1-10:アルカパドルであいましょう

「またここにいた」

「……ピルルパラリレ」

「さすがに風邪ひくよ」

雪がちらつく中、いつもの屋上で、わたしと赤坂琉宇は顔を合わせていた。

冬本番だというのに、彼女はコートもマフラーもなしで、セーラー服姿で、屋上の床にぺたんと座っている


わたしは卒業と高等部への進学を待つだけになった。赤坂琉宇は相変わらず学校にはあまり来ていないらしい。けれど気まぐれに屋上を訪れては、金属の塊をがちゃがちゃしている。

夏と、何も変わっていない。

変わっていない、ように見える。

けれど。

「……わたし、大学は外部の天文学科を目指そうと思う。勉強頑張るよ」

「天文、宇宙」

「そう。宇宙について研究したいと思って。いつか、アルカパドル星に帰る方法も見つけられるかもね」

彼女はわたしを宇宙人と言った。

わたしはまだ自分のことを、ユニークな存在だとは思えない。敷かれたレールから外れる勇気も、正直あまりない。両親を説得できる気だって、していない。けれど。

「どっちが先にアルカパドル星に行く方法を見つけるか、競走しようか」

「……絶対、わたし、先」

「それはどうかな?」

赤坂琉宇が、ちいさくくしゃみをした。

わたしは自分の首に巻いていたマフラーをとって、彼女の首にふんわりと巻いた。彼女のちいさな顔が、マフラーに埋まって、小動物のように見えた。

わたしは彼女の髪をゆっくりなでた。彼女は目を細めて、されるがままになっている。

「来年、赤坂さんも来なよ、高等部」

「……」

「まあ、嫌ならいいけど」

「要検討……宇宙、仲間、でも敵多い」

わたしは赤坂琉宇の、寒さで赤くなった頬を両手で包んだ。

お互いの白い息が重なる。

ここから先は、まだ。きっと、アルカパドル星にたどり着いたときには。多分。


屋上の隅で金属の塊が、かちゃりと、微かな音を立てた。

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