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真冬は芽衣のことをあまり気にしないようにしていたのだけど、とても目立つ存在である早乙女芽衣のことを気にしないことは無理だった。
芽衣は男子生徒とも女子生徒とも、すぐに仲良くなって、いつもみんなの中心にいた。
でも、真っ直ぐで気持ちの良い性格をしている芽衣のことを、あるいは、そういう視線でクラスメートのことを見ることはあまり良くないことだとわかってはいるのだけど、それでも強く芽衣のことを意識していたのはやっぱり、どちらかというと思春期真っ只中の男子生徒のほうだった。
芽衣は本当に男子生徒にもてた。
クラスメートだけではなくてほかの教室の生徒や、あるいは先輩からも意識されていた。
芽衣はよく放課後に真冬の知らない男子生徒から告白をされていたようだし、ラブレターのようなものも、直接か、あるいは間接に渡されるかを問わず、とにかくたくさんもらっていたようだった。
なぜ、そのことを真冬が知っているかというと、その話を(……もちろん、真冬から誰かと付き合ったりしているの? とか芽衣に聞いたりはしていないのに)芽衣が真冬によくするからだった。
そのときの芽衣は本当に困ったような顔をしていた。
「もちろん、気持ちは嬉しいよ。でも私は、今は誰かと付き合うとか、付き合わないとか、そういうことは、……あんまり考えられないんだ」と芽衣は言った。
「あ、でも真冬は特別かな? もし真冬に告白されたら、私の不動の心は、もしかしたら動いてしまうかもしれなよ? どうする? 真冬。チャンスだけど、私に告白してみる?」と楽しそうに、冗談っぽい雰囲気を出して、芽衣が言った。
「遠慮しておく。どうせ答えはわかっているし」と真冬が言った。
すると芽衣は、意外なことに、ちょっとだけ本当に寂しそうな顔をしてから、「そっか」と窓のほうを見てつぶやいた。
「芽衣ー」
「なにー」
そんな友達の声に呼ばれて、芽衣は真冬の元を離れた。
二学期になると、真冬はクラスメートのみんなから今まで以上に芽衣のことをよく聞かれるようになった。
人気者の芽衣の行動はとても目立つので、ずっといろんなところに隠れるようにして、なるべく目立たないように、あるいは透明な空気のように、穏やかで静かな学校生活を送っていた(それが真冬の理想の学校生活だった)真冬なのだけど、そんな芽衣とよく一緒にいることで、真冬の平穏はなくなり、真冬もいわゆる一般の男子中学生くらいには、クラスメートのみんなから芽衣の話を聞かれることで、自然とみんなと話をするようになったのだ。
真冬はクラスとメートのみんなから、
「普段、早乙女さんとどんな会話しているの?」とか、
「お前、どうやって早乙女さんと仲良くなったんだよ? もしかして告白とかもしたのか?」とか、いろんな話を聞かれた。
そんな会話の中で一度、「柊木は早乙女さんの友達だろ? 今度、早乙女さんを誘って一緒にみんなで遊びに行こうよ」と言われたことがあった。
そのとき、一人の時間を愛している真冬は、できれば、みんなと遊びにはあまり行きたくなかったので、つい言い訳として「別に早乙女さんとは友達じゃないよ」とその男子生徒に言ってしまった。
そして、その言葉を運悪く、ちょうど真冬に会いにやってきた早乙女芽衣本人に聞かれてしまったのだった。
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