第14話 数ヶ月後
それから数ヶ月が経ち。皇族主催の披露宴が開かれる。俺とアレインも、その披露宴に参加することになっている。
「屋敷は私共にお任せ下さい」
「アルス様。アレイン様をよろしくお願いします」
「ああ。分かっている」
「テレザ!グレイル様!行ってきます!!」
アレインは馬車から身を乗り出して手を振り続ける。俺はというと、アレインのその行動に馬車から落ちないかハラハラしながらいざと言う時のためにアレインのそばにいたのだった。
「アル、帝都は行ったことがありますか?」
「ないに決まっているだろう。帝国の貴族の子達は皆、5歳までは領内で勉強しているからな」
「帝都のことは父上から聞いたのですけど、城壁の外にも街が拡がっているらしいのです!!」
俺もそのような話を聞いたことがある。帝都べレースには約1000万もの民が中央大陸を横断するように流れるライザレイン川に沿って街を形成しており、ライザレイン川には下流へと流れる船の便もある。
「まさに大陸の中枢を担う都市、か」
「そうみたいですね。帝都に行けば大陸中のどこにでも行けると聞いてます。それに別大陸の商人も集まるので様々な品を見ることができる市場があるらしいですよ!!」
「それは楽しみだ。2人で行ってみようか」
「はい!」
その後も雑談を交わしながら、俺たちは帝都へと向かう。その旅路は、アレインのおかげでなかなか悪くないものと思えた。
1週間が経ち、街が点在し出した頃。
「アル、この先の検問所からが帝都なのですって」
「凄いな。城壁で囲まれたりはしてないのか?」
「してないらしいです。なんでも広すぎて、まともに囲っているのは城下町だけなのだそうで」
「なるほどな」
妙に腑に落ちた。確かにまだ皇城すらも見えてないのにここからが帝都だと言うのだ。もはや帝都がひとつの領地の大きさとも考えてもいい。それを石壁で囲うなど、途方もない時間と金と人力が必要になるだろう。
やがて検問所に入り、馬車の検問に騎士がはいる。
「止まれ。身分を明らかにして、目的を言え」
「失礼した。我々はスタッガード伯爵家のものだ」
「スタッガード伯爵家のものか。帝都に来た目的は?」
「こちらを…」
グレイルから「帝都に着かれましたらこの手紙を騎士にお渡し下さい」と言われ、持たされた手紙を渡す。中身は当主様直々の命で見ていない。中身を騎士が改めると、驚愕した表情を浮かべた後、「少しお待ちを」と言い残し、どこかへと行ってしまった。しばらく待つと、先程の騎士が戻ってきて、
「内容確認しました。ここからは私が同行させていただきますね」
そう言い、通行の許可が降りた。検問所の騎士が同行すること。これの意味することはとても大きい。俺とアレインは騎士を交えて話をする。そのまま、時間が過ぎていった。
数時間後、辺りが暗くなってきた頃。
「アルス様、アレイン様。窓の外をご覧ください。皇城が見えますよ」
騎士に言われるがまま、俺とアレインは窓の外を見やると。まるで街の上にあるような皇城が、帝都の中央に煌びやかに聳え立っていた。
「…凄いですね」
「皇城は平民街、貴族街の内側にあるんですよ」
ドメリア大帝国初代皇帝陛下はこの平地に剣を刺した。すると龍の恵みがもたらされ、ここは龍の加護のある地として噂が広まる。それから人が集まり、現在の帝都が形成された…
帝国民なら誰もが聞くおとぎ話。それも、この風景を見ると本物であるかのように思える。
「間もなく帝都の中心部に入りますよ。窓越しからですが、夜の街並みをお楽しみください」
騎士はそう言い、最初の検問所に入る。そこからは一瞬で、すぐに貴族街の中心部までやってきた。
そうして、スタッガードの帝都にある別邸にようやく着く、そう思った頃に。
「襲撃者です!」
馬車の御者がそう言い、騎士は真っ先に降りる。
「外には出ないでくださいね」
そう言い、騎士は馬車を守るように立つ。
「一応聞きますが、誰からの命令でしょうか?」
その問いに、襲撃者は答えない。
「…皇帝陛下の命に従い、主らを斬捨てる」
帝都にて、検問所の騎士が馬車に同行すること。それが意味することとは、皇帝陛下直々に招待を送られたということ。その馬車を襲撃あるいは故意に邪魔をした場合、その場で斬捨てられる。
「ぐぁぁ!!」
「がぁ!!」
襲撃者の断末魔が夜の街に響く。それもしばらく経つと、声がしなくなる。
「お待たせしました。それでは行きましょう。目的地までもうすぐです」
騎士はそう言い、馬車に乗り込んできた。別邸までもうすぐ。披露宴は、もう間近に迫っていた。
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