第二章 以弱制強
国王代理
「はわわ……人に、なれたんですね」
「……うん」
「そう、なんですか。ずいぶんと、その……賢いんですね?前から、それくらい色々と考えられたんですか?」
「そう、だね。僕は君に拾われた時からちゃんと知性はあった。人のようには喋れなかったけど」
「……ちょ、ちょっと恥ずかしいですね。私、散々と弱音を吐いちゃいましたし」
「……嫌になっちゃう?」
「いや、そんなことはないですよ。私にとって、ノアちゃんはノアちゃんですから」
カンナはミノワ王国において、その軍事におけるすべてを司っている。その為に彼女はありえないくらいに忙しい。
そんなカンナはレーヴたんが起きた後すぐに仕事の方に戻っていった。
そんな中で、僕はレーヴたんと二人でお話をしていた。
「ノア、ちゃんは……ノアちゃんは私の味方ですか?」
「うん。もちろん。僕はレーヴの味方だよ。僕は君に助けられた。だからこそ、君だけの僕は味方だよ」
「……それなら、安心です。私、味方いないですから」
「そんなことはないと思うよ。国の為に戦う君の姿を誰もが見ている、はずだよ」
「……確かに、そうだと思います。ですが、それはあくまで私が国を思う淑女であるからこそ、なのですよ。私の為に何もかもをやってくれる人はいないんです」
「……あれ?もしかして、レーヴ。結構腹黒い?」
「国を守るためにはすべてをやるしかない……そうは思いませんか?」
「そうだね。それで?何をしたいの?」
「そんな難しいことじゃないです。まずはこの国の現状を確かめておきましょう」
「そうだね」
執務室の中に置かれている小さな、本当に簡素化されている地図を僕とレーヴたんの二人で眺める。
「まず、私たちが住んでいるミノワ王国は終わっています。良いところが何もありません。国家として、純粋に生き残れていることが奇跡に近いような国家です」
「……そうだね」
レーヴたん、地味に結構毒舌なんだよなぁ……雰囲気はぽわぽわしているおしとやかな少女ではあるなんだけど、一国を背負うに足りるくらいには酸いも甘いも噛み分けられる子なんだよね。
「その上で、国際情勢が動きそうです。これは、我が国にとって致命的です。まず、国内の問題ですら私たちは対処できそうにないのですから。国内の魔物の動きが活発になってきています。それらに対し、こちらはほぼ何も出来ていいません」
「その問題なら僕が解決するよ」
「……ノアちゃん?」
「僕はそこそこ強い。魔物になら負けるつもりはないよ」
今の僕はCランクの中でも上位の実力を持っているという自覚がある。
Bランクの魔物なんてめったにいないし、それが現れたら普通にミノワ王国でなくとも滅ぶ……まぁ、僕はそんな存在になれたんですけどね。
「……魔物、なんでしたね。そういえば」
「そうだよ。僕は一人の魔物だよ。この国に足りない戦力を埋めるくらいには力があるとそんな自負はあるよ……カンナくらい強いね」
カンナはミノワ王国なんていう小国ではなく、れっきとした大国でも格別の実力者として君臨出来るくらいの強さを持っている。
そんなカンナと同じくらい……普通にそれよりも強いと思うんだよね、僕は。
「えっ?そんな強いんです?」
「人に化けられるくらいの魔物だからね。君の竜は、君の願いをすべて叶えてみせるよ」
そんな自信と共に告げた僕の言葉。
「……ふふっ」
「……っ」
それを受け、レーヴたんは楽しそうに笑う。
「なら、色々と頼んじゃっていいんですか?」
そして、そのままレーヴたんは迷いなく僕のことを頼ってくる。
これまで、ペットとして可愛がられていただけの僕を。
「ずいぶんと、すんなり信じてくれるんだね?別に僕がほら吹きの可能性もあるのに」
「それなら、終わりですから。カンナだけじゃこの国の絶望は変えられません。ノアちゃんが強い。そう仮定しないとこの国は終わりです。一応、信じられる根拠もありますしね。動物と話すスキルを持つカンナがノアちゃんを信じている以上、何か裏であったのでしょう。まったく。二人とも私を省いて何かするなんて……主君を敬う気持ちが足りていませんよ?」
「ハハ。それについてはごめんね?でも、レーヴはずいぶんとはっきりと宣言するんだね。この国が、死ぬって」
「前からわかっていたことです。どうしようもない状態でしたので……ですから、私は、ノアちゃんと一緒に死のうと思っていたんです」
「……えっ?」
「私が救った命なら、それを潰しても許されるでしょう?この国は何時か潰れます。その時、何の気兼ねなく一緒に炎で焼かれる存在が欲しかったんです。この王城を私は焼き払い、私とノアちゃんだけで死ぬつもりでした。一人で、死ぬのは寂しかったので」
「いや……それは」
「ですが、それは辞めにしましょう。ノアちゃん。私は貴方を信じます」
「ははっ……そう。ありがとう」
どうしよう。思っていたよりも僕の飼い主ってすごいのかも。
僕が役に立つってことを見せる必要性さえなく……この人は、僕を使い潰すつもりだ───道具として。
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