第88話
「涼、大丈夫?
ずっと、思い詰めたような顔をしているみたいだけ…」
「時々、記憶が無いんだ…」
耳に届いた咲の声に、
俺はそう言ってから、
焦って横を向く
独り言のように、
勝手に口から言葉が出ていた
「記憶が無い?
今の事を言ってるの?
それとも、今それで悩んでいたの?
記憶喪失…」
咲は俺の言葉に続けて
質問をする
「いや、今みたいに時々ボーとするだけだよ」
俺は笑顔でそう咲に言う
咲もふに落ちたように、
笑う
本当の事は言えない
時々、夜中街に出て、
若い女を殺しているかもしれないなんて、
言えない
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