第57話
マルエ公爵領の主星までは問題なく到着した。
「ここまで来ればもう手出しは不可能だ」
「一時はどうなることかと思いましたが・・・」
「トキノリ殿。船の方は軍のドックに入れるが構わないか?」
「はい。問題ないですよ」
カールは慣れた様子で手続きをすると雪風を軍のドックに停泊させた。
「この快適な船ともお別れか・・・」
そう言って名残惜しそうにしている者もいた。
雪風から降りると気難しそうな細身の老人が待っていた。
着ている服は装飾の施された高そうな服を着ている。
「叔父様。わざわざ待っていてくれたのですか?」
そう言ったのはイルカの抱き枕を抱えているユーラシアだった。
「本当に無事でよかった。ここまで大変だっただろう?」
「いえ。助けてくれた方が親切にしてくれましたので」
「そうか・・・。君がハラヤマトキノリ君だね?姪をここまで連れてきてくれて感謝する」
「いえ。乗り掛かった船ですので」
「このお礼は必ずさせてもらおう。まずは地上に降りてゆっくりしてほしい」
「ご厚意に甘えさせていただきます」
「閣下。ご歓談中失礼します」
そう言ってカールが発言する。
「なんだ?」
「この船の整備と来る途中で使用した兵器の補充をしたいのですが、構いませんか?」
「当然の判断だな。任せる」
「ありがとうございます」
カールはそう言って頭を下げる。
「トキノリ殿。万全の状態にしておくからな」
「お気遣いありがとうございます」
「では、そろそろ移動しよう」
マルエ公爵はそう言って歩きだす。
ユーラシアとトキノリはその後を追いかけた。
到着した先にはスイレン星系で見たのと同じ機種の降下挺が待っていた。
全員が乗り込み椅子に座ると同時に降下挺が動き出す。
「何か飲むかね?」
そう言ってマルエ公爵が聞いてくる。
「では、コーヒーをお願いできますか?」
「構わんよ」
そうマルエ公爵がいうと控えていた使用人がコーヒーを淹れて差し出してくれる。
「ありがとうございます」
トキノリはまず匂いを楽しむ。
コーヒー独特の香ばしい匂いがする。
続いて飲めば僅かな苦味を感じるもののすっきりとした後味が口全体に広がった。
「美味しいですね」
「そうかよかった。人によって好みがことなるからな。気に入ってくれたようで安心したよ」
そう言っているマルエ公爵とユーラシアは紅茶を飲んでいた。
「叔父様。私はこれからどうなるんですか?」
「自由に過ごしてくれて構わないよ。やりたいことがあるならいくらでも支援しよう」
「では、我儘を1つ聞いてくださいますか?」
「ほう。もうやりたいことがあるのか」
「ずっと考えていたのです。助けてくださったトキノリ様のお役に立てる方法はないかと」
「してその方法は?」
「運送会社を新たにつくりたいのです」
「運送会社か。いい考えではあるが、トキノリ君の意見をも聞かなければな」
マルエ公爵はそう言ってトキノリの意見を聞いてきた。
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