エクソシスト

@niwahakase0328

第1話 暗黒爆笑

〜とあるイギリスの都市にて〜


〜ネッシーステーション〜


駅は通勤の人でごった返しており、子供連れの家族も見える。

駅に1両の汽車が到着し、そして人をブラックマーケットの缶詰めのように杜撰に詰めて止まった。

汽車は大きく汽笛を鳴らし、出発の狼煙を上げる

そこで一人の少年が慌ただしく走ってくる。


赤毛でボサボサの髪が特徴の少年はものすごく焦った様子で駅の階段を飛び越え、

「待っっってーー!!」

駅には彼の情けない声が響き渡る。

その声の主に多くの群衆は彼に注目し、

そんな周りのことも気にせず、レオは「あっ!」と、何かを思いついたように声を上げる。


すると


ガンッ!ガッガッガッガッガッガッギギギギギ


よく見るとレオの手足は鋼鉄の義手と義足でできており、義足から大きい駆動音とともに一本ずつ変形し始める。足だったものは内側に折りたたまれ、膝元からはジェットが現れ、そこからは火を噴き出し、やがて、レオの身体を宙に持ち上げる。

そして、ついにその体幹は安定し始め、少年はついに飛び出した。

「イヤッッホォォォオオォオウ!!!!!!!」

レオは大きく声をあげ、宙に丸を描き、

線路の上に影を走らせる。

人々はその様子に驚愕し、「魔神か?!」と声を漏らす者もいた。

目の前の景色は前から後ろに前から後ろに流れて行く、鳴り止まぬ心臓の音、レオのテンションは

いま最高潮に達していた。

空のキャンパスには白色で真っ直ぐ線が引かれていた。

すると、レオの足のジェットの火が消え始め

彼はそのまま線路の上に顔を引きずりながら、

派手に着陸した。

「イテテテ…」

彼がゆっくりと寝返りをうち、空をしばらく見上げていると、レオは腹を抱えて引き笑いをした。

「ハァ〜ッは!はひぃ~ヒッヒッヒ」

自分は一体何をしてるんだろうと汽車なんか次が来るんだから、待てばいいのにと、自分のおかしさを彼は笑っていた。

しばらくすると一人の青年がやってきた。

「おーーいレオーー!お前また事故ったのか?」

「兄ちゃん!!」

「は〜〜お前はもうしょうがない奴だな、せっかくの義手と義足がボロボロじゃないか。ほら

さっさと鍛冶場に戻るぞ。」

兄はそっと手を差し伸べて、レオをよっと背負う。

レオは少し恥ずかしい気持ちもあったが、兄が来てくれる事が少し嬉しかった。

空に広がる青空がまだ無邪気な2人を見守っていた。

「ていうかなんで兄ちゃんがここにいるの?」

「そら俺はお兄ちゃんだからなお前のやろうすることなんてなんでもわかる。」

「お前が出発してから時間を考えたらあの汽車に乗ってないとおかしい、乗れなかったとなればせっかちなお前は飛んでくるだろうと思ったんだよ」

「まぁお前が事故るとは思わなかったけどな」

嫌味に兄は笑う。

「うるさい」

青空の元、青年が弟を背負い、歩く様子はどこにでもありふれた仲睦まじい家族の風景だった。


兄に背負われ、線路沿いを歩き、やがて駅が見えてきた。プラットフォームではたくさんの人が汽車を待っている。

多くの人は最初こそは心配そうに見つめていたが。レオを見るなりその目は軽蔑の目に変わった。

「あら、あの二人兄弟かしら」

「あいつ義手つけてるぞ!」

「面倒な弟を抱えてるとはあの子も可哀想に…」

っと群衆がざわついている。

「兄ちゃん…」

「耳塞いどけ」

周りの鋭い視線と、数々の軽蔑や同情の声はもう二人は聞き慣れたものであったので二人は何も考えずにそそくさと駅を出ようとした。

すると、二人の目の前に警官が立ちふさがった。

口元から髭を生やし、二人の身長を合わせたように大きく、ふくよかな警官はまるで小悪なものをみるような眼差しで二人を見つめて言った。

「この辺りでそらとぶ魔人が目撃されているのだが、まさか貴様らじゃあるまいな。」 

「ウチらフライワークスの弟子だ、ウチらが魔人を倒す為の武器を作ってるのを忘れたのかい?」

オドオドしているレオを横目に兄は冷静に警官に言葉を返す。

「どうだかな〜今の時代誰が魔人になってもおかしくない時代だろ〜〜そこでお前らが魔人じゃないと断定できる根拠はどこにもないだろ〜?」

醜悪な笑みを浮かべる警官に続いて、民衆も呼応

するように、二人が魔人であると騒ぎ立てる。

「この木偶の手足も悪魔との契約の代償で失ったものじゃないのかな〜」

警官はさらに民衆を煽る。

やがて民衆の魔人への怒りが爆発した。

「俺の家族を返せー!」「魔人はこの世には要らない!」「ウチの金盗みやがって!」

必死に兄が弁明しようとするが、

もはや、この駅には彼ら兄弟の居場所はなかった。

そして、罵倒や怒声を受けながら、二人は駅を急いで走り、その場を逃れた。

「みんな騙されてる.こんなんじゃ魔人の思う壺じゃないか。」

そんな苛つく兄の様子をみて、レオは申し訳なく感じていた。

「兄ちゃん…ごめん俺がちゃんと電車に乗っていれば兄ちゃんもこんなことには…」

「レオは謝る必要はないんだよ、兄が弟を助けるのは当たり前のことだ。レオが痛いのなら、レオが苦しいのなら、それらはいつだって俺のものでもあるんだ。わかったか!コノヤロ〜〜」

そう言って兄はレオの頭をワシャワシャと撫でた。

駅からしばらく歩くと彼らの職場が見えてきた。

古びた作業道具が散らばり、あたりには鉄臭い匂いが充満していた。

ここは「フライ・ワークス」という鍛冶場であり、剣等の武器はもちろん、あらゆる鉄製品を扱っていた。

すると、

「バァァァカァァァャ゙ァァァローーー!!」

鍛冶場の向こうから怒号を叫びながらこちらに老人が走ってくる。

すると親方はレオを背負っている兄ごと腹をその丸太の如く太い腕で殴り飛ばした。

「なんで俺まで……」

「レオお前また勝手に石炭持ってきやがったな〜?」

「チェ…ベツニイイジャンカ石炭のひとつや2つぐらい…」

レオは愚痴こぼしながら言う、

「良くないわ!!第一、お前の義足のジェットが飛ぶのに、石炭が何個要ると思ってんだ!今どき石炭も高いんだ、この義手と義足も没収だ!!」

「え〜これかっこいいのに〜」

「お前はこれで我慢しときな!」

と、ものをつまむ爪がついた義手と年季の入った義足を手渡してくる

「コレカッコ悪い………」

「しょうがない奴だな〜チョコレート買ってやるから元気出せよ」

落ち込むレオを見かねた兄はそう言って、慰めた。

「ホント!?」

レオはそう目を輝かせる。

兄はレオの頭に手をポンと置き、後ろに振り返り手を振り、去っていく。

兄から物で釣られたレオは去っていく兄に手を振り返し、その影が見えなくなるまで、懸命に手を振り続けた。

やがて、姿が見えなくなると、レオは頬を二回叩き、鍛冶場に戻り木炭で火を焚べ、剣を打ち始め、仕事に戻るのだった。

やがて、一本のファルシオンが出来上がる。

レオのファルシオンの出来は実に悪いものだった。

表面は凸凹していて、刀身はやや曲がっている。

この鍛冶屋には1つルールが有った。

それは

「一日一本!仕事したけりゃ打ってみせろ」

というものだった。

具体的に言うと、一日剣を一本作り、その出来栄え次第でできる仕事が変わるというものだった。 

前述したファルシオンの通り、レオの腕はお世辞にも良い物とは言い難かった。

刀身はよく見たら曲がっており、剣としての規範の姿を果たしていなかった。

レオはこのままでは、武器製造の仕事を任せて貰えないと思い、鍛冶場に飾ってある兄が作ったロングソードを取り出し、それを親方に見せることにした。


刀をみた親方は鋭く目を柄から刃先まで光らせると、ギロッとレオの目を見た。

「お前これ本当に自分で作ったのか?」

「何言ってんだ親方、これは俺の作ったもんだよ」と強気に、また自慢げに答えた。

すると、親方は血相変えてレオに怒鳴り、レオをその丸太のような腕で投げ飛ばした。

「嘘をつくんじゃねえぇぇぇ〜〜!」

「何すんだよ!ジジイ!」

「お前がこんな真っ直ぐな鉄が打てるわけなかろうが!」

レオは少しブーーと口をふくらませる

すると一郎はレオの頭をワシャワシャとかき、


「いいかレオ、まっすぐじゃ、人の道が曲がっていれば、剣も当然曲がる。

お前は曲がった物を作るのに長けているようじゃが、それはお前の優柔不断さが表れとる証拠じゃ、一度やると決めたのならバシッとキメろ!それが鍛冶に生きる者の生き方よ。イメージなき鉄に価値はない!」 


落ち込んだレオは今日は何もできそうにないなと、

ため息をついていると、

受付から呼び鈴の音が聞こえる.、親方がすぐ受付に向かうと、そこには誰もいない.その代わりに、受付には一つの紙と中々の額の金が置かれていた。

その紙にはとある指輪の設計図が書かれており、

裏には

「私の大切な人に渡すための大事な指輪を

依頼したいのですが、あまり周りに知られたくないためこのような形になってしまったことお詫びします.代金はそちらに置いてあるのをお使いください、後日そちらに取りに行きますどうかよろしくお願いします」

と丁寧な文調で書かれていた。

設計図を見たレオはそれに深く関心していたと同時に、疑問に思っていた。

「素敵なバラの彫刻だ.細かいところまできちんと丁寧に描かれている,でも何故専門店にではなく鍛冶屋に依頼を出したんだ?」

 

「きっとコイツにとってその人がよっぽど大切なんだろきちんと仕上げてやらね〜とな」

一郎は横で嬉しそうに、また、わざとらしく笑う

「この仕事お前がやってみろ」

「え!?マジ?やっていいの?」

「こんなキレイな設計図があるんだ、それにお前も仕事となれば手は抜けないだろ」 

「やった!.分かったよ親方!!すぐに取り掛かるよ!」

そうしてレオは目をキラキラさせながら、作業場に飛び出していくのであった…



夜もふけ…深夜12時まわり出し街は静まり返っていた.レオ 俺は指輪の素材の買い出しを終わらせ、鍛冶場に戻ってきた。

「つかれた〜〜」

レオは腕を大きく伸ばし、鍛冶場に帰還した。

いつも鉄を打つ音でうるさい鍛冶場の記憶が真夜中の静けさを助長している。

レオはその静けさに違和感を覚えていた。

(おかしい。いつもなら奥の親方の作業場で、真面目な親方は納得のいかないものを何度も何度も作り直している頃のハズなのに。それに兄ちゃんはまだ帰って来てないのか?)

レオは心の中で少し不安を覚えつつ親方をよんだ。


「親方〜〜親方〜〜オヤカタさんヨ〜」


普通に呼んだりふざけて呼んでみたりを繰り返していると、親方の部屋の前にたどり着く、なぜだか嫌な予感がする.別に何かがあったわけではないのに、彼の身体はそのドアを開けることに対して危険信号を発しているようだった。

ついに意を決してレオはドアを開ける…そこには


血まみれで十字に切り裂かれた親方と黒色のブリーチを身に着けた青年がいた。

青年は月光を背にし、窓枠に立って嬉しそうに立ってこちらを見つめていた。


「うッッうっっわ〜〜〜〜〜」

レオは顔を歪ませ、急いで逃げるが、遅かった。

部屋を出ようと、振り返った瞬間

レオの視界が下に傾き始め、倒れてしまった

困惑するレオは、自分の義手と義足がキレイに切られていることに気付く。

青年はトコトコとレオに駆け寄る。


「君って確かこのおじさんのお弟子さんのレオ・ハウズゲートくんだよね?はじめまして!よーしここははじめましての握手だ!」

「……」

「あれ?あっ!そっか〜君確か手足がないんだったね〜ごめん!」

「な...ん...で……」

レオは恐怖と困惑で声が出ないようだった。

自分は何か悪いことをしたのだろうか。

お兄ちゃんは無事なのか

レオは頭の中で考えを巡らせる。


青年は「ロンドン橋おちた」を歌い、レオの周りを回る。

月光が男の頬のつり上がった笑顔を照らしている。

その笑顔に、レオはイヤでも悟らされた.この人は街の人とは全く別の存在だということを……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エクソシスト @niwahakase0328

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画