第13話 真実の庭
「ここに行くべきです。」
鳴海夕貴は、箱から見つかった手書きの地図を手にして力強く言った。その地図には、簡単な線で描かれた田園風景と、目印として記された白薔薇のマークが目を引く。
「確かにこの地図が示す場所は重要だろう。だが、奴らがこの情報をわざと残した可能性もある。」
橘は地図をじっと見つめながら静かに答えた。その視線は鋭く、疑念と慎重さを映し出している。
「でも、これが唯一の手がかりです。他に何かを掴むためには、行くしかないと思います。」
鳴海の言葉には揺るぎない決意が込められていた。
橘はしばらく黙って考えた後、深く息を吐いた。
「分かった。だが、慎重に動くぞ。この場所が罠である可能性を常に念頭に置いて行動する。」
「この男はどうしますか?」
鳴海は入口付近で待たせていた若い男を指差した。怯えた表情の彼は、こちらの会話を気にしながらも動かずに立っている。
「連れて行くべきだろう。」
橘は短く答えた。その答えに、男はさらに怯えた様子で口を開く。
「俺は何も知らない! 本当にただ呼び出されただけなんだ!」
「ならば、その『呼び出された』理由を教えてもらおう。お前が知らないことでも、現場に行けば何かが分かる。」
橘の声には冷たさが滲んでいたが、その裏には理性的な判断が感じられた。
「……分かりました。」
男は観念したように頷いた。
三人は地図を頼りに車で「真実の庭」へ向かうことになった。廃工場を後にし、静まり返った田舎道を進む中、車内には緊張した空気が漂っていた。
「……地図が指す場所、ここからどれくらいですか?」
鳴海が地図を見ながら橘に尋ねると、彼はスマートフォンで現在地を確認して答えた。
「あと30分ほどだな。田園地帯を抜けた先に古い教会跡がある。それが地図の目的地だろう。」
「教会跡……白薔薇の紋章とどう関係しているんでしょう?」
「分からない。だが、6年前の事件が関与しているとすれば、単なる偶然ではないはずだ。」
助手席に座る若い男は、ずっと黙ったままだった。その目は窓の外に向けられているが、何かに怯えているようにも見える。
「あなた、本当に何も知らないんですか?」
鳴海が彼に問いかけると、彼は小さく肩を震わせた後、か細い声で答えた。
「……ただ……白薔薇っていうのが、守らなきゃいけない何かだって言われたんです。それ以上は……。」
到着したのは、古びた教会跡だった。石造りの建物は崩れかけており、壁には苔が生い茂っている。だが、その中央には見覚えのある白薔薇の紋章が刻まれた石碑が立っていた。
「これが……『真実の庭』。」
鳴海は慎重に足を踏み入れ、石碑を見上げた。その白薔薇の紋章は、6年前の未解決事件を思い起こさせるものだった。
「橘さん、この紋章……やはり関係している。」
「間違いないな。」
橘は石碑の周囲を調べながら答えた。その目には、何かを探り当てようとする強い意志が宿っている。
石碑の裏側を調べていた鳴海は、微かな彫刻のようなものを見つけた。そこには、暗号のような言葉が刻まれていた。
「薔薇が枯れるとき、真実は開かれる。」
「薔薇が枯れるとき……?」
鳴海が呟くと、橘がそれに答えた。
「何かを象徴しているのだろう。この石碑自体が、さらなる手がかりへの入口かもしれない。」
「でも、どうやってそれを解き明かすんですか?」
「この場所に隠された他のものを探すしかない。」
三人は教会跡の周囲を探索し始めた。倒れた石材、崩れた壁、草むら――その全てが新たな手がかりを隠している可能性があった。
探索を進めている最中、遠くから車のエンジン音が聞こえた。鳴海と橘がその音に気づいて身構えたとき、数台の車が教会跡に近づいてくるのが見えた。
「誰か来る!」
鳴海が声を上げると、橘はすぐに指示を出した。
「身を隠せ! 奴らが敵かどうか分からない。」
三人は近くの瓦礫の陰に隠れ、車から降りてくる人物を注視した。そこには、スーツ姿の男たちが次々と現れ、教会跡を取り囲むように動き始めた。
「どうやら歓迎されていないようだな。」
橘が低い声で呟いた。
「彼ら……この場所を守っているんですか? それとも……。」
鳴海が疑問を口にすると、橘は鋭く答えた。
「守るために来たのではなく、我々を消すために来た可能性が高い。」
選択肢: 読者への問いかけ
1.スーツ姿の男たちに接触する
→ リスクを冒して、彼らが何者なのかを確認し、対話を試みる。
2.隠れながら男たちの動きを観察する
→ 彼らの目的を見極めるため、慎重に動きを監視し続ける。
次回予告
「次回: 白薔薇を巡る攻防」
教会跡に隠された手がかりと、新たに現れた謎の男たち――鳴海と橘は、真実を掴むために危険な選択を迫られる。白薔薇の秘密に近づくほど、事件はさらに複雑な様相を見せ始める。次なる行動が、二人の運命を大きく変えるだろう。
読者へのメッセージ
「読者の君へ――」
「教会跡に残された暗号、そして新たに現れた謎の男たち。この場所には、事件の核心に迫る真実が隠されている。だが、その真実に辿り着くためには、リスクを伴う選択が必要だ。君の選択が、この物語の未来を形作る。どちらの道を選ぶのか、慎重に決めてほしい。」
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