第4話

緑の大地に寝転がって、青と白の空だけを見つめて。


いつしかうとうとしていた俺の耳に変な音が聞こえてきた。




“ふっ、ふっ、ふっ、ふっ”




閉じかけた目を開いて、眉間にシワを寄せる。


なんの音だ?




「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ」




段々近づいてくるそれが気になって、体を起こした。


そして道路の方を覗いてみる。




「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ」




一瞬、笑い声かと思うその音は、やっぱり人から発せられていた。




でも、




「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ」


「……」




俺はそれを目撃して固まっていた。




目の前を通り過ぎてまた次第に遠ざかるその音。


それは、メタボな腹を揺らして走る男から漏れる呼吸音だった。


たぷんたぷんと脂肪が跳び跳ねる音も聞こえた気がする。




ふと、一旦通りすぎた男は立ち止まって振り返った。




「あ、」


「お、」




俺は気付いた。


相手も気付いた。




でも驚きすぎて俺は声にならなかった。




「なんだ、佐久間じゃないか」




相手の言葉でやっと我に返る。




「……先生」




男は担任の先生だった。

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