15.「全ては大文字伝子の為に」

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============================================

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==


 ※このエピソードは、「大文字伝子の冒険375」のエピソードに関連しています。


 山並郁夫とは、俺のこと。

 俺は、『殺しの請負人』、いや『殺し屋』になる筈だった。

 長い間、あちこちに『傭兵』で参加していた俺は、あるコミックを読んで『殺し屋』になることにした。

 ところが、人生、思ったようにはいかない。


 俺には俺のやり方がある。「全ては大文字伝子の為に」。

 かっこつけてもナア。世間的には、プー太郎のオッサンだしなあ。

 コンビニに向かう途中、珍しく鯉のぼりを見た。

 4匹?吊るし過ぎだろう?竿も立派みたいだが。親のエゴか?

 ああいうのって、子供が成長してくると、子供から「もう止めて欲しい」と言われて、お披露目終いをするらしい。

 イジメの原因にもなるしなあ。「鯉のぼり男の癖に」って。

 柏餅を買ったら、「ついでにこれも。」と義姉が言った。

「背比べする時、ちまき食べるんでしょ?」

「決まってねえし。」「せいくらべしよう。」

 はいはい。つまんないことに拘るなあ。義姉貴は。

 帰り道、「柱に傷つけたら、美観損ねるぜ。」と言ったら、「じゃ、テープ貼る。養生テープ。」と返された。

 成程。工事する人や引っ越し屋がよく使うが、最近は、セロハンテープみたいな養生テープが売っている。女子高生が製造工場に直談判して作らせたことで有名だ。カラフルで可愛い。確かに傷はつかない。剥がしやすいし。

 義姉は、意外と頭がいい。

 だから、風俗も拘らず簡単に辞めたし、亡き夫のプロポーズも断らなかった。

「財産目当て」と散々言われたが、実は頭がいいからだ。

 相思相愛は、見せかけでは無かった。

 だからこそ、亡くなった時、大袈裟に泣いたりはしなかった。

 人は「色眼鏡」をかけると、あまり外そうとしない。

 1分泣こうと1時間泣こうと「演技が上手い」と揶揄される。

 その頃、俺は外国にいて、交流が途絶えていたが、再会したときの目尻の皺で真相は理解出来た。

 帰ると、義姉はいそいそと準備を始め、俺を柱の前に立たせた。

 そして、浅黄色の養生テープを背の高さと同じ位置に貼った。

「今度、郁チャンが貼って。」

 俺は、義姉の横に立って、指定された青紫色の養生テープを貼った。

 見比べて、「12センチくらいかな?」と言ってメジャーを持って来た。

 ぴったり12センチだった。

 驚いている俺に、義姉は「美容師の勉強をしているの。美容師ってね、『目分量』が確かでないといけないのよ。今からじゃ無理かな?」

「そんなことは無いよ。義姉貴は頭良いし、上達も早い。サロン開いたら、商売繁盛だよ。」

「ありがとう、郁チャン。20センチになったり10センチに戻ったり、男は大変ね。帰る前に、お好み焼き食べようね。」

「え???ああ、その材料だったんだ。俺、料理出来ないからイメージ湧かなかった。」

 にっと笑った義姉は、「スキ!!」と言ってキッチンに向かった。

 ―完―







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る