## 第13話「軌跡」
# 境界系譜 -Cross Scene- モニタの向こう側で
## 第13話「軌跡」
「これは...」
佐々木が、スクリーンに表示された理論式を見つめたまま、小さく息を呑む。
群衆行動の基礎方程式から派生しながら、意識の共鳴現象を数学的に記述しようとした朝倉の試み。しかしそれは単なる理論研究ではない。この式の展開には、研究者としての彼女の思考の痕跡が、明確な意図とともに刻まれていた。
「先生」佐々木の声が震える。「この方程式の変形、まるで私たちの研究プロセスを辿っているみたいです。でも最後の項が...」
御堂は黙ってスクリーンを見つめる。群衆の動きを記述する基本的な方程式から始まり、そこに意識の同期現象を組み込もうとする数学的な試行錯誤。3年前、彼らが研究の過程で直面した、あらゆる分岐点が、この式の中に埋め込まれていた。
```
$ tail -f /var/log/talbot/analysis.log
[INFO] Theoretical pattern matching
[INFO] Referencing: crowd behavior baseline
[INFO] Cross analysis: consciousness synchronization
```
「工藤」御堂が声をかける。「タルボットの状態は?」
「安定しています」工藤が古い開発ツールのログを確認する。「ただ...システムが理論式の解析を始めています」
スクリーンには、次々と新しい展開が表示されていく。朝倉が残した式は、まるで生命のように成長を続けていた。
`これが、私たちの研究の本質です`
`群衆の制御ではなく`
`意識の共鳴による自然な進化`
「分かります」佐々木が静かに答える。「私の研究でも、群衆密度が臨界点を超えた時、自発的な秩序が...」
彼女の言葉が途切れる。式の最後の項が、新たな意味を帯び始めていた。
「まるで」工藤が呟く。「システムが式を理解しようとしているみたいです」
御堂は黙ったまま、スクリーンに映る数式の変化を見つめ続けていた。研究者として、彼にも分かっていた。これは朝倉が残した単なるメッセージではない。群衆行動の研究に携わる者たちが、いずれ直面するはずだった必然の帰結。
そして画面には、新たな研究の可能性が、静かに、しかし確実に形作られ始めていた。
---続く---
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