神さまとぼくの足あと

まさか からだ

第1話 神さまとぼくの足あと

 ぼくの名前はアルト。ずっとずっとつらいことが続いていて、どうしていいかわからなくなったぼくは、神さまに会いに行った。


 「神さま!なんでぼくを助けてくれなかったの?つらいときにずっとお願いしてたのに!」


 神さまは、ふわっと光の中から現れて、やさしい顔でぼくを見た。


 「アルト、ほんとうに私はいなかったと思うかい?それなら、いっしょにお前の過去を見てみよう。」




 神さまが手を伸ばしたら、ぼくはふしぎな砂浜に立っていた。空はピンク色に染まっていて、どこまでも広がる砂浜に二つの足あとが続いていた。


 神さまが言った。

 「これが、お前が歩いてきた道だよ。足あとが二つあるだろう?一つはお前の足あと、もう一つは私のものだ。」


 たしかに、ぼくが元気だったころの足あとが見える。だけど、ぼくが一番つらかったときに目を向けると……足あとが一つしかない!


 「ほら!やっぱりそのとき、神さまはいなかったんだ!」


 ぼくは怒って神さまに言った。




 神さまは静かに笑って、こう言った。


 「その足あとは、私のものだよ。」


 「え?じゃあぼくはどこにいたの?」


 「お前が一番つらいとき、私はお前を背中に乗せて歩いていたんだ。だから足あとが一つだけなんだよ。」


 ぼくはびっくりして、涙がこぼれた。ずっと一人だと思ってたけど、神さまはぼくを支えてくれていたんだ。




 神さまはうれしそうに笑って、ぼくの頭をなでてくれた。


 「これからも私はお前と一緒にいるよ。だから安心して歩きなさい。」


 砂浜の足あとは、波に消えてしまった。

 でも、ぼくの心にはずっと残っている。


 どんなにつらいことがあっても、神さまがそばにいてくれる。

 だから、ぼくはこれからも前に進んでいけるんだ。


 ぼくと神さまは、ゆっくり歩き続けた。

 空は青くて、砂浜にはまっすぐな足あとがのびていた。

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