第21話 交流

「早く起きてくださいよロスターさん!!まだ朝ですよ?!」

「朝は寝る時間だ…つまり朝は夜だ」

「意味のわからない理論を成立しないで起きてくださいー!!」


 ユヒナがロスターを必死に起こそうとしている傍らで。暇を持て余した生徒たちは、それぞれで交流を始める。


「えへへー、学院内は一緒だからね!!」

「ええ、そうですね」

「アルス君!!アレインは渡しません!!」

「はぁ…」


 いきなり婚約者を渡さない宣言されても困る。テレシアの言葉に困惑していると、4人衆ミラス・ソノス・タレス・レネアがやってくる。


「あら、テレシアではないですの」

「あー!レネアちゃん!久しぶりだね!」

「ええ、昨日ぶりですわね」


 意外とレネアとテレシアは仲が良かったらしい。その様子を眺めていると、ソノス達が話しかけてくる。


「君はつまらなさそうですね」

「生憎と俺の目の前に不法侵入者がいるものでな」

「それは忘れてください…ともかく同じクラスなんです。仲良くしましょう」

「…まあ努力するさ」

「アルス!!俺と勝負しろ!!」

「話にならん」

「なっ!?」


 俺は雑に流す。こういうのはあまり得意ではない。


「ね、アヤカちゃん!!」


 そうこうしていると、テレシアが1人でぼーっとしているアヤカに話しかける。


「…私ですか?」

「そう!私、テレシアっていうんだ。よろしくね!」

「よろしく…お願いします…?」


 テレシアは早速アヤカと仲を深めれたように見える。だが、それだけではテレシアは終わらなかった。なんと「ねね、こっちこっち」と言ってアヤカを俺たちの方に連れてきたのだ。


「…???」


 連れてこられたアヤカは完全に困惑している。アレインとレネアは、テレシアが何がしたいのかわかっているようだった。


「全く…シア、あなた初対面の人になんてことをしなさるの?」

「シア、流石にいきなり踏み込みすぎじゃない?」

「そう?でも何とかなりそうだよ?」


 2人に宥められてなおテレシアは楽観的な姿勢を崩さない。


「右から、アルス君、ソノス君、タレス君、アレイン、レネアちゃん、ミラス殿下!みんな、こっちはアヤカちゃん!!」

「…?!あっ、アヤカ・イチノセ…です…」


 いきなり振られて強ばっているではないか。この場にいる誰もがそう思った。


「はい!これでみんな友達だね!!」

「シア…」


 レネアが呆れながら名前を呼び、アレインに至ってはげっそりとした笑顔をしていた。2人も被害者か、と俺は思った。


「あ、え、えと…よろしくお願いします…」


 アヤカも萎縮しきっている。それは当然と言えば当然だろう。出身が異大陸とはいえ、ここにいる皆は服装も見た目もそこいらに比べると品格が高い。この国で偉い人と友達になってしまったのだ。


「あー、えーっと…イチノセさん、別に無理はしなくてもいいからね?でも、テレシア嬢の言うように、僕たちと友達になってくれると嬉しいな」


 ソノスがアヤカにそう語り掛ける。すると、アヤカは赤面しながら小さく頷いた。


「えー?!アヤカちゃんもしかしてソノス君…の…こと…アレイン?」


 テレシアが更に話に混ざろうとした瞬間、アレインから龍のようなオーラが出る。


「シア…めっ、ね?」

「あっ…アレッ」

「めっ、ね?」

「はいぃ!!ごめんなさい許して!!」


 テレシアは泣き顔になりながら、レネアの懐に飛び込む。当のレネアは、「今のはあなたが悪いですわよ」と言いながらテレシアの頭を撫でていた。それを眺めていると、「あの…」とアヤカから声をかけられる。


「どうした?」

「あ、アヤカ・イチノセです…よろしくお願いします」

「ああ。アルスだ。こちらこそ、よろしくな、イチノセ」

「俺はタレスだ!イチノセ、俺と勝負しゲボバァ?!」

「お前黙れ」


 俺でもさすがに怯えている初対面の人に喧嘩を吹っ掛けたりなどしない。それくらいの道理を弁えていないタレスを俺は殴り飛ばした。


「すまないな、イチノセ。あいつはどうやら強いやつを見ると喧嘩を吹っ掛けたくなるくせがあるそうなんだ。何かあればアレインや俺、ソノスにレネアに声をかけるといい」

「は、はい…」

「次は私の番ですわね!!私は「誰だ…俺に人を投げ飛ばしたのは」」


 ミラスが意気揚々と名乗ろうとした瞬間、ロスターの低い声が響く。


「ロ、ロスターさん!!」

「なんだ、タレスか。お前にまさか空中浮遊の趣味があるとは驚いたぞ」

「ち、ちが、俺はアルスに殴り飛ばされたんだよ!!」

「…お前が俺の睡眠の邪魔をしたのか」


 ロスターが目を細め、俺を見やる。


「邪魔をしたつもりはありませんよ」

「じゃあ偶然だな。だが俺の睡眠時間を削いだ罪は大きいぞ」

「…どうするつもりですか?」

「次の授業。お前は俺と一対一だ。実力を見てやろう」


 俺は腹の底から何かがこみ上げてくるものを感じた。


「…望むところだ。スタッガードに挑まんとするその姿勢に敬意を評しよう」

「チッ。ガキが舐めやがって…と言いたいところだがァ、ガキの言う通りなのが悔しいな…」

「ロスターさん…」

「悪ぃな、ユヒナ先生。ガキと戦ったら俺は寝るから、あとは頼む」

「…はい」


 ユヒナが神妙な面持ちで頷く。


「お前ら、訓練場に行くぞ。スタッガードの実力を目をかっぽじって見とけ」


 その号令とともに、生徒は席から立ち、訓練場へと向かう。


「アルス君、大丈夫?」


 テレシア含め、数名が心配する。だが。


「俺をなんだと思ってる」


 俺はスタッガードだ。向かってくる敵は、全て返り討ちにしてやる。

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