは、『キャラクターたちの関係』と『キャラクターの歴史・設定』が面白いんだ。
関係性は、どんなものなのか。どんな時系列なのか。設定は、作者の思い入れがたくさん詰まってる。
ゲームだってそうだ。それを考えながら見るのが面白いんだ」
その言葉を聞いて僕は思った。
(ご主人は、アニメによっぽどの愛情があるんだな)
その日から毎日、アニメを二本立て?をしていた。
とても楽しかった。いろいろな言葉も意味も覚えた。
月日は流れた。
お母さんは、ご主人が高校?に行かなくなって2年ほどたったときに僕とご主人を残して亡くなった。
ご主人はお母さんの骨の前で言った。
「母さんごめん。俺は確かに、高校を不登校になってすごく迷惑をかけて親不孝者だけど絶対に『ちあ』は俺が最後まで面倒を見るよ。だからさ心配しないで成仏してくれよ。最後くらい親孝行したいんだ」
とご主人は告げた。
月日は流れ、今日になったというわけだ。
(今日もアニメ見るのかな?)
ご主人は、ご飯を食べながら言った。
「アニメを見たそうな顔しているけど、今日はちょっと違うよ。今日はゲームだ!」
(ゲームってあのご主人がよく怒っているやつか)
「ちあは、アニメでも見返すか?」
(見返すのもいいな!)
僕は縦に頭を振った。
時間が過ぎるのは早いものだ。
もう夜。
ご主人は言った。
「明日もアニメ見るか?」
僕は縦に頭を振った。
そして、今日も終わった。
(この日常が最高だ!)
でも日常が崩れ去るのは一瞬だった...
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます