第16話

マラソン大会や運動会でももちろん走ったことはある。


俺は昔から足が速い方だったから、大概一位だった。




まぁ、勝負に勝つのは嬉しい。




けど、まだゴールもしてないうちに何を感じるっていうんだ?




やっぱりよくわかんないな。


先生が走る理由が全くわからなかった。






ぽたり。






汗が雫となって肌を滑り落ちていく。




呼吸はいつの間にか適度なリズムを保っていて、息苦しさはなくなってきた。






……






あれ?




なんか、さっきより気持ち悪くない?




じっとりべたべたしていた汗は不思議なことに今では不快ではなくなっていた。




汗で湿った身体を撫でるのは、


清々しい風。




「なんだ、これ」




思わず言葉を溢すと、




「これだからやめられん」




先生はひひっと変な笑い声をあげて、そう呟いた。

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