【天使】の存在が公表されると同時に、彼らは広く人間の元へ現れるようになった。

 人が怒りを覚える時、何処からともなく降ってきて、六秒過ぎるといなくなる。私たちにその姿は見えなかったけれども、皆は口々にこう言った。『嗚呼、またあの天使が来てくれた』

 そうして天使に触れた人間は、いつの間にかその憤りを失くしているのだ。

【天使】は子育ての神としても崇められた。彼らが触れた人々は、約八十パーセントの確立で将来子宝に恵まれ、仮に本人が子を授からずとも、その親族、友人、知人が子を身ごもる。

 母子手帳の表紙に描かれる【天使】は愛らしい子どもの姿をしている。

 サイゼリヤの壁画よりも身近に、【天使】は在った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る