俺んち、地下帝国つき〜祖父が勇者だったらしい俺、家ごと異世界転移したら魔王と恐れられましたが、目指すは伝説の引きこもりスローライフです〜

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

第1話 突然異世界転移に巻き込まれた

「マジ誰も掃除してねえのな。」

 ホコリのつもった祖父宅に文句を言いながら、黒田勇介は灰色のスウェット上下姿で、祖父の家の押し入れを漁っていた。


 急に両親を交通事故で亡くし、天涯孤独になってしまったが、裁判の結果相手の過失が100%であるとされ、保険金がおりた。

 相手からの慰謝料も入った。


 それも両親分だったのでかなりのまとまった金額だ。勇介は早々に大学をやめ、賃貸だった我が家を引き払って、引きこもりスロー生活をする為に、祖父の残した家へと引っ越して来たのだった。


 持ち家とまとまった金があれば、働かなくとも散財しなければ暮らしていかれる。

「働いたら負け、ってね。」


 元々大学に行ったのだって、社会に出るのが嫌だったからに他ならない。もう自分は汗水垂らして働かなくても暮らしていかれるのだ。引きこもらなくてどうする!と思った。


「──ん?なんだこりゃ。ばあちゃんの持ち物か?高そうな鏡だなあ……。」

 押し入れから出て来た楕円形の鏡は、枠の部分に宝石がいくつもはめ込まれたようなデザインの、銀色のかなり大きな物だった。


「これも売ったらいくらか金になるかね?」

 そう思いながら、勇介はホコリを払おうとして、鏡についた宝石に触れてしまった。


「──あれ?急に外が暗くなった?」

 明るいうちに掃除しようと朝からやって来たのだ。太陽が雲に隠れた程度で、ここまで夜といっていいほど真っ暗になる筈はない。


 だが、窓の外を見ると、木で出来た壁の向こうは、もうすっかり夜だった。

「え?俺、いつの間にか寝た……?」

 首を傾げる勇介。


 なんだかお腹も空いてきた気がする。

「とりあえず、飯にすっか。」

 コンビニで買ってきておいた弁当を食べることにした。お腹がいっぱいになると、


「そういや、ここって結構広い庭があんだよな。畑でも作ってみっかなと思ってたんだっけ。ちょっと様子を見てみるか。」


 玄関から靴を持って来て、庭に出てみることにした。全面窓からの明かりのおかげか、庭全体が普通に見ることが出来る明るさだ。


「うーん、寝ちまったからか眠たくないし、今からでも少しやるかなあ。」

 部屋に戻ると、ホームセンターで買ってきておいた鍬を持って庭に戻った。


 鍬をふるい、庭を耕すと、大きな石がゴロゴロと出て来た。

「じいちゃん、庭、なんも手入れしてなかったんだな。とっかに石をまとめて……、おっ、いいもんあんじゃん。」


 しゃがみ込んだ体勢であたりを見回すと、庭の端っこに大きな穴がぽっかり空いているのが見えた。暗いからなのか、かなり深く掘られているのか、底を見ることが出来ない。


 勇介はそこに、集めた石をゴロンと投げ捨てた。遠くの方からギャアアア……という声が聞こえたような気がしたが、もう一度耳をすませても聞こえなかったので、気の所為だと思うことにした。


 立て続けに石を投げ込んで、再び畑を耕すのに戻る。あらかた大きな石が取れたので、勇介はすっかり満足して、今日はこの辺にして風呂に入ることにした。


 スウェットを脱ぎ捨てて、体を洗いながら風呂を沸かす。温まる時間がもったいなかったので、温めのお湯にそのまま浸かって、段々と暖かくなるのを待っていた。


 しばらく待っているとちょうどいい湯加減になってくる。勇介は風呂を堪能すると、湯船から上がり、体を拭くために外に出た。


「──お迎えに上がりました!我が国の英雄、そして勇者さまの子孫よ!」

 脱衣所には、大勢の甲冑を身にまとった兵士のような集団と、1人の金髪の美少女。


「我がシュクモール帝国を、2代に渡ってお救いいただきありがとうございます!

 つきましては城にお迎えしたく……。」


 そう言って顔を上げた金髪の美少女は、ちょうど目線の高さにあった勇介の下半身と対面してしまった。


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