第11話 見習い やってみようかな


 昨日の確認作業で手応えを掴んだ。

 スキップ気分で、冒険者ギルドのギルマスを訪ねる。

 朝のギルドは冒険者でいっぱい。それでも目が合ったギルマスに案内されて、三階へやってきた。


「錬金術師ですか? 失礼ですが、あー、スズさん。資格は持ってらっしゃいますか? 」


 詳しく聞いてみると、なかなか小難しい手続きがあった。

 錬金術師になるには専門の学舎を卒業するか、師匠について修行して、免許証を貰わなくては成れないとか。。

 エル村の錬金術師ギルドは、錬金薬液ポーション錬成で手一杯。弟子を育てる余裕は、無いだろうと言われた。


 迷いの森は危険がいっぱい。錬金薬液ポーションの供給は最優先だ。


「あー、いずれ錬金術を習うにしても、エル村での足場固めに、うちのギルドで鑑定士見習いでもされて、実績を積まれてはいかがです? うちの鑑定士が実力を認めて資格証明と免許証を出せば、すぐに独立できますし」


 ギルドの見習いになって実績を積めば、最低限、鑑定の店を持てるのか。良いかも。。


「お願いします」


 生きるためには経験。これ、真実。


 早速案内された鑑定カウンター。

 中性的な森人エルフの男性職員が、受付をしていた。


 もう、三度見しましたよー。美人。男だけど美人。


「あー、お邪魔しますよ。副ギルド長」


 ほぉぉぉぉ、この美形さん。鑑定士で副ギルド長なんだ。でも、どっかで見たような、気がする。。


「何か用事でも? 」


 あれれ? なんか言い方が、上から目線……座ってる分、こっちより低いから上目遣いしてるけど。。


「新しく入った鑑定士見習いの方を案内したのですが、主任に面会しても? 」


 ギルドマスター、腰低すぎません? 相手は部下じゃないの?

 うぉ! 何かわたし、睨まれた。。


「人族のようですが? 本気ですか、スウェン」


「あー、我が里の、大恩あるお方です。バスカさん」


 この人副ギルド長、ギルマスに敬称なしだよ。上司の顔を立てないで呼び捨てって、何様? あ、俺様仕様ですか? おまけに上、下、上とヤラシイ視線で見られて、ハッて鼻で笑われたよ。


 感じ悪ぅ。美形だけど、感じ悪ぅぅ。

 ? ぴったりじゃん。


「まぁ、長続きすればいいのですが? どうぞ、入っていただいても構いませんが、【大切な鑑定品を壊さないようにだけ、気をつけていただきたい。人族如きに意味が分かるかなぁ? 解りますかぁ? 】」


 おおっー。言ってる事と和かな表情が、ミスマッチ。


「ん? ……【わかりましたわ、】」


 んん? なんか、喋りにくいわぁ。

 うぉっ! 般若です。男版般若がいる。美形が台無しぃ〜。


「貴様っ、【エルフを獣扱いするかっ。この、雌豚が! 】」


「えぇー? 【雄ってお返ししましたけどぉ〜、エルフの挨拶のかと思って、お返ししただけですわぁ】 いやぁねぇ」


 あれ? なんか、違う言葉を喋ってた? ような。。


 横に立っているギルマスの肩が、小刻みに震えてる。


「【見事な古代語ですね】 スズさん……あー、お邪魔するよ」


 そっかぁ、いつの間にか喋ってたかぁ。

 はぁ〜。いつ覚えたよ、わたし。。


 なんか食いしばった口で、グヌグヌ言っているはスルーか? ギルマスの笑顔が黒い。


 それにしても、ギルマスの名前はスウェンって言うのね。前に聞いたかな? ちゃんと覚えとこう。。


 カウンターの一部を跳ね上げ、先に通してもらって、衝立の奥へ入り込んだ。


 奥に伸びる広い部屋ウナギの寝所?で、八人くらいが座れそうな長机を囲んで、ふたりのエルフが向かい合って座っていた。

 長机の上は、鑑定の依頼だろう品物が山積みだ。


「お邪魔するよ、主任。前から頼まれていた鑑定士の見習いだ。かなり優秀だから、よろしく指導してほしい。なんだよ」


 動物の角みたいな物を鑑定していた森人エルフの老人が、むっつりと顔を上げた。


 うん、老人であってる。

 白髪に薄緑の瞳。美青年が良い感じに老けて、厳格な容貌に変化している。

 何気に、頑固ジジイだぞと、主張している風貌だ。


「里の恩人だと? ぁあ、長の……わしの弟子で良いのか? スウェン。バスカの弟子の方が、箔は付く。あぁ、まぁ難しいか」


「そうだ。失礼があっては、の体面に傷がつく」


 やっぱりは、考え無しのヤンチャと見た。


「ならば、引き受けよう。しかし、甘えは許さん。生半可な鑑定をされては、依頼人に申し訳がないからな。……わしの事は、モグ爺とでも呼んでくれ」


 ゆったりゆっくりな口調が、芯の部分で温和な性格だと教えてくれる。


「ありがとうございます。スズです。よろしくお願いします」


「この子は、お前の姉弟子になる。リリッタだ」


 視線だけで、向かいに座る少女を紹介してくれた。


「……リリッタです」


 わぁー、声が小さい。細いー。

 仕草が儚くて、守ってあげたくなるー。かーわーいーいー。


「スズです。よろしくお願いします。リリッタさん」


 俺様エルフのに、温和そうだけど頑固ジジイなモグ爺師匠。姉弟子のリリッタさんは、コミュ障女子かな?


「リリッタでいいです……適当に 座ってください。その、鑑定したら、書類を書いて ください。あとは、モグ爺と 副ギルド長が、確認して く れます」


 おぉー、長文を喋ったー。おとなしいだけで、コミュ障じゃなかったよ。よしよし、お友だちゲットだわ。


「はい。分かりました」


 とにかく、ちゃっちゃと鑑定しよう。

 リリッタの斜め前で、モグ爺からは椅子ふたつ分離れる席を確保。テーブルを整理して、鑑定の場所を空けた。

 あんまり詰めて座るのは、気持ち的にバツだしね。


「あー、では、失礼しますよ。頑張ってください、スズさん」


 あ、ギルマス。まだ居たんだった。。


「はい。頑張ります」


 よし、始めるぞ。

 あれこれを説明してくれるリリッタについて、部屋の奥から木箱をひとつ持ってくる。

 鑑定結果の用紙は、壁の引き出しだと教えてもらった。

 用紙と一緒に、羽ペンとインク壺が入ってる。


「どれどれ……」


魔除け石小指大買取価格は 一個 五銅貨 魔物除けの材料 群生したモルネリ草の根に出来るが 稀である


(ふぅ〜ん、十個か。銅貨十枚で一銀貨よね。銅貨五十枚分だから、銀貨五枚と。だいたい、五万円くらいか)


 陶器の深皿に現物魔除け石を入れ、鑑定結果の書類と一緒に木箱へ収める。

 簡単簡単〜〜 次〜。


「おい、新入り! お茶っ」


 あっれぇ〜。カウンターからって事は、かぁ〜? 


「は、はい。ただいま」


 およよぉ。なんでリリッタが返事すんのよ。


「えと、リリッタ。後学のために、着いていくわ。よろしく」


 新人はわたしで、リリッタはわたしの先輩。急げ急げ。。


 奥の箱を積み上げた反対側に、小さい休憩室があった。

 小振りの薬缶を乗せたプレートっぽい石板の端に指を乗せて、リリッタが魔力を流してる。


「やってみてもいい? わたしだし」


「あ、はい。ス スズさん」


「さんは、要らないわよ。先輩」


 先輩呼びが恥ずかしかったのか、赤くなってあわあわしてる。

 儚げな美少女エルフ。ありがとございます。眼福です。


 思いっきり熱くしたお茶を持って、カウンターへ。

 何だかまた、胡乱な目で見られた。


「はーい、お茶」


 じゃないところが、自分的にイマイチ。。


「熱いですからぁ、お気をつけて〜」


 さっさと下がった背中に、悲鳴が聞こえた。だからわざわざ、熱いって注意したのに。もぅ。。

 使い走り要員じゃないし。雑用でこき使ってる方が悪いわ。 


 席に帰ると、モグ爺がですねぇ。小刻みに震えて笑っていた。

 意外と笑い上戸なのかも。。


「仕方ない奴だ。スズ様は長の命の恩人だと、言っとろうが」


 なんか笑いながらブツブツ言っているモグ爺。よく聞こえないので、まぁ、放っておけばいいかな? 鑑定忙しいし。。

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