悪だくみ
時は少し前。リュース王国における戴冠式の前祝いとして開かれるパーティーの前日。
「レーヴ。調子はどう?」
カンナを追い出し、レーヴが一人で待っていた部屋。
そこの部屋の扉が開かれ、ノアが顔を見せる。
「ふふっ。来てくれましたか。待っていましたよ?」
その姿を見た瞬間、これまで無表情でベッドへと腰掛けていたレーヴは静かに破顔し、彼へと声をかける。
「……もうちょいわかりやすく呼んで欲しかったけどね?」
「そうですか?護衛であるカンナを外に出しておけば……私が二人で会いたい、って思っていることが伝わってくれると思ったんですが」
「いや、そもそも僕が外に出る前提じゃん?」
「ふふっ……そこらへんは私とノアちゃんの仲ですから、問題ないと思ったんです。それで、実際来てくれましたし」
「結果論だなぁ」
「それでも、良いじゃないですか。こっちの方がロマンチックでしょう?さて、諜報魔法の方はどうなりましたか?」
「んー。もうちょいかな。第三の目を作り出すことは出来た。透明化は出来ていないけど……この第三の目くらいの大きさなら透明化までせずとも、意識阻害などでいくらでもやり様はあるし、そっち方面から攻めていけば何とか。透明化に固執する理由もないしね」
「明日に間に合いますか?」
「うん。間に合うと思うよ……何となくの感覚はここに来るまでの間に掴んだしね。五分もあれば完成するよ」
「良かったです。とりあえず、安心出来ました……安心して思ったんですけど、何時まで立っているんですか?」
これまで朗らかに会話していた中で、いきなりレーヴはジト目をノアの方に向けながら自分の隣を叩く。
ベッドに座っているレーヴはノアに自分の隣へと座るよう態度で示していた。
「じゃあ、失礼して」
それに従い、ノアはレーヴの隣へと腰掛ける。
「ふふん」
それを受けてレーヴは満足げに頷き。
「それで?肝心のこと……パーティー会場への侵入者の手引きは出来そうですか?」
そして、そのままレーヴは信じがたいような言葉を口にする。
「出来そうだよ。というか、そもそもとして、別に僕が動く必要も特になかったくらいだしね?自分がやったことは相手が侵入可能かどうかの下見にちょっと干渉し、簡単そうに見せたくらいだよ?大したことは出来ていないよ」
「これに関しては念の為、です……というよりも、本当に侵入者が来てくれることが確認できたのが大きいです。そもそも、本当に侵入者がいるのかどうかもちょっと疑いを持っていましたし」
「えっ?なんか凄い自信満々で侵入者は来る!と断言していなかった?」
「別に確信はなかったですよ?ただ、カランザ帝国が宣戦布告するならばここだろうということ。そして、やるなら戴冠式当日よりもその前日だろうということ……あそこは血気盛んな国ですから。絶対に宣戦布告時には侵入者を送り込んでその場を混乱の渦に叩き込んだところで宣戦布告を行います。宣戦布告前の奇襲攻撃だって常です。これまでの戦い方もずっとそうでしたし、リュース王国の時だけ変えてくるようなこともしないでしょう。血気盛んな蛮族国家ですし」
「そ、そうなんだ」
ノアはレーヴに頼まれ、リュース王国の王城内に小さな蛇となって侵入。
そして、下見しに来るであろうカランザ帝国の手の者を待ち続け、やってきたらその下見をサポートするという大仕事をやり遂げてみせた。当然、侵入であるから周りにバレないよう行動する侵入者たちを見つけることは容易ではない。ノアが鑑定を持っているからこそできたことと言える。まさにノアがレーヴに頼まれて行ったのは彼だからこそできた、大立ち回りだ。
そんな大仕事が発生するのかどうか……発生するという判断がレーヴのただの憶測でしかなかったことに流石のノアも面喰う。
「カンナは元々カランザ帝国の人間です。彼女からも聞いていたことですし、ここに関してはちゃんと自信がありましたよ」
「えっ?そうなの?」
「えぇ。それで、そのカンナにはカランザ帝国の方にミノワ王国からの書面を送りました。有事の際は協力する、と」
「えっ?うちの国はカランザ帝国側につくの?」
「つきませんよ?リュース王国という近場の大国が敵になるなんて考えられません。私の考えとしては簡単です。まずはノアちゃんに明日、リュース王国の王城へと侵入してくるであろう者たちを確認してもらいます」
「うん」
「それでその侵入した者たちをノアちゃんの手で粉砕してください。第三の目をフル活用すればどこの道を通ってやってくるか知っているノアちゃんであれば、相手の攻撃のタイミングを誰よりも早くわかるでしょう?それで、ノアちゃんが侵入者たちを撃滅してください。これにより、まず、カランザ帝国側はこちら側の方から協力するという申し出を行っていますし、ノアちゃんが撃退する分には満足して宣戦布告を行ってくれるでしょう。それで、リュース王国の方は自分たちの不始末を行ってくれた我が国にお礼をしないわけにはいかないでしょう。私はお礼としてリュース王国から支援を引き出すと共に、更なる飛躍の為にリュース王国側についてカランザ帝国へと攻撃します。奇襲に奇襲で返しましょう」
「……なるほど」
ノアはレーヴの言葉に頷く。
思ったよりも腹黒い作戦だった───ノアは内心で冷や汗を流す。
「この世界規模の戦争において存在感を見せ、ミノワ王国を復活させます」
そんなノアの隣で、レーヴは力強く断言する。
「そう……なら、僕も頑張らないとね」
そんなレーヴの言葉を、ノアは肯定する。
ノアは何処まで行っても、レーヴの味方だった。
「じゃあ、そろそろ夜遅いし、僕も部屋に帰るよ。レーヴの計画も聞けたしね。おや───」
話を聞き終えたノアは満足して立ち上がり、部屋に帰ろうと一歩目を踏み出す。
「駄目です」
だが、その手をレーヴは引っ張ってノアのことをベッドへと転がり、自分はその隣へと寝っ転がる。
「今日は一緒に寝ましょう?」
「はっ!?」
ノアの頭を掴み、自身の豊かな胸に押し付けるレーヴは彼の耳元で言葉を告げる。
「えっ、ちょっ」
そんなレーヴを前にノアは頬を真っ赤に染め、瞳を回す。
「……ノアちゃんは永久に私の味方でいてくださいね?」
そんなノアのことをレーヴは力強く抱きしめ、縋るように、言葉を漏らす。
「……っ」
その言葉を受けて。
「うん。もちろん。僕はずっと君と共にいるよ」
ノアは優し気な言葉を返すとと共に、彼女を抱き返す。
これから起こる大騒動の前日譚。
小国の男女二人は今夜、二人仲良く……子供のように眠りにつくのだった。
……。
…………。
カンナは一人、鍵を閉められた部屋から締め出され続けた。
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