ヤッホー異世界 ライフはスローで

桜泉

第1話 ぼっちガール

 目が覚めた。

 たぶん、森の中……お約束か?

 鬱蒼としているのか、少し先も、空も見えない。薄暗い。


 起き上がったら、胸元から巾着袋が落ちた。

 どう見ても小汚い灰黒の、ツルッとした何かの皮でできた袋。

 二本の紐を通し、両側から紐を引っ張って縮めるタイプ。


 紐を緩めて中を見れば空っぽだが、収納袋ストレージだったはずだ。

 恐々手を突っ込めば、手首より少し上辺りで袋の底につく。


「え? 嘘ぉー! 」


 最大限紐を緩めて見れば、五十センチくらいの円形になった。

 内側の生地は落ち着いた緑と細い赤のタータンチェックで、手触りの良い上等なウールだ。

 縁近くのワンポイントは、ヤドリギの葉っぱに赤い綺麗な石が三つ付いて、薄暗い中でもキラキラと光る。


「クリスマスぅ!? マジですかぁ! いや、詐欺だよ!! 」


 思わず天に向かって怒鳴ると、大きな葉っぱが仰向いた顔に落ちてきた。

 最低な気分を盛り上げてくれた葉っぱくんを、八つ当たりで毟り取って捨てようとして、ふと葉っぱの表面に目が止まる。


 殴り書きの文字は、明らかに日本語ではない。ミミズが這った跡に見えるが、読める。


【生意気な小娘! わたくしを欺いて許し難いが、地上に落ちた者に手出しはできない。どんな力を持っていても、お前なんか、せいぜい生き足掻いて、地獄に堕ちろ!! by 転生の美女神】


「……あー、思い出した。面食いの、がきんちょ女神だわ」



******

 その日私は、映画館にいた。

 まぁまぁ都会と思う(都会からは田舎と称される)小規模な街の、小規模な映画館だ。


 キャンペーンなのか、時季折々に観たい映画の募集をして、応募数の多い作品を上映する。


 利用する者の少ない映画館の投票だったせいか、年末に上映されるのは、ずいぶん昔のアニメ映画。

 私が投票した推しアニメだ。

 それを観るために、ポップコーンも、持参のコーヒーも、アームにセットして上映が始まるのを待っていた。


「ようこそ、わたくしの神域へ」


「……は? 」


 椅子取りゲームの敗者よろしく、尻餅をついた私に、壇上から女神のコスプレをした幼女が話しかけた。


「何? 幼稚園の学芸会? 」


 同じように尻餅をついた格好の青年が、席があれば三つ分空けた隣りで声を上げる。


「ここどこ! 」


 後ろも、斜め前も斜め後ろも、おそらく映画館で座った座席の場所に、男女が転げていた。

 ローカルな映画だったせいで、人数はまばらだ。


「おだまり! 偉大な女神のわたくしが選んで、わたくしが呼び寄せてあげたのよ。大人しくわたくしの話を聞きなさい! 」


 癇癪持ち決定の幼女がきんちょ女神が選別して、私たちは三つのグループに分けられた。

 操り人形マリオネットよろしく、無理やり身体が動くんですけど?


その一 =イケメン。上位技能スキル持ち。

その二 =ふつメン。ふつガール。上位〜下位技能スキル持ち。

その三 =厳つい系のメン。美人寄りのガール。技能スキル不明。


 確実にその三は、女神の好みから外れた面々だと思う。


 その一グループは、一部の方々には人気の騎士風鎧とか、魔導師のローブとか、美青年、美少年ですが? 何ですかね。

 いや〜 これって、コスプレやん。。


「その一の方々は、隣りの部屋に移ってもらうわ。その二の人は、纏まってそこにある扉から入って待機。その三は、適当にその穴に堕ちてちょうだい。そうね、お前たちの時間で三十分あげる。自動的に落ちるから、ぐずぐずしないでね」


 とりつく暇もない。パタンと閉まった高級感あふれる扉。


「えっと、僕たちはこっち? 」


 一緒にいれば穴から落ちると囁きあっていたその二グループが、そそくさと扉を潜って行く。普通の部屋の扉。。


 残ったのは男子がふたりで、女子は私を含めて三人。互いの顔を見比べる。


 厳つい系その一は、すぐ側の可愛い系の女子と手を繋いだ。

 厳つい系その二も、横に並んだ美人系の女子と手を繋ぐ。


 うん、知ってた。

 ぼっち系は、私だけだって。。

 それぞれ少し距離を取って、ボソボソ話し合う。


 仕方ない。

 こちとらボッチは、独り言を呟きながら勝手にするわい。


「定番から行くと、ステータスボードを呼びだs……」


 すすっと眼前に広がった、○パット風の透けたディスプレイ。


「うぇっ。ここまで定番なのぉぉ? 」


 開けた画面を見るこめかみから、冷や汗が伝った。

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