諜報魔法

 一気に爆増することになった僕の服。


「んっ。いい感じ」


 その服を持ち、僕は自分に与えられたホテルの部屋で一人ファッションショーを行っていた。

 当たり前だが、僕はレーヴたんと同じ部屋ではない。彼女の護衛はカンナのお仕事だ。

 ということで少し寂しくはあるが、僕は一人の時間を満喫できるのだ。


「うん。ファッションショーはこれくらいでいいや」


 三分くらいファッションショーをやっていた僕はそれを辞め、席につく。


「ふぅー」


 そして、この王都にあったアホみたいにデカい図書館から借りてきた魔導書を広げる。

 いやぁー、それにしても流石は大国。

 あれだけの蔵書を一般に公開しているとは。この圧倒的な余裕……流石大国って感じだね。

 しばらくの間、ここに暮らしていたいと思うくらいには魅力的なところだった。


「……諜報魔法」


 諜報に活用できるような魔法は流石に軍事機密なのか、見つかりはしなかった。

 ただ、活用できそうな魔法であればいくらでも見つけることが出来た。

 それらを活用し、僕は一人で黙々と魔法の改良に取り組んでいく。


「成功」


 諜報魔法の一つ目。

 自分から離れて行動できる第三の目の作成には成功。


「……むっ。これはうまく行かなかったな」


 透明化の魔法。

 それは失敗した……うぅん、行きに襲われたあの魔物をちゃんと鑑定しておくんだったな。透明化していたあいつからなら、もう少し何か情報を抜き出せたかも。


「うーん」


 透明化の魔法で行き詰まった僕は自分の視線を己の周りで浮いている翼が生えた眼球を眺める。

 こいつがあれば、僕が動かなくとも周りの様子を知れることが出来る。

 それに、この眼球から魔法まで飛ばせるようになれば最高。勝手に魔物を倒してもらい、自分のレベルを上げることが出来る……パスは繋がっている。

 手のひら魔法を発動させるのも、魂として繋がっている第三の瞳から魔法を発動させるのも、そこに差異はない……はず。

 この魔法は色々なところに応用できそうな、一番最初に自分で作った諜報魔法にしてはかなり良さげな代物だろう。


「僕個人の透明化は無理でも、この瞳には透明化をかけられるようにならないとな。何も出来なくなる」


 ただ、目立つ。

 透明化は必須だ。傍から見たら新種の魔物だ。


「……あぁー」


 難易度が高そうな人への透明化は諦めた。

 その上で、魔法への透明化……いや、まずじゃ小さな物からの透明化を頑張ってみようかな。

 そもそもとして、透明化という魔法の試み自体が僕のオリジナル……自分の知る限りはね?いきなりゴールを狙いに行くのではなく、地道にやっていくべきだね。


「ご飯でも食べに行こうかな」


 とはいえ、それはちょっと後。

 一回でも行き詰まった後というのは何をしてもうまく行かない。


「……」


 僕は素直にホテルの部屋から出て、一階にある軽食屋の方に向かって行く。

 

「あっ、カンナ」


 その途中で、僕はバッタりとカンナへと出会う。

 ただ、その隣にレーヴたんの姿はなかった。


「……一人?」


「あぁ、そうだ。レーヴ様から一人にしてほしいと言われてな。護衛に関しては任せてくれ。あの方に危険が迫っても、この位置なら一秒足らずであの方の元に迎える。必ず守る。それは誓おう」


「……そう」


 僕はカンナの言葉に頷く。

 確かに、カンナなら問題もないだろう……ただ。


「それで?ノアの方は何を?部屋で魔法の研究をしているんだじゃなかったのか?」


「いや。ただの散歩。ずっと部屋にいるのも、と思ってね」


「確かにそうだな。体を動かさなければ出てくる者も出てこない……どうだ?一戦。私と模擬戦でもしていくか?いつもやっている軽めのやつ」


「いや、良いかな」


「……そうか」


「研究に戻るよ。僕は」


 軽食を取るつもりだった僕はその方針を変える。


「あっ、今日の夜に王城のほうへと登城するからな。ちゃんとその準備はしておけよ?」


「わかっているよ」


 そんな僕が向かう先はただ一つ、レーヴたんのいる部屋だった。

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