にくぼう先輩は今流行りの受けであり、後輩のチョロゲは努力する攻めである【カクヨムコン短編Vr】

クマとシオマネキ

付き合いの長さと身体の相性は比例しない

『好きな人が出来たの、だからさ、別れたい…』

「え?………あ、なんで?」

『永久ってさ、友達にしか見えないんだ…』


 今まさに、付き合っていた彼女にフられている俺は久宝くぼう永久ながひさと言う。


 高校2年の冬に幼馴染とお付き合いし、好きな人が出来たと言われ、今、フラれている高校3年生の秋である。


 何か友達とか言われたが、フラれる理由で思い当たる節がある。

 カップルの、夜のアレだ。

 俺は一回戦で敗退した、要は反応しなかった。

 その後も一回戦敗退ボーイを繰り返す、別に不能な訳じゃ無いが…まぁ、女性はそんな男の下半身の態度に酷く傷つくらしい。


 幼馴染の日野ひの美智代みちよ、あだ名はミチ、小学校から付き合いだ。

 昔から知る、何でも言える関係…ではなかったなぁ。

 付き合いは長いが、何でも知っている訳では無いし言わない。

 心の中まではお互い分からないし、隠し事すれば気付かない。

 ただしお互いの距離が近いからお互いの隠し事の隠し方が雑になる。


 幼馴染あるあるの、家は隣…という訳ではないが斜め向かい、だから新しい男の影はすぐ分かる。

 俺の付き合っている期間と、始めた期間が半年程被る、大学生の家庭教師だ。

 

 だから何だろうな、想像すると

『彼氏がアレが不能?なら俺が喜ばせ方教えて…以下略』とか

『彼氏が不能で寂しいの…だから以下略』

 みたいな事だろうか?


 知らないとでも思っているのだろうか?

 部屋の電灯で映し出される影絵で、キスしていたのが見えていた事を。

 色んな事を考えながら答えを返した。


「分かった…好きな人が出来たならしょうがない。」


 ヘタレだ、いや、俺にも原因があるからだ。

 キチンと別れを伝えてくれた、だから俺は…


『でもさ、これでギクシャクするの嫌だから友達に戻りたい…喧嘩してる訳でもないし…駄目?』


 それな?

 違う、そうじゃない…そうきたか。

 俺、嫌なんだよなぁ…『出来なくてゴメンな、頑張るから』って繰り返して、頭垂れ謝った相手と友達か…それにミチは友達とかに言ってると思うんだよ。俺の夜の行為の話をさ。

 だからミチの友達という薄い交友関係をミチごと消したい。


 俺達の付き合いは長いのだから。だけど俺は…


「まぁ良いけど…すぐには無理かな…少し距離をおきたい」


 お前は今はどうかしらんけど、俺は今も好きだし、俺なりに努力もしたし、恥もかいたからさ。

 空回りした努力の期間ぐらい、少しだけ悔しいとか悲しい気持ちにさせてくれ。


『そっか、分かった…それじゃ…今までありがとう。バイバイ』


 あぁ…曲解して行ったな。俺が怒っていると。

 売り言葉に買い言葉、だけど売り言葉の意味が違うんだ。

 でも、これで小学校からの付き合いが終わったんだと思った。


 何とも言えない気持ちのまま、俺がいた部活へ行く…去年、先輩が大きい麻を吸ってたせいで廃部になったが新しい部活も出来ず、そもそも2つある音楽室の小さい方を間借りしてるだけなので、使ってても誰も気にしない部室…部活名は倶楽部。


 要は夕方からDJの先輩が学校終わって夕方からクラブごっこをして大音量で音楽流す、DJやりたい奴はタイミング見てDJブースで入れ替わる、そこで踊る奴やら何やら、俺はクラブミュージックが好きだけど、ずっと座って目をつぶって聞いてるだけだった。


 要はクラブ文化を自由に音楽室で再現していて、ピーク時には暇な帰宅部や大会の終わった運動部やら結構人が来ていたが…


 自由と自分勝手を、レールと法律を履き違えた、とある先輩は何を思ったか、レコードを回しながらおもむろに煙草を咥えた。

 そして煙で先生に見つかり一発アウト…までは良かった?良くは無いが同日にその場にいた誰かがチクったのか、学校に警察が来てそのままタイーホされた。

 何故なら煙草では無く、違法のモノだったからだ。


 部室に入るとまさに夢の跡、当時の大きなスピーカーや楽器、ターンテーブルが置きっぱなし。

 そこでスマホを使い音楽を流す。

 スピーカーに繋いで大音量で。


 目を瞑ると蘇る音、喧騒、耳鳴りのする様な波…


『センパーイ!に久宝先輩!おつかれっす!なんすか?またクラブミュージックでオ!ンガク!ニーですか?マスタベっすか?』


「いや、違うね」


 いきなり音を消され話しかけて話しかけて来たのは二年の天鳴あまなり曼弧まこ

 通称【チョロゲ】だ。

 苗字名前共に下ネタで男子に揶揄われたそうだが強く生きている軽音楽部の後輩だ。


『相変わらず先輩は肉棒らしくない仏頂面ですねぇ、もっとビキビキして(笑)そんなんじゃ肉棒が泣きますよ?あ、もう泣いてるか(笑)私のパンツ見てますもんね』

 

 黒板の下で、床に座っている俺から確かにチョロゲのパンツは見える。

 テカリのあるグレーだ。じゃなくて…


「お前のじゃ反応しねぇよ、馬鹿馬鹿しい(笑)」


 コイツはまだ部活があった時に出入りしていたバンギャだ、いや、ギャルか?

 現在もスカート短くてパンツ見えてる。

 しかし漫画に出てくるような優しいギャルじゃない、口も悪いし…性格も自称で悪い。

 よって友達は少ないし、特技は楽器で趣味は小説読むとか意味わからない…汚い金髪、脱色をしてるが自分でやってるんだろうボブカットでテッペンを飾り付いたゴムで結いでいる。

 その髪型から付けたあだ名がチョロゲだ。

 我ながらネーミングセンスねぇ…


『んで、肉棒先輩、聞いてくださいよ?彼氏がですね、デートなのにつまんねぇバイクの何だって言って車検場とやらに連れて行かれ…聞いてます?おい!肉棒!この仏頂面馬鹿!』


「聞いてるよ、おめでとう。良かったなチョロゲ。後2年は人間でいられるな。彼氏も車検間に合って良かったね」


『私のじゃねぇッスよ!ほら聞いてない!だからッスね、つまんねぇデートの………』


 チョロゲがなんか言ってるが、ニヤニヤしながら話を流す…

 何かな、別れてから思うのは、俺はこの時間が好きだ。チョロゲがペラペラ喋る時間が、内容はともかく、まるで音楽みたいに耳に入る。


 チョロゲは同年代の彼氏がいる、音楽をやっているのかチョロゲも軽音楽部で、俺も仲の良い先輩の関係で顔ぐらいは知ってるが、どちらかと言えばヤンキーだ。

 チョロゲの幼馴染だそうで、こちらもこちらで最近付き合い始めたらしい。

 向こうから付き合おうと言ってきたそうだが、何だが上手くいってるかどうかは知らない。

 まぁ話をするって事は上手くいってるんだろうな。


 ただ、チョロゲの所は知らんが、俺と幼馴染は何でも言える関係じゃなかったのは確かだった。

 好きって言う感情も何処か、半ば強制的な気がしてな…お互いが空気みたいな関係じゃなくて、俺はもっと話を聞きたかったかも知れない。

 別にお見合いでも無いのにそんなこと考えて…

 だとしたらそれは俺の我儘で…


『で!車検場で私一人でずっと番号眺めてたんっすよ!え?聞いてます!?先輩!おい!肉棒!』


 それに引き換えこの後輩は、目の前で跨る様に椅子に座って、背もたれに前から寄りかかる様にこちら向いてるから…背もたれは下部分が無いからこれまたパンツ丸見えだ。


『なに?先輩?私のパンツ見てんっすか!?キモ!肉棒の名に相応しいエロッスねぇ、この間男!』


 間男だとお前とヤッてる事になるが…まぁコイツが俺の性癖どストライクなのは置いておこう。

 


 そんな毎日…幼馴染にフラれて距離を取って、学校行って数少ない友達とダベリ、夕方から部室でダラダラしているとチョロゲが来る毎日を過ごし、冬の12月頃…突然別れたミチの両親が家に来た。

 

 まぁ親同士繋がりがあるからな。


『永遠君と付き合っていたのは知っている。しかし突然学校に行かず塞ぎ込んでいるのは知っているか?』


「いえ、知りません。なんすか?」


『なんでそんな態度なんだ!?美智代に子供が出来ているのは知らないのかっ!?』


 わぁ、コレはキツい。アイツ何やってん?


「知りません、一つ言っとくと10月頃に別れてますよ?フラれてます」


『え!?それじゃあやるだけやって…』


「そうすね、出来るとしたら俺の意図とは関係なく金玉からワープして子宮に行かないと…そのやり方しらないですし?」


 アイツもちゃんと説明しろよ、めんどくせぇな…


『え?そんな…』


「アレじゃないっすか?クイズです。俺は童貞、付き合い始めは1月頃、秋にはフラれて、家庭教師は7月の夏休みから…だ~れでしょう?解決編はDNA検査の後で!いや、知らんがな(笑)時期が被ってるがな(笑)…ミチヨさんはなんて言ってんですか?」


『え?あ……その……塞ぎ込んでて何も……』


 察してくれたかな?てか、終わってんな。

 学生なんだからせめて避妊はしろよ馬鹿が…と、付き合い長いからその部分は少しイラッとした。


「俺にその話、しなかった事にして貰っていいすか?アイツの高三最後のバイオレンスショーに関わりたくないんで。アイツから好きな人出来たって言ってフラれたんで。家近いし、ほとぼり冷めたら知り合いに戻る約束されたんで。戻る時に気不味いので。そっちでケリつけて下さい」


『あ…す、すまん』『永久君、ごめんなさい……』


 結果だけ見ればアイツの両親が恥さらしただけ。

 なんて酷い話だ、まぁ俺との子供とか言ったら全力で抵抗したけど…早とちりだから良いか…すぐ引いたし。


『アンタ別れてたの?』

「おうよ、ピチピチの童貞よ」

『いや、それは聞いてないけど…まぁ大変だったわね、おつかれさん…あの家との付き合い考えるわ…』

「まぁあんまり波風立てないでくれよ、関わらないのが一番じゃん?」


 寝取られ托卵小説…チョロケ゚が教えてくれたんだな。

 浮気した女が嘘ついて元カレの子って言う話。

 元からこの歳で親父になる気なんかない。

 今はDNA検査も血液検査もあるからな、顔も似ないって言うしな。

 拒否すんならクロって事だろ?てか、その托卵戦略頭悪すぎだろ。


 そして風の噂(ご近所噂話)で聞いた結末、結局子供は出来てなかったと。

 検査キットの誤反応で、それを見た本人と両親が大騒ぎ、病院に行ったら出来てませんよって。

 んで、それを期に大学生の家庭教師を呼んで裁判、めでたく責任を取ると、公式にお付き合いだそうだ。

 責任取るって…何も責任発生してねぇが?いや、俺への説明責任(笑)…と思ったがどうでも良いか。

 と、に、か、く、関わらないのが一番!


 そんな俺は…三学期、結局学校で面倒な事になった。

 何だがすっかり憔悴してるミチに、付き合っている筈の俺の冷たい態度。

 世間は別れている事を知らず、ミチも説明しない、結果、俺の浮気で別れた事になっていた。


 何故か?世間は悲劇のヒロインを好む。


 俺の少ないが親しい友人には、噂自体信じてないし、前から俺が全部ゲロってた。


『だってお前のアレ、終わってるもんな(笑)』


 うるせぇし…俺がアレは不能なのは、俺のせいじゃねぇし、条件を満たせば不能じゃねぇレアだし。

 

 そして相手は…チョロケ゚…との浮気だそうだ。

 高2の時からチョロケ゚は俺のセフレで、部室で会ってる時は毎回やってたらしい。つまり3〜4時間(笑)性豪(笑)

 それでミチは更に意気消沈、マジかよ。


 どうせ火を付けた犯人は…ミチの友達辺りだろう


 ちょっと心配だから、チョロゲに会った。


「オッス、チョロゲ!お前に迷惑かけて、本当にすまんかった。彼氏に釈明も何でもするし、チョロケ゚の彼氏に殴られるのもOK!優しくしてほしいが…無理だろうな」


『いや、良いっすよ!にくぼう先輩は別に何もしなくて…私も彼氏の事、何か勘違いしてたっす。ごめんなさい、彼氏にも言っとくッスね』


 悪魔の証明だからな、チョロゲには悪い事した。

 何やらチョロケ゚もいつもより少し落ち込んでいる。何か口の横ちょっと切れてるしな。


「どうした?何かあったのか?いつものマシンガントークはどうした?」


 俺もそんな喋る奴ではないが、最近コレ系の事で喋る事が増えているからなかなか饒舌になった。


『今回の件で思ったんスけど…先輩は幼馴染の彼女の事…信じきれたっすか?付き合いが長ければ…口にしなくても分かりあえるなんて、本当にあるんスかね?…』


 ウ~ン、珍しくナイーブな態度のチョロケ…これはちゃんと答えなければ駄目か…


「無い無い。何も言わないで伝わるなんてまず無いし、そもそも隠し事だらけだ。まぁ浮気は想定外だったな。隠したままフラれるのは更に想定外だ、俺の場合」


『え!?別れたんすか!?』


「あぁ、残念ながら結構前にな。お前の好きな小説風に言うとNTR、家庭教師の大学生とヤッてた。俺とはしてないっていうか、俺はしたことないのにな(笑)」


『え?ええ!?先輩何で!?それにNTR好きじゃねぇっすよ!』


「俺か不能人間だからだ(笑)やっぱりアレだな…特殊なエロいの見過ぎで性癖狂ったのがヤバかったな。着衣フェチ、野外、臭い、体液、受け身…沢山あるけど…いや、何でもない」


『え?え?いや、話続けるッスよ!』


 言ってる途中でチョロケ゚のビックリした顔て現実に戻る。


「続けるの?とにかくお互い裸でヨーイドンとか、俺がリードして普通にとかでは無理になった…でも幼馴染だと親の顔もあるし、周りの目もあるし伝える前に何とかしようと思って、色々踏み込んだが短期間で改善はなぁ…性癖敢行して断られると心が悲鳴を上げるし…まぁどうでも良いんだよ、そんな事は…お前はどうすんの?俺としてはもう卒業まで殆ど学校来ねぇからここには来ないわ。お前は俺をめっちゃ下げて株上げろ、どうせ嘘なんだし」


『そ、そうっすか…分かりました……って何勝手に決めてんっすか!本当に間男になってどうするんっすか!?馬鹿ッスか!?』


「そうそう、そんな感じがチョロケ゚らしい(笑)それでこそ俺のセフレ(仮)、俺、進路も決まってるしこんな馬鹿な事に巻き込まれたくないしな!高校に残るチョロゲは大変だと思うからごめんな!じゃ、またな。元気でな〜。来世こそ本当のセフレになろう(笑)」


『え?セフレ!?あ、ひきょうもの!それ逃げっすよっ!待てっス!』


 チョロゲとのお別れは楽しいものにしたかった。

 んでもって卒業式前に例の退学になった先輩に呼ばれて…


「先輩、相変わらず歯が減ってるしダミ声で何言ってるか分からんし、その変なグラサンやめてないんすね」


『久じぶりに会った話が歯がない話がよ(笑)永久は変わらねぇな』


「でも変わらず先輩のリミックスは好きですよ」


『そう言う所もなぁ…いや今日はひざじぶりって話じゃねぇんだわ』


 退学した先輩とはまぁ仲が良かった。一応部活の後輩だし、何せ音楽がカッコいい。

 いや、違うな。人として終わっているけど暴力は嫌いだし、基本優しいんだよな、この人。

 この人の友達は興味無いからクラブにゃ行かないが…人柄は尊敬出来る先輩で、その人の話では…


 久宝と言う男がごりごりのギャングスタラッパーのケンって奴の女を寝取ったらしく、探していて殺すみたいな空気だそうだ…俺の話!?


「俺童貞なんすけどね、まぁ証明は難しいでしょうね?ワトソン君」


『何言ってんだ(笑)お前が童貞だろうがなんだろうが関係無ぇけど、マコってお前が可愛がってた後輩だろ?…まぁ一発殴られて終わりになるように努力してやるよ』


「努力足りなくないっすか?」

『はぁ…本当にお前は…』


 はぁ…身に覚えがあり過ぎる。

 ケンってラッパーはチョロゲの彼氏、学校での噂ではチョロゲは俺のセフレです。つまり?彼氏が怒る(笑)


 そしてクラブに入ってくるギャングスタラッパーの一団、見た事ある奴が先頭にいるなぁ…一回クラブで挨拶されたもんな。


『久宝さんよ、マコに手ぇ出してどうなるかわかってんだろうなぁ!?なめてっと殺すぞッ!?』


 バイオレンスの神様は俺に二の矢三の矢を用意している。

 違うな、面倒くさくて逃げたからだなぁ…


 まぁ良いや…もう良いや、どうでも。


「だから何?so cool?(それってカッコいい?)」


 格好つけて先輩のマネをした瞬間に顔面に凄い衝撃、分かった事はビックリすると痛みを感じない事でした。痛みはないが、ただ凄い衝撃で視界真っ白。

 そして…口の周りが一瞬2センチぐらい凹んだと思った。


『オラァっ!でめぇそのべんにじどげゃあ!』


 そして審判こと先輩、身体がスライム系だからちょっと遅い…だから…もう一発左で右の目の辺りを殴られて後ろに倒れた。

 運が良い事にクラブにいる誰かに当たり、ゆっくり仰向けに倒れた。


 力が入らない…顔も痛くなってきた。あぁ…俺がなんで…少し涙を流しながら、一言ぐらい恨み言でも言うか。


 浮気して別れて妊娠する馬鹿のミチ

 彼氏をコントロール出来ないチョロゲ

 勝手に庇ってワンパン確定させるくせに2発になっちゃう優しい先輩

 そして、何も出来ないクソな俺


「どいつも…こいつも…じぶん…がって…みんな…しね…よ……」


 すると先輩が覗き込んで俺に言った。


『おう、久宝。良いゼリフだな』


「先輩は…ワンパン審判失格…どうしょもねぇ」


『なんだそりゃ、手打ちにしたぞ。もう良いって(笑)でもまぁ良かったな、ケンが格闘タイプじゃなく(笑)』


「ポケモ…じゃ…あるまいし…」


 何がおかしいんだってくらい顔が痛いが、先輩に車で送って貰い、家に投げ込まれた。

 親はギョッとしていたが『記念です』と言ったらため息つかれた。日々の行いだな…


 そして俺は面白い顔面の抜けた歯(前歯真ん中2本の右隣)のまま卒業式に出た。

 これもネタだ、友人は大いに笑ってくれた。


 遠くで見ていたミチがギョッとしていた、間接的にはテメーのせいだからな。

 式の時に2年の席にいたチョロゲもギョッとしていた、オメーの彼氏のパンチだからな。

 なんてね、そんな事さ、思ってないよ。


 俺はこの後、都内の専門学校に行く為に、同じ地域にある空き家になった祖父の家で一人暮らしだ。

 だから例の件の関係者とは話したくない、全てを捨てるつもりで、誰にも顔合わせないうちにさっさと帰った。顔もいてぇし…


 そしてこれは、逃げてから1年後ぐらいか?

 後から友達と先輩から聞いた話。 


 あの後、噂に気付いたミチは、俺とかなり前に別れていた事を友達に言った、だから俺の浮気は分からないけど新しい女説は否定しなかった…多分そういう事はしてないと思うと言ってたらしい。

 まぁ別れてから俺が突き放したから知らんしな。

 ただ、自分が浮気した事、陽性騒ぎに関しては何も触れなかったみたいだな。

 その後、大学生とは別れたらしい。


 チョロゲはヤンキーの彼氏、俺に綺麗なワンツーを入れたケンとは、俺をぶん殴ったのが後日発覚し、それが決定打となり別れたそうだ。

 卒業式前に口が切れてたのは彼氏から殴られたそうで、しかも逆ギレして『アンタじゃなくて肉棒先輩にすれば良かった!』と言ったせいで俺の肉棒の虜になった彼女の目を覚まさせる為に俺(肉棒)を殺す決意をしたらしい。ケンにNTR小説読ませたら皆殺しだな…

 そしてこれは先輩から聞いた、ケンは別れてからDVストーカーになったらしいが先輩が何とかしたらしい。ヤンキーってメンヘラになりがちだよなぁ(笑)




 月日は流れ、ネット関係の専門学校というフワッとした所に進学し二年、決まった就職先は医療機器の営業という意味不明な人生だ。


 そして成人式…同級生に成人式の日に会おうと言われ、まぁ、ほとぼりも冷めてると思うし、俺の記憶も曖昧になって来て油断して行ってしまった。

 

『ねぇ!永久!?永久でしょ!?待って!!』


 俺はその時まで忘れていた、幼馴染の声。

 待つからデカい声出すなよ…


『ねぇねぇ!久しぶり!友達からでしょ?じゃあ一緒に飲もうよ!二十歳なったお祝いで!』


 理由なんか何でも良かったんだろうな、だってさ。酔ったら距離近いんだもん…何でだろうな。


『今は女大行っててさ〜色々あったの』


 色々有りそうですね、親から何かメンヘラみたいになってたって聞いたから。しかも1年浪人してんだろ。


『彼とはすぐ別れたよ…あの後、すぐ。気を使う関係が私には難しかった…永久と付き合っていたから余計にね。永久もマコちゃんだっけ?もう一緒じゃないんでしょ?』


 親しき仲にも礼儀あり、ねぇ君、あれはぁ?


『私さ、やっぱり永久が良い…ねぇ…より戻さない?駄目…かな?』


 何に酔ってんの君?酒?自分?…俺またミスりそう。もう駄目だわ…我慢できる大人は凄いね。

 俺、一滴も飲んで無いけど無理だわ。


「おめでとう!フェイクマタニティ!二股ニィ!上手い事言えないけども!」


『え?な、なに?』


「浮気した事先に言えっつーんだよ!バーカッ!誰が嘘つきと付き合うかよ!アホがッ!」


 バンッ!と金を置いて去る。実家近所だから良好な関係と思ったけど無理だ。


『待って!違うの!!』「ちがくねぇ、じゃあの!」


 俺は勢いのまま、居酒屋を出てクラブに行く。

 先輩に挨拶だけして帰ろ。東京に戻ろう。

 先輩が今日回してるのは聞いてるからな。

 

 そしてクラブに入ると好きな音楽、先輩のだ。

 DJブースに顔だけ出そうと近寄ると…


『先輩!肉棒先輩!待って下さい!逃げないで!』


 ガシィッと掴まれ抱きつかれた。俺は逃げるキャラになっていた。


「チョロゲ、お前のオラついてるオラオラ(二発)するスタンドは近くにいませんか?一般人の歯は命なんです…」


『別れたッス!もういないっスから!だから待ってっ!』


「分かった分かった、逃げないよ。んでどうした?元気そう…だな?」


 チョロゲはギャルじゃなくてボンテージ系のトーヨコスタイルになっていた。

 メイクはバンギャっぽい感じからナチュラルメイクと言うかしてない。

 視界の端にあるのはストローの刺さったエナドリ…やだぁ…


『色々あって…色々あったのは良いんすよっ!それより約束ですよ!肉棒先輩は約束守るんっすよね!?』


「ええ?なんすか?エナドリストロー人間と約束した覚えはあーりませんが?見える地雷は踏まないのが俺の…」


『セフレッスよ!肉棒先輩のセフレにしてくれるって言ったじゃないッスか!?ストロー刺さない!エナドリやめるっス!変えるっス!先輩の好みに変えますから!』


 そんな人を竿師みたいに言うなよ…見てるじゃないか…周りが…困惑していると先輩がブースから出て来た。


『久宝、久しぶり!変わんねぇなお前…マコはずっとお前の事待ってたんだからよ?良いじゃねぇか、持ち帰りしろよ。どうせコイツ帰る家ねえし、行く所もねえからクラブに入り浸り、だから引き取ってくれ』

『ちょっとスライム先輩!やめるッス!ネタバレ禁止!』


 ガチャっと音がしたと思ったら玩具?の手錠で繋がれた。


『じゃあレッツゴーッスね!肉棒先輩♥!』


 いや、ハートじゃなくて…まぁ良いや…


「じゃあ…車で東京の家帰るけど良いか?とりあえず話す事もあんだろ」


『あ………はい…いっぱい…あるッス……』


「じゃあ行こうか?」


 こうして俺の成人式は急ピッチで進み、日帰り&お持ち帰りをしてしまった。


 車内で聞いた、チョロゲ…じゃないな、今は、マコの事。


 俺と浮気の噂が立って幼馴染のケンに殴られる。

 一度もしてない、信じてと繰返したが信用してくれなかった、長い付き合いのある幼馴染にも関わらず。だったら俺の方が良かったと叫んでしまった。


 それから暴力が悪化、マコは元々、片親で一緒に住む母親が手を上げるタイプでトラウマがあるし、そのせいで自分を強く見せているだけで、心が弱いのは知ってた。

 ケンは知ってる筈なのに暴力を振るった、だからマコも怯える様になる。その態度が余計に刺激したらしく増える暴力…俺を殴った事を知り、とうとうオーバードーズやらリスカやらし始めた所で先輩の所に逃げ込み保護された。


『に…肉…いや、久宝先輩は絶対に暴力を振るわない。私も思ったし…スライム先輩からも聞いたから…だから…』


 そんでいつかクラブに来る俺をずっと待っていたんだと。ハチ公かよ…


「そもそもセフレってのがおかしな気がするけど?別にチョロゲ…じゃないけどまぁ良いや、とにかく落ち着くまでウチにいて良いし、あんまり深く考えるなよ」


『分かったッス…肉棒先輩の肉棒は私じゃビキビキじゃないんっすね』


「いや、そんな話はしてねぇし…」


 くらい過去話を交えつつ東京の家に帰った…日の夜。

 布団を別に敷いて寝ていると横から『ふっ…んぐ…あっ』と、くぐもった声。そして…


『…先輩?起きてるっすよね?』


「え?あぁ、まぁ」


 そりゃ…横でそんな声出してれば…と思ったら、急に何かビチャっとした布が顔に被さった…パンツだ。


『私ならビキビキ先輩に出来る…ッスから…この一年聞いて回って…その…こうして欲しかったんすよね?この…変態ッ♥』


 俺の顎を掴み唾液を垂らすマコ…そしてむしゃぶりつくよう這わせる舌、俺はビキビキでバキバキ、俺は始めてで、彼女も初めだったとさ。


 ふしだらな毎日を繰り返す日々、俺はマコに言った。


「セフレとかもうやめない?」


『何でッスか!?飽きたんっすか!?あんなに肉棒先輩バキバキなのに!?』


「いや、だからさ……」


 そう、俺は変態、名器が勝つ!

 だからどうしたって、話ですが(笑)


 おしまい【ここまで9995文字】

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