第42話

と、一歩目を踏み出したとき。




「陸上がやってみたいの」


「ウソばっか!佐久間目当てのくせに!」




お、俺!?


いきなり自分の名前を呼ばれて、ついまた立ち止まってそっちを見てしまった。




ふたりはキッと睨み合ったまま動かない。


どちらも怯まずに、睨み返している。




「なんか言いなよ」


「じゃあ自分も入ればいいじゃん!」




あ、この感じ。


なんか嫌だな。




なんとなく、どういう経緯か読めてしまった自分が憎い。




そう。


今までにもこういうシチュエーションには遭ったことがある。




男友達は“モテる男の宿命だ”なんて言うけど、全然嬉しくない。


むしろ困る。


もちろん望んだわけでもないし。




なんでこんな風になるんだろう。




俺は足早にその場をあとにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る