第32話

夜、俺が机に向かい問題集を解いてると…





『あっ…ああんっ…』



母親の喘ぐ声が、

響くように聞こえてくる



このアパートの壁は薄い



きっと、隣の部屋にも聞こえているだろう



隣は、大学生の男が住んでいる



一度、その大学生は階段ですれ違いさま、

俺の顔を見て、

馬鹿にしたように笑っていた



俺は込み上げてくる激しい怒りを抑えながら、

階段を下りた事が有った





だけど、

それも母親の居た頃の話



母親がいなくなってからのこの一年間、

俺の周りは、

とても穏やかだ



今も机に向かい参考書を広げるが、

何の音もしない



微かに、

外で遊ぶ子供の声が聞こえるくらいだ

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