第87話

ヒューゲンの率いる艦隊は無駄な抵抗を続けていたがエニュー帝国皇帝であるアルベルトの艦隊が包囲するように現れると投降を開始した。

ここまで来たらトキノリ達に出来ることはない。

最初に砲撃を中止した艦隊から通信が送られてくる。

「見慣れない船だが救援に感謝する」

そう告げた声を聞いてユーラシアが通信に割り込む。

「お父様。ご無事ですか?」

「ユーラシアか。危険を避けるためにマルエ公爵のところに逃がしたというのに・・・」

「それはすみません。ですが、私はこうして無事です」

「偉そうなことは言えぬか・・・。救援が間に合わなければ私は死んでいただろうからな」

「そう嘆くこともないのじゃ。生きている。それだけで価値のあることなのじゃ」

「アナスタシア皇女殿下。ありがとうございます」

「父上からも説明があると思うのじゃが・・・。サルベン公爵。今回の反乱を抑えられなかった責で公爵を降りてもらうことになるじゃろう」

「そうですか・・・。弟の造反を抑えられなかった私の責任は重大です」

「新公爵としてユーラシアが立つことになるじゃろう。じゃが、ユーラシアは経験が足りぬのじゃ。その穴を埋めてもらうことになるじゃろう」

「それでは、実質的に罰にならぬのでは?」

時期としてはかなり早まったがユーラシアが現公爵であるセードの後を継ぐのは決まっていたのだ。

あと数年もすれば少しずつ実権をユーラシアに譲っていく予定だったのだ。

「サルベン公爵領を誰より知っているのはそなたじゃ。民の安寧を考えれば妥当な選択肢じゃろ?」

「わかりました。この命が続く限り民の為に力になりましょう」

「お父様。頼りにしています」

話している間にもヒューゲンの率いていた艦隊の武装解除は進んでいた。

仕事を部下に押し付けたのか皇帝であるアルベルトの座乗艦であるプロミネンス級戦艦が中央から近づいてくる。

周囲は傑作艦と呼ばれるイージス艦であるテュールが固めていた。

「セードよ。無事でなによりだ」

「陛下。公爵の位を授けられていながらのこの体たらく。申し訳ありません」

「そう思うのならもっと早く救援を要請してほしかったな」

「陛下の手を煩わせたくなかったのです」

「プライドも大事だが、結局、私が出張ってきているからな」

「はっ。申し訳ありません」

「謝罪を聞きたいわけではない。アナスタシアから今後のことは聞いたな?」

「はい。温情を賜りありがとうございます」

「お主の弟とそれに賛同した者達だがバラバラに辺境に送ることになるだろう」

「そうですか・・・。したことがしたことですので私からは何も言えません」

辺境送りとはこれでもまだ、温情のある処罰だ。

何もない宙域を開発することになるが必要な物は用意される。

生きている間、中央に戻ることは不可能だ。

だが、開発した宙域は貢献度により子孫への継承が可能だ。

野心の塊であったヒューゲン達には丁度良い罰になるだろう。

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