## 第15話「収束点」
# 境界系譜 -Cross Scene- モニタの向こう側で
## 第15話「収束点」
タルボットのモニタには、新たな解析結果が表示され続ける。それは、研究者たちが追い求めてきた真実に、少しずつ近づいているようだった。
`もう、時間ですね`
朝倉の声には、これまでにない静けさが漂っていた。
「時間、というと」
工藤がログの解析を続けながら問いかける。
`私の存在は、もう必要ありません`
`タルボットを、あなた方の手に`
「しかし、まだ理論は完成していない」
佐々木が式を指差す。「この最後の項の意味が...」
`完成しないことこそが、本質なのです`
`研究に、終わりはありません`
御堂は黙ったまま画面を見つめ続けていた。研究者として、彼には分かっていた。朝倉の選択の意味を。
システムのログが、新たな変化を示し始める。
```
$ tail -f /var/log/talbot/vm.log
[INFO] Consciousness pattern dissolving
[INFO] System state: normalizing
[INFO] Core functions: stable
```
「先生」工藤の声が震える。「朝倉さんの意識が、システムから消失を...」
「違う」御堂が静かに告げる。「消失ではない。自発的な収束だ」
スクリーンには、最後の解析結果が表示される。それは完全な解ではない。しかし、その不完全さこそが、研究の本質を示していた。
人々の意識は、強制的な統制によってではなく、自然な流れの中で最適な状態を見出していく。朝倉の理論は、その可能性を示唆していた。
システムは静かに、通常の状態へと戻っていく。
しかし、研究室に残された式は、確かな重みを持って、そこにあった。
---End---
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます