「それで、話ってなに? 早乙女さん」と真冬は言った。

 芽衣はまたにっこりと笑うと、それから大きな緑色のフェンスのところからゆっくりと移動して、真冬のすぐ目の前までやってきた。

 そこから芽衣は真冬の顔を少しだけ上目遣いで、見上げるようにして、見た。


「背、伸びたね」芽衣は言った。

「会ったころは同じくらいだったのにね」

 確かに芽衣の言う通りだった。

 芽衣が転校してきた中学一年生のころは、二人の背は同じくらいだった。むしろ、どちらかというと背は少しだけ芽衣のほうが高かった。

 でも、今は明らかに真冬のほうが背が高かった。

 男子生徒の中で特別背が高いというわけではないけれど、それでも真冬の身長はこの二年間で、思ったよりも高くなった。

「それに態度もふてぶてしくなった」芽衣は言う。

 真冬はそれは芽衣には言われたくないと思った。

「昔はもっと大人しかったのに、なんだか反抗的になった」

「別に反抗的じゃないよ。こうして早乙女さんの指示に全部従っているでしょ?」

「表面的にはね。でも、心の中ではなんだこいつ、って思っている。そんな顔しているよ真冬」そう言って、芽衣はなんだかとても楽しそうな顔で笑った。

 その顔はとても懐かしい、なんだか出会ったばかりのころの早乙女芽衣がどこかに隠れていて、いたずらでひょっこりと顔を出したような、そんな表情だった。

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