第2話

まとわりつく喧噪を置きやり、忠義は人でごった返す東京駅を足早に歩く。


混み合ったエリアを素早く抜けて、あっと言う間に新幹線乗り場までやって来た。




忠義は指定席の座席番号を確認して目当ての車両に向かい、慣れた様子で東北新幹線に乗り込む。


今日、大分久方ぶりに急遽有給休暇を取ったのは、妻と義母に会いに行く為だった。




しかし、久し振りの再会が目前だというのに、その表情は暗い。




事の発端は、昨夜だった。


突然まことから電話が掛かってきたかと思うと、耳を疑う事を言われた。




“クロをおばあちゃんとお母さんに紹介してくるね”




それを聞いた瞬間、忠義は凍り付いていた。




そんな事など知らないまことは、自分の要件を簡潔に話す。


明日の学校帰りに行ってくると言ったのだが、それすらもまともに耳に入らず、ちゃんと理解したのは電話を切った大分後の事だった。




学校帰りに、青森まで行く。


違和感しかないその発言の真意が分からずに、我に返った忠義はすぐさま政道に電話を掛けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る