第4話:あれって絶対落ちるよね。

普通、天女ちゃんに出会うなんてこと万に一つもないだろ?

でも、会っちゃったんだな、空からひらひら舞い降りてきたんだよ。

海啼くカモメが空に舞うように・・・。


で、結局天女、明日香ちゃんを俺のマンションに連れて帰ることになって電車に

乗ったのはいいんだけど・・・。

変わった髪は結ってるし着物は着てるし目立ってしょうがないったら・・・・


きっとみんな、あの子は七福神の弁天さんかなんかのコスプレしてるって思って

んだろうな・・・。


天女ちゃんより七福神のほうが有名だからね。

天女ちゃんも弁天さんも同じなのにな。

やっぱり七福神ってキャラ的に馴染みが深いよな。


人の目なんか関係ないって言うように明日香ちゃんは俺の横でシートに踏ん反り

返ってる。


「こら、キョロキョロしない・・・それに貧乏ゆすりしない、おっさんじゃ

ないんだから・・・」


「こんなのに、ずっと乗ってなきゃいけないの?」

「しゅ〜っと空飛んでちゃったら早いのに」


「俺はね人間なの・・・君みたいに空なんか飛べないんだからさ・・・」

「公共機関利用するしかないだろ?・・・」


「人間って面倒くさくて不便なのは知ってたけど・・・」

「ん〜・・・私がどんなに力持ちでも辰也君抱えては飛べないからね」

「試しに私と飛んで帰ってみる?途中で落っことしちゃうかもだけど」


「もし、明日香ちゃんに俺を持ち上げる力があってもそれは遠慮しとくわ」

「飛行機にだって乗りたくないのに・・・」


「ああ、時々雲の上を飛んでるやつね」

「あれって絶対落ちるよね」


「たしかに落ちる可能性あるけど・・・そんなにあっさり言われると余計怖く

なるだろ?」

「想像して絶対乗りたくなくなったわ」


「その点、私は落ちないからね・・・引力とうまくやってるから」


「その能力があったら飛行機も落ちないのにな・・・」

「って俺たち、なんの話してんだよ」


「人間は面倒くさくて不便な生き物ってことと、私は飛べるってことと、

飛行機は絶対落ちるよねって話・・・」

「どうでもいい話だったよね」

「じゃ〜もうちょっと実のある話・・・達也君のお仕事ってなに?」


「写真家だよ・・・カメラマン、主に山を撮ってる山岳カメラマン」


「・・・まめらまん?」


「カメラマン」

「君が住んでたところ・・・天界ってところにはカメラなんかなかっただろ?」


「かめら?・・・う〜ん、よく分かんない・・・亀ならいたけど」

「科学的文明は必要ないからね・・・みんなそれなりになにがしか仙術とか

使えたから・・・」


「とにかく、その写真ってので雑誌に載せてもらったり、たまには写真展

開いたり・・・いろいろやってる」

「まずは食ってかなきゃいけないから仕事くれるなら何でも撮るさ」

「まあ、仕事ない時はプ〜太郎かな?」


「プ〜太郎?・・・誰それ?浦島太郎とか桃太郎の親戚?」


「仕事しないでプラプラしてるやつのこと」


「へ〜辰也君、天界向きだね・・・あっちってそう言う人ばっかだよ?」


「そりゃさ大金持ちで働かないで食っていけたらいいだろうけどな」

「人間ってのは明日香ちゃんが言った通り面倒くさい生き物なんだよ」


「私のぶん稼がなきゃいけなくなったね」


「まあな・・・そんな現実的なこと考えなくていいよ、君の存在自体非現実的

なんだからさ」

「分かんないんなら、無理に聞かなくていいから・・・しゃべったことが全部無駄

になるだろ?・・・意味ないだろ」


「だって自分の旦那様がどんなお仕事してるのか近所の奥様に聞かれたら知らない

ってわけにはいかないでしょ?」


「そんな機会ないから・・・俺の住んでるマンション独立してるし」


「って言うか・・・旦那様ってなに?・・・いつから?」


「空から舞い降りてきた時から・・・」


つづく。

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