後ろ……

高校2年の春、私の後ろの席に座った君。

「木崎さんよろしくね。」

と後ろから挨拶をする君。

教室で先生とクラスメイトに後ろからガヤを

飛ばす君。

お昼ごはん……後ろからお弁当を覗き込む君。

授業中……後ろで寝てる君。

テストの答案を後ろから覗く君。

放課後……後ろから私の肩をポンと叩き

「さよなら」って言うと

走り去って行く君。

下校時間が遅くなると後ろを歩いてくれる君。


先輩に告白して失恋した私。

泣いている私の頭に後ろから

タオルをかぶせてくれた君。


高校2年の秋……

後ろの席の君が隣町の学校に転校したと

聞かされた。

後ろの席には誰もいない。

後ろを向いても誰もいない。

私の後ろには誰もいなくなった。

高校2年の冬休み……雪がちらつく頃だった。

寒さに耐え街路樹を歩く私。

「木崎さん」後ろから声が聞こえた。


私が振り向くと、息を切らした君が笑顔で

立っていた。

君は私の両肩をつかみ、くるっと反転させると

後ろから私を抱きしめた。

「俺……木崎さんが好きだ」

後ろから聞こえる懐かしい声。


私も、後ろから聞こえる彼の声が大好きだ。


私は後ろを向くと、彼ににっこりと微笑んだ。









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