@kawakawatoshitoshi

第1話

 喫茶店の奥には扉があった。

 その扉が、いつも気になって仕方がなかった。

 店員が入っていくのを見たこともないし、何に使われているのかもさっぱりわからなかった。

 トイレと間違ったふりをしてドアノブに手をかけた事もあったが、鍵が閉まっているようだった。

 いっそのこと店員に尋ねてみようとも思ったのだが、何となく聞きそびれていた。

「あ、地震だ。」

 みるみるうちに揺れが大きくなり、私はテーブルの下へ避難した。

 しかし、揺れはおさまるどころか、

 一層大きくなり、店員や他の客から悲鳴があがる。

 その時、不意にあの扉のほうを見ると、扉が開いているではないか!

 私はテーブルの下から抜け出し、本能的に扉の中へ向かう。

 食器棚から皿や何やらが落ちる音が聞こえる。

 私は一心不乱に扉の中へ入った。


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