厨二病ヒーロー

サスライワシ

第1話

「はあ」

僕――柊大智ひいらぎだいちはため息をついた。

いつもの日々。変わらず暴力を振るわれる日々。でも、あと少し我慢すれば、あいつらとはおさらばだ。


僕はそう考え、気力を戻して外に出た。

「この風景ともお別れか…」

幼稚園から見てきたこの風景。住宅街で、特にこれがすごい!と言ったものはないが、僕にとってはとても大切な日々だ。

「・・・」

僕は近くの本屋に立ち寄って、立ち読みをしようと思った。

「らっしゃっせ〜」

やる気のない定員の声。まあしょうがないだろう。こんなところだし。


僕は内心苦笑いをしながら、小説を立ち読みしようとした。

「ん?」

僕は新刊に目が向いた。僕の本を読むかの基準は表紙とあらすじだ。それによって変わる。


目に写ったのは、『厨二病ヒーロー』だ。作者は『誰これ?』と言えるような人であった。


でもそんなことはどうでもいい。僕はあらすじが気になったのだ。


『おれは、中学の頃はいじめられ続けていた。至る日も殴られ蹴られ、机には落書きをされ、しまいには病院送りにされたこともあった。でもそんなとき、助けてくれた人がいた。そう、厨二病の人だ。おれは憧れた。今まで厨二病はやばいやつしかいないと思っていた。だが、救われて僕はかっこいいと思ってしまった。そしておれが変わろうと思った。――これはいじめられた人厨二病に助けられた人痛くても避けられても自分の道を進んでいく話』


「・・・」

この主人公、僕と似ている。。そんな共通の意識なのか、僕は、ホッとしてしまった。すぐに悔やんだが。

そして僕はいつの間にかこの本を手に取っていた。まるで僕な体がこれを読めと言っているかのように動かしてくる。




僕はこの本を買った。



家に帰って僕は呼んだ。主人公がいじめられているところから、厨二病の男性が助けに来て、こてんぱんにやられ、でも諦めないところ。

そして退治をするところ。主人公が変わろうとするところ。いつの間にかすべて読んでしまった。名前を聞いたが答えずにサラッとどっかに行ってしまう。でも主人公が大変なことになったときは助けてくれる。


「すごい...」

つい口に出てしまった。脳から、全身に電撃が来たみたいだ。しびれてる


こんな力があれば、僕は変わることができるかな、と。皆が言う高校デビューにできるのではないか。


そう思ったが、すぐにためらった。皆の前で厨二病ちゅうにびょうをしたら変なやつと思われて、友だちができず、ボッチひとりになってしまう。


夢のいじめのない高校生活が送れない。変わりたい変化させたい自分と、変に思われたくないボッチになりたくない自分。そんな気持ちが重なった。僕にはどうしようもない。


夢物語だなと思えてしまう。


僕は頭を冷やしに外へ出た。星があたり一面に広がっている。あれはオリオン座だろうか?



星を見ながら歩いていると、僕にとって分かれ目に出会った。



目の前で女の子が襲われそうになっている。女の子はこちらに気づいて、助けを求めている。


僕は見た瞬間、電撃が走った。


――まただ。また僕は友達を助けず逃げてしまうのか。僕はそんな自分が嫌いだ。うじうじしている自分が嫌いだ。ためらっている自分が嫌いだ。もうどうでもいい。僕は、いや、我は!


「おいそこの小童こわっぱよ。我のゆく道をさえぎるでない!」


僕は星が満天の空で、堂々といった。

「あ゙”あ゙”?なんだと?何つった?」


女の子は放って、こちらに来る男。やっぱり怖い。逃げたい。怖い。逃げたい。怖

い。逃げたい。怖い。逃げたい。怖い。逃げたい。怖い。逃げたい。


でも...でも...僕が変わらないと意味がない!!


「聞こえぬのか?猿はこれだからの...まあ良い。もう一度言うぞ、記憶力のない猿。『我のゆく道をさえぎるでない!』」

「てめえ!!」


男は襲いかかってきた。逃げたい。だが立ち向かう。小説の厨二病ヒーローのように、諦めない!!

「ガハッ」

「ゴホッ」

「グヘッ」


僕は殴られた。殴られ続けた。

「こんなもんでいいだろ。さて、嬢ちゃん?」


一通り殴られ、僕が動けないと思ったのか、女の子のほうを見た。

「ひいっ...」


このままでは駄目だ。諦めない!!


「おい」

「あ゙”?」

「まだ...終わって...無いぞ...」


僕ができる最大限を――探せ

「はっ。そんなボロボロで何ができるんだよ?教えてみな」


昔の僕に勝て――が昔の僕を超える!!

「教えると思うか?この記憶力がない猿が」

「まだ言うかてめえ!!」


男が近づいてきた。僕はすでに朦朧もうろうとしている。僕ができることは――

「そこの小娘!!これは見世物みせものじゃない!!さっさと去れ!!」

「!!」

「おい、まちやが――」


行かせるか!


「おい、猿よ」

「あ゙”?」

「教育がなっておらんようだな。今まで野生だったのか?野で裸だったのか?」

「この野郎が!!」


また殴られる。僕の記憶はもう消えかかっている。これで良いんだ。僕は。僕は変われた。その喜びが胸を満たしている。




そして気を失った。

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