【ハーレムに加えてほしいと頼まれたけどオレは純愛厨だから君だけいればいい・上】【※多一視点】

1 約束


 幼馴染の様子がおかしい。


 彼女は言う。


「あなたの築くハーレムの一員になりたいんです。私も入れてくれませんか?」


 顔を真っ赤にして恥ずかしそうに目を逸らす……オレの幼馴染――澄蓮月玻璃を凝視した。


 通う中学の……白と紺色の布が使われた制服姿で、胸の上くらいまである束を二つに分け肩上で結んだ髪型をしている。くりっとした目がとても可愛い。


 そんな子にオレは今……何と言われた? ハーレム?




 現在、オレと玻璃は玻璃の部屋で二人きりのシチュエーションだ。


 玻璃とはクラスメイトで、学校帰りにここへ寄った。「大事な話がある」と言われていたので何の話だろうと少し緊張していた。


 「私、記憶がある。前世の」と打ち明けられたのには驚いた。「オレへの愛の告白かもしれない」と期待していた分、落差で動揺した。


 玻璃は前世で好きだった人を振り向かせる為に、自分に自信をつけたいらしい。奥手で純愛志向な自分を変えたいと言っていた。その為に逆ハーレムを作ろうとしているというのも聞いた。


 彼女がオレじゃない別の奴を好きだという事実にモヤッとした。

 ……だが、これはチャンスだ。手伝うフリをしてオレに意識を向けさせる。


「いいよ。手伝っても」


 口にした直後に押し倒して見下ろした。


「付き合ってください」


 不意に言われ驚いていたところへ、あのセリフが紡がれたのだった。


「あなたの築くハーレムの一員になりたいんです。私も入れてくれませんか?」


 困惑が大きい。思わず呟いていた。


「オレのハーレム?」


 さっきの前世の話といい……玻璃はファンタジー小説の読み過ぎなんじゃないか?

 ……と半分程は疑っていた。中二病過ぎる内容の話だ。

 それにオレ……ハーレムものより純愛ものの方が好きなんだけどな。


 戸惑いつつも大事な件を確認しようと口を開いた。


「えっと……それってもしかして……違ってたら本当にゴメン……えっと……オレの事が好きって事?」


 漸く尋ねた。言ってしまってから焦る。


 わーー! オレ、何言ってんだっ?


 脳内で慌てまくっている時に、玻璃が頷くのを見た。


 頷いた……? えっ? 頷いたぞ? えっ? ……えっ???


「ずっと……ずっとあなたの事が好きでした」


 ……好きな子から告白された。


 小説の主人公になったかのような物凄い幸運だ……。この先の人生で必要な運を使い果たしていないか心配だ。


 真っ直ぐに見つめられた。


「私もあなたのハーレムに入れてください」


 再び要望され、思考が一旦止まった。

 やっぱり、どういう事なのか詳しく説明してもらわないとな。


「本当は逆ハーレムのメンバーが揃ってから言うつもりだったけど」


 玻璃が聞き捨てならないワードを口にした。まさか彼女……本気で逆ハーレムを作る気なのか?

 すぐさま提案しておく。


「たくさん交友関係を広げるだけじゃなくて、一人ともっと深めるっていうのはどうかな?」


「え……?」


 玻璃の視線が彷徨っている。何か聞きたそうな眼差しを返された。

 彼女から手を離し身を起こす。


 さっきから気配を感じていた。


「詳しい話は明日聞かせて。そろそろ帰るよ」


 伝えると玻璃は少し……しょんぼりしたような表情で視線を下へ落としている。

 そんな様子を眺め嬉しく思う。


 オレもまだ帰りたくないが仕方ないんだ。彼女にも告げた。


「お兄さんが怖いし」


 ドアの方へ目を向けた玻璃は「ひゃっ!」と声を上げた。ドアの隙間が広がってお兄さんが部屋へ入って来た。


 すげー不機嫌な顔してるな。


 お兄さんは玻璃に「コーヒーを淹れてきてほしい」とかいうテキトーな頼み事をして、彼女を階下へ追い出した。


 この後、玻璃のいない部屋でお兄さんと交渉した。


 お兄さんと玻璃は、普通の兄妹ではない。以前から血は繋がっていないと聞いていた。

 だからオレは恐れていた。いつか玻璃をお兄さんに取られるかもしれないと。


「彼女、逆ハーレムを作りたいらしいですね」


 黙ったまま睨んでくるお兄さんへ先に切り出した。


「学校では、さすがにお兄さんも邪魔できないでしょうし……オレが可能な限り阻止しておきますよ。彼女が逆ハーレムを作るのを妨害します。その代わり……条件を呑んでください」


 ニヤリと目を細め、お兄さんへ要求する。家では彼女に手を出さないでほしいと。

 お兄さんの手の届かない学校での玻璃を守るのも、オレの知り得ない家での玻璃を守るのも……似たような条件だと考えていた。


 お兄さんは一つ溜め息をついて言った。


「オレも君が玻璃に付いててくれたら心強いと思ってたんだ」


「交渉成立ですね」


 こんな口約束など律儀に守ってもらえるのか疑問ではある。しかし、ないよりは幾分か不安が軽くなるものだと……落ち着かない心を宥め賺そうとしていた。

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