11.カルシウム

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==



 山並郁夫とは、俺のこと。

 俺は、『殺しの請負人』、いや『殺し屋』になる筈だった。

 長い間、あちこちに『傭兵』で参加していた俺は、あるコミックを読んで『殺し屋』になることにした。

 ところが、人生、思ったようにはいかない。


 俺は、隊長大文字伝子と運命的に出逢ったことで、今後の方針を固めた。

 それは、『闇サイトハンター』として、EITOに、いや、大文字伝子に協力していくことだ。


 スーパーに「釜揚げしらす」を買いに行ったら、なかった。仕方無く、「ちりめんじゃこ」を買う。どちらも「カルシウム不足」を補うのにいいが、「ちりめんじゃこ」の方は堅い。

 帰宅後、サラダに乗せて、醤油をかけて食べた。やっぱり、「釜揚げしらす」の方がいいな。そうだ。違うスーパーで買おう。

 違うスーパーに行って、後悔した。

 客同士の喧嘩だった。

 店長と売り場主任が、必死に2人を引き離している。

 警備員がやってきた。

 あ。高峰だ。ここが担当なのか。幸い、高峰は俺のことを知らない。

 でも、俺は知ってる。昔、大文字伝子を誤認逮捕した男だ。

 事件はうやむやになったが、奴は依願退職した。

 奴の義理の妹がエマージェンシーガールということもあって、EITOの協力者になった。

 刑事の時はギスギスしていたが、今は温厚な警備員のオッサンだ。

 俺は近くにいたオバサンに尋ねた。

「どうしたんです?」

「あっちの人が『福引き』の景品、当たったのに渡して貰えなかったって、怒鳴り込んで来たんですよ。入院してたけど、今日が引き渡し日の最終日だから受け取りに来たの。で、主任さんは、間違って、こっちの人に渡しちゃった。あっちの人は、今日が最終日だって、電話で確認したのに。電話を受け取ったのは主任さんなのよ。声でわかりそうなものだけどねえ。わざわざ外出届け出してまで病院から来たのに、怒り心頭になるわよ。」

 高峰の声が聞こえた。

「じゃ、山田主任さんは、名前を聞いただけで渡したんですか。店のカード、それと、身分証、運転免許証やお名前カードでの確認は?しなかったんですか。店長、他の景品は?」

「それが最後です。」「小川さんのお店のカード、今、持ってます?」

「それが、入院した時、無くしたんです。このスーパーで倒れて救急車で運ばれて。」

「深山さんの、お店のカード、拝見出来ますか?」

 俺が背伸びして見ると、深山と呼ばれた男は、渋々店のカードを見せたようだ。

「詰まり、こういうことだ。小川さんは、店で倒れて入院した。救急車が去った後、『小川さんの』お店のカードを拾った。当選者は、後日名前を貼り出された。で、搾取を思いついた。運の悪いことに、『ご当人登場』。店長、警察を呼びます。主任、今度からは当選者は貼り出さないで、葉書でご本人に通知、の形がいいですね。・・・あ、高峰です。警察に連絡長います。詐欺容疑です。」

 深山は、その場に座り込んだ。

 俺は、思わず拍手をした。名推理だ。流石、元刑事だ。

 隣のオバサンも拍手した。

 その場にいた皆が頷きながら、拍手をした。

 最初はカルシウムが足りない大人達の喧嘩かと思ったら、詐欺事件だった。

 パトカーのサイレンを聞きながら、俺は鮮魚売り場に行った。

 あった。釜揚げしらすだ。今夜は釜揚げしらす飯だ。

 ―完―



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