第5話 強敵現る 修正版
23年に発表した「その後の佐助」の修正版です。実はPCの操作ミスで編集作業ができなくなり、新しいページで再開したものです。表現や文言を一部修正しております。もう一度読み直していただければと思います。
空想時代小説
白石に来て10年ほどたったある日、佐助は大八の呼び出しを受けた。
「手ごわい相手が来そうだ」
「して、どなたが?」
「幕府の目付として、柳生但馬守の息子、柳生十兵衛じゃ」
「あの隻眼の手練れですか。強者ですな」
「目的は仙台藩に謀反の動きがないかだが、そのひとつに小十郎殿の後室となった姉君の出生を問われるようじゃ。そうすればわしの出生も問われるであろう」
小十郎の正室は病弱で早死にしてしまった。その後に阿梅が後室として入籍したわけである。
「要は謀反の動きがなければいいのですな。阿梅さまと小十郎さまが仲睦まじくしていれば問題はありますまい。たとえ、ばれたとしても敵方の姫をつかまえただけのこと。殿もおたおたしないで、堂々としていればいいのです」
「我妻佐渡も似たようなことを申しておった。ただ気になるのは、十兵衛殿の配下の忍びの動き、何があるかわからんぞ」
「心得ております。城内に入ってくる忍びがおりましたら、私めが」
「うむ、忍び込んで殺されては、十兵衛殿も文句は言えまい。むしろ生かして帰しては何を言われるかわからない。抜かるでないぞ」
「心得ました」
と言って、佐助は屋根裏に飛び移り、三井景国のところにいる草の者と連絡をとった。その日から厳戒態勢に入った。
屋根裏には忍び込むと鈴が鳴るしかけを作るとともに、要所にまきびしを置いた。並の忍びならこれであぶりだせる。しかし、佐助は火薬を用いた発煙筒を工夫した。屋根裏の梁の何か所かに発火装置を作り、発煙筒につながるようにした。これでほとんどの忍びはあぶりだされる。佐助たちは小十郎と阿梅の部屋それと大八・阿菖蒲の部屋の屋根裏に伏せた。
3日後、敵はやってきた。寝入りばなの時刻である。本丸の館に忍び込む者が3人。鈴がなるしかけはすぐに見破られた。まきびしには一人が引っかかったが、敵もさるもの。軽傷にしかならず、さほどダメージを与えることはできなかった。しかし、発火装置には引っかかった。梁の一部がふた状になっており、そこに上がると、ふたが下がり、火打ちと火薬が反応し、導火線に火がつく。その先には発煙筒があり、あたりは一面煙となってしまう。敵はそこで動きが封じられ、こちらは敵の居場所が特定できるわけである。3人の内2人はすばやく屋根の上に逃げ出した。そこは想定の範囲。草の者の手裏剣であっけなく倒れた。しかし、一人は動かなかった。気配を隠している。佐助もそのことは重々承知。屋根裏は梁や柱で手裏剣が使いにくい。むしろ短い刀の方が扱いやすい。気配を見せた方が負けなのである。
城内では煙が出たことで、警護の武士が騒いでいる。しかし、火が見えるわけではなく、煙もだんだん薄くなってきている。ただ、うろうろしているだけである。それでも、敵の忍びにとっては下に逃げるわけにはいかなくなった。敵もそれを察知したのだろう。草の者を避けて逃げだそうとしてきた。そこに佐助がいたのである。佐助は素早く敵の背後にまわり、頭をつかみ、忍び刀で相手ののどをかききった。幾多の場を乗り越えてきたからであろう。一瞬の動きであった。敵の忍びはまだ若い。実戦で人を斬ったことがあるか否かの違いだ。
夜のうちに敵の忍びの死体を始末した。おもりをつけて水堀に埋めた。魚が多いので、いずれ骨だけになるであろう。
翌日、柳生十兵衛がやってきた。
「小十郎殿、久しぶりでござる。大坂の陣以来か」
「あの時は、おことはまだ元服したばかりの若衆だった。もっともわしも初陣だったが・・・」
「お互い若かったですな」
「さて、今回はどうしてみちのくへ」
「なんの武者修行の旅でござる。世は家光公の時代になり、天下泰平となっております。父但馬守はなんやかんやと言いますが、私は家を離れ、好きな武芸にいそしんでおります」
「いいご身分であるな」
「ところで、昨夜城内で火事があったとのこと。大変でしたな」
「なんのことはない。ただのぼやでござるよ。ねずみか猫があんどんを倒したのかもしれない」
「そうでござるか。よほど腕のいい犬を飼われているのでしょうな」
「犬か? 猿かもしれんな」
「猿とな? もしかして近江の猿ですかな?」
佐助の生まれが近江の甲賀と知っている十兵衛は小十郎にかまをかけた。
「近江の猿? まさか近江から来まい。城下の小原に行けば猿はいっぱいいる。ところで十兵衛殿、おことの武芸を皆に披露していただけぬか? 明日、家臣の何人かと立ち合いをしていただければ、この平穏な時代でも刺激となろう。もちろん、おことに勝てる家臣はいないと思うが・・・」
小十郎は佐助が忍びを仕留めたことを十兵衛が知っていると感じ、話を転じた。
「なんのことはありません。最近、体がなまっているので体ほぐしになります。それではまた明日」
十兵衛が立ち去った後、小十郎は阿梅の部屋へやってきた。
「殿、いらっしゃいませ。十兵衛殿との会見はいかがでしたか?」
「うむ。相変わらず油断ならぬ相手じゃ。ところで佐助に注意をせよ。と伝えておけ。昨日のことを知っておった。それと明日、十兵衛と家臣たちの立ち合いがある。そなたも見にきてはいかがか」
「立ち合いでございますか。それでは殿にお願いがあります」
と言って、阿梅は小十郎に耳元で何やらつぶやいた。ただのひ弱なイメージがある姫と思いきや、なかなかの策士である。さすが真田の血筋と小十郎は感じ入っていた。
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