神の舞〜巫女浮舟の物語〜
あまるん
第1話
天文二十三年(一五五四年)
白い
名は
――ついにこのときが来た。
細い肩を震わせる。合わせた手の間にはじっとりと汗が浮かんだ。
浮舟は間近で弾ける火花の音を聞いても
彼女は『
もし浮舟が山光院に巫女としての才を見いだされなければ、そして、山光院の一族の頭領である
太鼓の傍らの
筒を持つ白く美しい手先だけが見える。あたりを包み込む優しい音色が響く。姫は頼みの綱と山光院が言うだけであって音はリズムの空隙を上手に埋めていた。
四方からの音圧と振動が胃の
不意に浮舟の額に鋭い痛みが走る。
浮舟は思わず手で額を押さえた。
痛みはすぐに止み、そっと
見えたものはこれまでと全く異なっていた。
姫神山のすそ野を見下ろすと畠山氏の末裔の館がある。夕べの灯が
そして。
正面にそびえる岩手山に
西方は茜空、お天道様は岩手山のやや北にある三角の形をした
その影にたくさんの光の点がみえる。
最初は地上からの熱気による
山光院の背に目を向けると、一声も発さずともその意思が伝わった。山光院が以前浮舟に語った言葉が心に蘇る。
去年の秋だった。姫神山の西にかる浮島集落の掘立小屋にいた浮舟(そのときはただ『うき』と呼ばれていた)を迎えにきた時だ。山光院はわざわざ送り仙という台形の山をぐるっと周り、西にある岩手山を見せた。あの日も山は晴れていた。
(浮舟よ。見えるか死して
言葉を思い出すと同時に、噴き上がる祭壇の火が岩手山の噴火と代わる。そして、一気に中腹まで崩れ落ちる山体の幻影が見える。
― ―これが第三の目……。
前もって浮舟が山光院に言われていたとおりである。常ならぬものを見る力、額にあって神の力を示すもの。
五穀を立つ
左右を見回すと、他の者はまだ神妙に面を下げていた。浮舟は前にいる姫神山の頂上に向く山光院を密かに見上げる。そうすると、目の端に中央でも一人顔を上げた者がいた。
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