1月28日(日)

時間が経って少し冷静になったからか、あのときのやりとりを思い出してきた。

間宮くんは「どうしても一緒にいたい人がいるから」と俺に包丁を握らせた。ケーキ屋さんについた俺に「あの子と一緒にいたいんだ」と柔らかな笑みで伝えた。

そのとき俺は全部わかって、あのアルバイトの子が彼の恋人で、俺は間宮くんにとって単なる道具でしかなくて、彼の幸せに俺はいなくて、ぜんぶどうでもいいかと思った。

包丁を後ろ手に持って彼女に商品を聞くふりをしてカウンターから出てきてもらった。

そして刺した。真っ赤だった。

間宮くんが嬉しそうにふふふって笑って、後ろから耳元で「ありがとう」と言った。

振り返ったら、おばけになった怯えてる彼女の手を取って光に包まれ始めてた。

彼女は怯えながらも俺を睨んでた。

間宮くんは、愛してるとか大好きとか、これからもずっと一緒とか、そういう愛の言葉をいっぱい言っていて、俺はただ真っ赤な手を組んでひざまづいて、二人の前に呆然としてるだけだった。

祈ってるみたいだな、なんて冷静な部分が考えてた。

店の外に人がいて、目が合った気がしたから逃げた。







ごめんなさい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る