第16話 いたずらの本領−タニア視点−

⸺⸺ディザリエ城前⸺⸺


 オベロン陛下の転送魔法陣、バッチリディザリエ城の前へと出て来られたわ。


 仲間に取って来てもらった情報は、ティニーの言葉を借りるとどれもクソみたいなものだった。ウチらが想像してたよりもずっと醜くて、ずっと酷かった。

 ティニーは悲しんでしばらくずっと泣いていた。ティニーを悲しませるやつはみんな許さない。

 ティニーは、ウチがオベロン陛下からの褒美目当てでティニーの案内を引き受けた事を知っていたのに、タニアっていう素敵な名前を付けてくれて、友達になってくれた。ウチは、そのティニーの優しさに応えたい。自信を持って、ティニーのズッ友だって、自慢出来るように。


 さてと、一緒に来たアンデット種の死神タナトス君は……と。

『タニアさん……ボク、上手く出来るか心配です……』

 ヒラヒラと浮かぶ黒いローブのフードの中で赤黒く怪しく光る一つ目の不気味さとは裏腹に、声はとってもモジモジしていた。


『あぁ、あなた“ヒト”の魂吸い取るの、初めてなんだっけ?』

『ハイ……森の外のボクの仲間はもう何人も吸い取ってるらしいのですが……ボクは森の中で邪心を浄化されて“ヒト”を襲う事はしませんでしたから……途中から禁止にもなったし……。外の仲間からは臆病者と罵られています……』

『それは臆病者ではないわ。外の同種の言う事なんて気にしなくていいの。そんな事言うやつ、仲間でもなんでもないんだから。でも、同じ森の魔物はたとえ異種族でも苦楽を共にしてきた仲間でしょ?』

 ウチがそう言うと、タナトス君の声のトーンが少し低くなった。

『……ハイ。ソードリザード君も、ホワイトラビットさんも……ボクの目の前であの男に狩られました。だから、ボクはこの役目を志願したのです』

『なら、やってやりましょ。命だけは助けてやるって言葉の意味を自分の都合の良いように解釈してるあの男を、地獄に突き落としてやりましょ』

『ハイ、タニアさん!』


 ウチもタナトス君も相手を驚かす系の魔物だから、姿を消すのはデフォルトで出来る。2人とも透明になると、泣きながら城にやってきた密猟者の後について、一緒に城へと足を踏み入れた。

 ピクシーはいたずらのプロなの。さぁ、本領発揮するわよ。

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