(16)
府川さんと土屋のマネージャーは
「ごめん、あたしの代りの服を用意しといて」
そう、どこかに電話すると……。
「そこの君……」
「えっ?」
「隠れてんのは判ってる。そんな真似はするなと警告した筈でしょ?」
「は……はい……」
俺は、3人の前に姿を現わさざるを得なかった。
「ちょっと持ってて……。このコート、
「えっ?」
そう言って、府川さんと土屋のマネージャーは、俺にコートと
そして……恐竜コスの片方の手には……おい、いつどこから……。
「あら、貴方、『魔法使い』みたいだけど、
「両方だ」
恐竜コスの片方は……いつの間にか手にしていた下手したら自分の身長より長そうな白い……多分、強化プラスチック製の棒で、府川さんと土屋のマネージャーに殴りかかり……。
その強化プラスチック製らしい棒は、府川さんと土屋のマネージャーに叩き込まれる寸前に一瞬にして砕かれる。
そして……府川さんと土屋のマネージャーの姿は無く……そこには……。
人間サイズの……バカデカい……二足歩行の……
「ふんっ‼」
「
続いて、府川さんと土屋のマネージャーが変身した(多分)獣人と、武器を砕かれた恐竜コスの口から、やたらと気合がこもった叫び。
獣人の体からは緑色の光が……恐竜コスの奴の体からは炎のようなモノが放たれ……そして、ぶつかり合って、互いに打ち消し合う。
恐竜コスの方は、後ろに飛び下って、獣人の方は、その場を動いてない。
「どんな感じだ?」
「単純な『気』の量だけなら……あたしの2〜3倍って所かな?」
2人の恐竜コスが、そんな事を話す。
「そうか……なら……
「あら、選手交代?」
恐竜コスのもう1人が前に出る。
「ああ……」
「魔法は使えない。ただの少々格闘技が強いだけの人間……そうにしか思えないけど……。ん?」
ドンっ‼
一瞬にして、もう1人の恐竜コスは獣人の懐に入り込む。
獣人は、恐竜コスを捕まえようとするが……。
「えっ?」
獣人が思いっ切り踏ん張ってた……要は足を開いてた体勢だったせいで……そして、恐竜コスの奴が小柄だったせいで……。
恐竜コスの奴は、獣人の足の間を潜る。
「うがっ‼」
獣人は飛び上がり空中で回転。
モフモフの尻尾が恐竜コスの奴の頭を狙う。
しかし、恐竜コスは、それを避けようとせず……逆に接近し……。
「があああ……」
恐竜コスは獣人の足に飛び付いて……全身の力を総動員した関節技。
獣人の膝関節が、伸び切り……。
「この野郎ッ‼」
獣人の体から、さっきの緑色の光。
けど、恐竜コスは、その寸前に技を解いて距離を取る。
「女性の相手は苦手だな。男だったら……金玉を潰して終りだったのにな……」
「本当に居たのか……? 都市伝説だと思ってたのに……」
「何がだ?」
「『魔法使い』殺し……」
「私は、そんな御大層な奴じゃない。ただ、
「お前みたいな『ただの人間』が居てたまるかぁ〜ッ⁉」
「残念なお報せだ。私は、あくまで『ただの人間』で、お前は、これから『ただの人間』に吠え面かかされる」
ヒュン……。
その時、何かが飛んで来る音。
次の瞬間、獣人の手には……。
「この程度のモノなら止められ……ん?」
「気付いたか? その矢は、
獣人が掴んだ、どこからともなく飛んできた矢。
その先端は……少しも尖ってなかった。代りに縦笛みたいなモノが付いていて……更に……。
先端の縦笛みたいな部品の後ろには、何か、別の筒状の部品が……。
プシュ〜っ‼
縦笛みたいな部品から、何かが吹きでる。
多分、筒状の部品の中に入っていた……。
「ぐわぁっ⁉」
「今日は情報収集と宣戦布告が目的だ。悪いが、これで撤収させてもらう。おい、ブッ壊された武器は持って帰れ。改良の為の貴重なデータ源だ」
「
そう言うと2人の恐竜コスは走り去って行き……。
「あ……あの……えっ?」
サンシャイン&マリンのイベントで見た事が何度か有るスタッフが女物の服を持って来たが……。
ぼろぼろ……。
獣人の体から毛が抜けて……そして人間の姿に戻って行く……。
姿は府川さんと土屋のマネージャーに戻っているが……顔は……涙と鼻水と涎に塗れ……涙なんかのせいで、抜けた毛が顔に貼り付いている。
どうやら、矢から吹き出たのは催涙ガスだったようだ。
「ふ……ふざけやがって……」
ドオンっ‼
府川さんと土屋のマネージャーが地面に拳を打ち付けた瞬間……轟音。
「全力を出す必要も無いってのかッ⁉
突然、府川さんと土屋のマネージャーが嘔吐。
「あ……あの……その痣……何なんですか?」
サンシャイン&マリンのスタッフがそう言いながら、府川さんと土屋のマネージャーの体を指差し……。
「えっ?」
府川さんと土屋のマネージャーの腹に……青黒い痣……。
「あ……あの……それと……
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