第8話 エル村〜

 野営しながら、休み休み走ること、三日。

 途中で鑑定の練習をしまくり、収納には山の幸が満杯だ。


 エルフの里を出て四日目の早朝。

 野営のログハウスを片付けて、気分良く走り出す。

 毎晩お風呂に入ってぐっすり眠れるって、幸せ〜。


 調子が乗ってきた頃。密集していた樹木がまばらになって、ちょっとした草原の向こうに。 んんん???


「たっかい……なにこれ。高いかべ? 」


 草原を挟んだ前方を、三階建くらいの石壁が遮っていた。

 うん。右左と首を動かしても、ちょっとした草原全部を塞いでいる石壁。


 いや、万里の長城みたいに壮大じゃないけど。結構どどぉぉんと、存在感がある。


「あれ? もん? 門なの? 」


 石壁の一階部分に、お家の裏口。みたいな門。いや、たぶん扉が見えた。

 ゴッツイ木の扉に、頑丈な鉄の枠やら鋲の打ってあるやつ。


「あー、これかな? おさが言ってたの」


 おさに地形変化の告白をした時に、エル村の専用出入り口の話を聞いた。


 エル村は街道の終着点で、迷いの森に入る者たちの拠点を担っている。当然、人の出入りも視線も多い。

 万が一、世界樹の村へ行く者が尾行などされないよう、隠蔽をかけた場所に目立たない扉を設置していると。。


「普通は、見えないし、近づけない筈なのよねーー」


 また矢でも射掛けられたら、最悪だ。


「よし。見えない、知らない、気づかないっと」


 森のきわを、ぐるっと大回りして行こう。そうしよう。


 陽が傾いて日向になる方へ、ぐるぅっと。。

 石壁が見渡せる草原の端を、迷いの森の木立に隠れて回って行く。


「おー、あった」


 ちゃんと門番が居て、馬車が通れるくらいの入り口がある。

 こうでなくっちゃ、ね。


 順番を待って、銅貨三枚払って、街の中へ。

 石壁の厚みだけある、門からのトンネル。

 歩数にして八歩くらい。壁の厚みは三、四メートルくらいかな。結構分厚いよ。


 通り抜けた先に広がっていたのは、石畳の門前広場。

 馬車留まりや、馬の一時預かり所。自警団詰所と書かれた看板が、目に飛び込んでくる。


 看板には町の地図が載っていて、中央広場から東側に冒険者ギルドのマークが付いていた。


「へぇ〜、読めるわ。便利」


 どいう具合か、尖った楔文字の上に日本語が浮いている。

 ホログラム風の翻訳機能かな。


 大通りを挟んで東へ進むごとに、色々な店が並んでいた。

 だいたい店主は森人エルフで、村の住民だと思われる。


 道ゆく人は人族ばかり。。

 某設定の猫耳少女やオオカミ少年、ドラゴン仕様の人とかは、全然見かけない。


「うーん。いろんな種族が居るって聞いたんだけど」


 わんこ耳やウサギ耳、クマさんやなんかを期待していたのに、楽しみをかえせぇー、とか言いたい。

 どの店も、店員は森人エルフだ。買い物籠を持った村人も森人エルフがほとんど。。


「そだそだ、冒険者ギルド、行かなきゃ」


 中央広場には、目を惹く三階建の石造りの建物がある。

 おさに聞いた通り、出入り口の扁額に剣と盾の紋章があった。

 扁額には、各種ギルドの名前が書かれていた。


「へ? 何これ。一階が冒険者ギルドと武器防具装具ギルド? 二階が商業ギルドに錬金術師ギルド。んで? 手工業ギルドって何さ。三階は図書館? 銀行? 役所? どこの総合施設よ」 


 街に入ってから、ずっと思ってた。


「どっこが村なんだか。町より街よ。スケール違うくない? エルフ仕様だと、町は街で、町内会は市議会かってのっ」


 すれ違う人の目線が痛い。やってしもぅた、独り言。。


「さ さて、冒険者登録。しよう」


 重ね重ねの独り言に、ガッツリ落ち込む。座り込んで、のの字を描きたい。


 気を取り直し、全開の両開き扉を入る。

 左右を見渡す間に、興奮が覚めてきた。

 これぞ、読んだ小説通りの配置。とはいかなかった。


 入り口すぐの左手に、冒険者ギルドの依頼伝票を貼った掲示板。

 これはありだね。


 左奥が冒険者ギルドの受付カウンターで、右奥には酒場のような食堂。うん。まぁ納得だわ。


 正面の折り返し階段の下には、冒険者ギルド依頼達成金受け取り窓口への、矢印プレートが下がっていた。

 まぁね、有りっちゃぁ有りよ。んで、左側手前にあるカウンターが、武器防具装具ギルドか。。


 荷物搬入に、道路側の方が都合はいいんでしょ。。たぶん。


 入り口入ってすぐの右手に、館内の案内図が掛かってた。

 二階は商業ギルドと錬金術師ギルドと手工業ギルドの配置図で、三階には図書館の他に戸籍所、銀行に、貸し出してもらえる小会議室もあると。。

 ほんと、どこの総合施設なんだよ。二度言うけど。。


 案内図の下に、ギルドが取り扱っている内容も書いてあった。

 

 武器防具装具ギルドは、販売、修理、斡旋って。そりゃねぇ。

 冒険者セットって何だろ。装備一式かな。

 食料以外の旅行必須品も有りって。手広いね。


 商業ギルドが衣食住全般の流通と、ギルド員向けの売買。

 なんかさ、通販かって言いたい。 

 あ、宿泊施設の斡旋や、土地家屋の売買もやってる。


 錬金術師ギルドは、薬品と魔道具の作成と修理。錬金薬液ポーションの販売もしてる。

 薬剤師とか調剤師って感じかな。魔道具って、どんな物か興味ある。


 手工業ギルドは、衣服、鞄、靴、小物作成と修理。

 ファッション関係の仕事って、思えばいいかな。。


 三階は、各ギルド代表者の事務所と、中規模の図書館? それに戸籍局とか王立銀行出張所とか、公的機関もあるよ。


 同じ三階フロアで、一般に貸し出する会議室があるとか。盗聴、大丈夫なんかね。。


 税金と銀行そのものを管理してるのが、リート王立銀行って、国が銀行を掌握してんのねー。

 ん? この国の名前、リートって言うんだ。そっかぁ。。


「おい、ちっこいの。入り口で邪魔だ」


 ぼへぇ〜っと案内図を見ていたら、後ろから突つかれた。

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