哀しい再会と破りの掟

遠くには慧さんやイルム達が


こちらに向かってきているのが見える。


【あ、主よ今帰ったのか?】


【せっかく主のために願いを叶えてあげたんだがな...】


「こんなの頼んでない!」


「なんでこんなことするの?!」


「私はこんなの望んでない!」


「もうやめてよ『お兄ちゃん』...!」


【何故、そのことを知っているんだ..?】


「私、現世の湖で見たの!」


「本堂の扉が開いていて、奥には2人の子供が居た!」


「1人は子供で、もう1人は真っ黒だった...」


「私、思い出したの!」


「シウは私のお兄ちゃんで、暁ちゃんは私の双子の弟...」


「そうでしょ?」


私は必死にシウに思い出したことを


全て伝えた。


だが、シウは何も言わなかった。


その時、


「未唯!そいつから離れろ!」


という慧さんの声と同時に


イルムがシウに噛み付いた。


「やめて!お願いイルム...」


【主よ、我は掟を破ったんだ】


【だからもう我は主の兄では無い】


「違う!」


私の声が辺りに響き渡る。


「私が名前を付けたからお兄ちゃんはそんな姿になっちゃったんでしょ?」


「お兄ちゃんが掟を破ってたとしても、私も悪いからどっちもどっちだよ...」


【それでも我はいけないことをした】


【だからもう会えない】


『未唯、元気でな』


そう言いながらシウ..


いや、私のお兄ちゃんは


黒い煙と共にその場から消えた。

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