第39話

俺は視線を空へ逃がして、すーはーと深呼吸するように呼吸を繰り返した。




しばらくそうしているとかさりと音がして、


教頭先生が書類を折り畳んで胸ポケットに入れたのに気づいた。




「では確かに受けとりました」


「え」




ということは、




「頑張ってくださいね、陸上部」


「はい!」




にっこり笑った教頭先生。


俺の方は、きっと顔が壊れる寸前くらいの笑顔になってると思う。




最後にもう一度頭を下げてから、踵を返した。




やった。


やったよ。




歩いていた足はいつしか速くなって、すぐに全速力になる。




これで自由に走れる。


いつでも。




あげたくなる奇声を我慢しながら、俺は見えないゴールテープを切った。




あ、そうじゃないな。


スタートしたんだ。




この日、こうして陸上部が誕生したんだ。

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