第43話 モランドの街
草原の風と共にモランドの街に入るが、アッシュは入場門の警備兵に断りグレイに作らせた土魔法のドームの中でお留守番。
今回はライアン達草原の風が一緒なので、グレイをお供に冒険者ギルドに直行する。
朝も少し遅いのであぶれた冒険者達が少数食堂で屯しているだけだし、アッシュがいないので静かなものだ。
アッシュは以前はこんなに煩くなかったと愚痴るが、グレイだけだと静かなので今の様な騒ぎになるのを嫌がるのも当然か。
例に依って俺だけだと買い取りのおっちゃんに止められるが、ライアン達が説明してくれたのであっさりと解体場に入れた。
先ずライアンがマジックポーチから獲物を取りだして並べるが、オーク以外はホーンラビットやエルクにハウルドッグとフレイムドッグが数頭ずつに薬草だけだ。
ホーンラビットとヘッジホッグが多いのは、リュークが追いたてたりジャンプして喰いついているかららしい。
並べ終わると、期待のこもった目で俺が獲物を並べるのを待っている。
「兄さんはタイガーキャットの親子を使役しているんだって」
「はい。ちょっと多いんですけど大丈夫ですか」
「多いって?」
腰のマジックバッグを叩き「此って6-60のもので、ほぼいっぱい入っています」
「待て! 物は?」
「んー熊さんに牛さんや山羊にエルクの大きいのとか、オークやタイガー類も持ってます」
解体係の親父が顔をピシャリと掌で叩き「マジかようぅぅ」と呻いている。
「半分だ! いや・・・1/3にしてくれ」と弱気な事を言ってくる。
まあ嫌がらせに持って来ている訳ではないので、嫌われない程度に出す事にした。
俺も食料を仕入れるのに暫くこの街に滞在する事になるので、そう慌ててて処分する必要もない。
熊さん三種、虎さんが二種、ウルフ四種、エルク、シープ、ゴート類と並べているとストップがかかった。
「1/3より少ないですよ」
「ばっかやろう! 解体するのは俺達だぞ。どれ程の手間が掛かると思っているんだ。今日は此までだ!」
何時の間にか集まってきた解体係のおっちゃん達がうんうんと頷いているし、ライアン達は呆れ顔で俺を見ている。
ギルドカードを取り上げられて解体場から放り出されてしまった。
冒険者に対する扱いが悪いねぇ。
仕方がないので食堂で飲みながら査定が終わるのを待つ事にした。
「アッシュを見た時から相当な腕だと思っていたけど・・・」
「想像以上ってより、無茶苦茶だぞ」
「あんなに大物をいっぺんに出す奴を初めて見たなぁ」
「あれをアッシュが?」
「殆どがグレイだね」
「えっ・・・」
「グレイが転移魔法で獲物を襲えば、ほぼ確実に仕留めるからね。アッシュも強いけれど、餌以外は余り狩りをしようとしないからね。息子に任せておけばかあちゃんは楽が出来るって事らしいよ」
「あっきれた。ずぼらなお母さんねぇ」
ジョッキを〈ドン〉とテーブルに置き呆れ顔で俺を見てくるミルダ。
ミルダさんの話しを聞く限りテイマーと謂えども稼ぎは少ない様で、俺の様にのほほんとしていれば相棒が獲物を持って来てくれる事はなさそうだ。
まぁ魔法が使えるからって獲物が狩り放題って事にはならないから当然か。
解体主任が持って来てくれた査定用紙には12,710,000ダーラの数字が書かれている。
「ねっね、幾らになったの?」
「こらこらミルダ、人の稼ぎを聞くもんじゃないぞ」
「だってぇ、あんなに獲物を出せば気になるじゃない」
「知らない方が気が楽だよ。俺だって、あの二人がいなけりゃFランクのぺーぺーだからね」
解体主任が戻っていくと、また嫌な雰囲気のおっさんが向かって来る。
その手にはギルドカードが握られていて、俺と見比べると「ランディス、Dランクに格上げだ」と言って、ギルドカードを投げて寄越す。
これじゃ獲物を売る度にランクアップしそうな予感がする。
げんなりして黙って受け取っておくが、ライアン達の目が恐い。
商業ギルドに振り込んで貰うと手数料が金貨一枚、痛い出費だけど面倒事は避けるに越した事はない。
「あんた、未だ17だったわよね」
「その歳でDランクかよ」
「まぁ、あの二頭がいれば当然か」
「だから、あの二人がいなければ俺は精々Fランクが良いところですよ。それより商業ギルドの場所を教えて下さいよ」
「悪い、俺達には縁のない所だから知らねえんだわ」
「そんなところに何の用なの?」
「折れた短槍を買うのと、服が少し小さくなって来たので買い換えなきゃ」
「けっ、稼ぎの良い奴は言う事が違うね。目障りだ、さっさと消えろ」
「あんたねぇ、何時もいつも誰かに突っかかっているけど、その内大怪我をするわよ」
「ほっとけ!」
ちょっと空気が悪くなってきたので、邪魔な俺は消える事にした。
お別れを言って精算カウンターに行き、査定用紙と商業ギルドのカードを渡して全額商業ギルドへの振り込みを頼む。
今日は忙しくなりそうなので、冒険者ギルドから離れた場所で辻馬車を捕まえる。
グレイを連れた俺が止めたので変な顔をされたが、銀貨五枚を差し出すと貸し切り客と知り笑顔になる。
* * * * * * *
馬車の後を付いてくるグレイは、走るのが面倒になったのか
馬車の中へジャンプしてきて寛いでいる。
最近は見えない場所にもジャンプ出来る様になったので褒めていたら、俺の気配を探ってジャンプしているだけの様だった。
商業ギルドに到着すると、無賃乗車がバレない様に馬車の下にジャンプするずぼらな奴。
表の警備員から離れた場所にグレイを待たせると、前に立ち塞がろうとする警備員に商業ギルドのカードを示して中へ入る。
にこやかに迎えてくれる警備員に、残高確認と鍛冶屋の紹介を頼みたいと告げるとあからさまに態度が変わったが、それでも出納係の所へ案内してくれた。
「どの様なご用件でしょうか」
「残高確認と、幾つかの腕の良い店を紹介して欲しいのですよ。残高の範囲内での予算でね」
俺のカードを持って奥へ行ってしまったが、直ぐに紙片を持って戻ってきた。
「此方がランディス様の残高で御座います」
差し出された紙には33,930,000ダーラの文字、マジックポーチに26,000,000ダーラ少々有るので腕の良い店を紹介してもらおう。
「腕の良い店と申しますと?」
「冒険者用の服とブーツに短槍を注文したいのですよ」
「ブーツと短槍はそれぞれ評判の店をご紹介出来ます。服に関しては係員を呼びますので暫くお待ち下さい」
商談室へ案内されて暫く待たされたが、やがて愛想の良い男が現れた。
開口一番「お客様のご予算ですと、魔法攻撃防御を付与した特別なお衣装をお作りになれます」とにっこり笑って揉み手をしてくる。
こいつは俺を鴨だと思っているようだが、魔法攻撃防御の付与とは聞き逃せない。
「魔法攻撃防御の付与とは?」
「耐衝撃・防刃・魔法攻撃防御の三種で御座います。それとは別に快適に過ごす為の体温調節機能も付与出来ます。本来は王家や高位貴族の方々がお召しになられる御衣装に施される物ですが、高ランク冒険者の方も御愛用なされています。特別な布に魔法を付与する為に、それなりのお値段になります」
素敵な営業トークだが、俺の懐具合を知った上で勧めてくるのだから買えるって事だな。
残高33,930,000ダーラだが、マジックポーチに26,000,000ダーラ少々有るので使い切っても困る事はないな。
「それでお願いしたいので紹介状を書いて・・・」
「店舗は御座いません。仕立屋がそれぞれのお屋敷かホテルに出向いてのご相談となります」
「そいつはちょっと無理だな。少々大きな使役獣を連れているので、ホテルには泊まれないのだ」
「それでしたら明日、当ギルドへお越しいただければ仕立屋を手配しておきますが」
それで了解して商業ギルドを後に、ロイーズ通りのウィルランド皮革店に向かう。
中々立派な店構えで、入り口横には見事な・・・装飾過多な鎧が飾られていて、職人の腕を誇示している。
辻馬車から降りた俺を見て、警戒気味の店番に商業ギルドの紹介状を示す。
耐衝撃・防刃・魔法攻撃防御の魔法を付与出来る物と告げて、ブーツの採寸を済ませて半金の金貨15枚を支払い、八日後の受け渡しを約して店を出ると次はルビエル通りのヘイマン鍛冶店だ。
此処は鍛冶工房なので、店番のお弟子さんが迎えてくれて注文を受け付けてくれた。
片刃の銃剣スタイルのショートソードを見せて、此よりも刃幅が広く頑丈な短槍を注文する。
柄の長さは1.8m程で穂の長さはショートソードと同じ60㎝をお願いし、柄は頑丈にと注文しておく。
此処も半金の金貨七枚を支払って八日後の受け取りにしてもらった。
* * * * * * *
翌日再び商業ギルドに出向き、商談室で生地の説明を受けてから採寸をする。
上着はフード付きで襟は少し高めで袖は絞れるようにし、裏にマジックポーチを隠して装着出来る様にして貰う。
ズボンはカーゴパンツの様にサイドポケット付きで、此も裾を絞れるようにお願いする。
序でに手袋と帽子、帽子は耳当て付きの防寒帽のように丸く頭を包み耳当ては跳ね上げられる造りだ。
此なら耳当てを降ろしていれば後頭部もある程度守られるだろうし、攻撃を受けた時にフードを被るまでの一時しのぎになる。
顔は・・・フルプレートアーマーを作る訳ではないので、幸運を願って諦めよう。
生地代や帽子手袋まで含めて総額23,800,000ダーラ金貨238枚、お高いが命には替えられないので黙って頷いておく。
支払いは商業ギルド任せで、仮縫いは商業ギルドで二週間後と決まった。
こりゃー当分モランドの街から動けそうもない。
北門の警備兵にホールデンス公爵様の身分証を示して、暫く街に留まるのでと断り大きめな土のドームを作らせてもらう。
こんな時は公爵様の身分証が大いに役に立ち、公爵家の御利益に感謝しておく。
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