第31話 阿片戦争⑥
キジの女王たちは本拠地『赤の間』になんとか到着しました。キジの女王は、仲間たちの長い戦いでの疲労と、襲ってくるおばあさん側のキジたちの阿片の効能切れを考え、作戦通り、籠城戦を決意しました。
迫り来る阿片漬けにされた同胞たちは激しく攻撃を仕掛けましたが、赤の間はキジのオスたちの羽で作られた堅牢なものであり、侵入することはできませんでした。時が経つにつれ、阿片の効力が切れたキジたちは次第に力尽き、やがて地面に倒れ動かなくなりました。
それを目の当たりにした女王たちの間には安堵の声が漏れる一方、桃太郎農園によって同胞が阿片に洗脳されて、自分たちを襲うように仕向けられた事実に悲しみの声も上がりました。女王は静かに語りました。
「まだ安心してはならぬ。我が同胞を洗脳した桃太郎農園の者たちが再び襲いかかってくるやもしれぬ。気を引き締めなされ。」
女王の言葉はまさに的中しました。しばらくして、馬に乗ったおばあさんとその側近たちが赤の間の周辺に現れました。おばあさんは倒れ伏す阿片漬けのキジたちを見下し、
「もうくたばっちまったかね。役立たずどもが」
と冷たく吐き捨てました。そして側近たちに命じて、死体を回収させました。
そして、おばあさんは赤の間に入り、おとなしくしているキジたちに向かって、声を張り上げました。
「なにおとなしくしてるんだね! わしがお前たちの同胞を阿片で洗脳したのじゃよ! 恨んでいないのかね? いますぐ襲ってこないものかね、この意気地なしどもが!」
その言葉は、赤の間に籠るキジたちの胸を激しくかき乱しました。多くのキジが怒りに震え、外に飛び出しておばあさんを倒したいという思いに駆られました。しかし、女王が『籠城戦が我々に残された唯一の道だ』と下した決断を尊重し、誰一人として赤の間を出ようとはしませんでした。
その様子をみて、おばあさんは不気味に笑い出しました。そして、おばあさんは途中で捕らえた女王側のキジを長い槍に刺し、その無残な姿を天に掲げて叫びました。「キジども、よーく見とけよ!」
赤の間のキジたちは騒然となり、その中で、一羽の雌キジが
「あれは私の夫よ!」
と泣き叫びました。
おばあさんはそのキジを火であぶり、燃やし尽くしました。そして、それをその場で食べてしまったのです。その光景に耐えかねた雌キジは怒りと悲しみのあまり赤の間を飛び出し、おばあさんを倒そうとしました。しかし、キジの女王は必死にその雌キジを止めました。
「なんて卑劣な作戦だ……」
キジの女王は苦しげに呟きました。しかし、長引く戦いで疲弊したキジたちには今ここでおばあさんと戦う力は残されていませんでした。彼らは籠城戦を続けるほかありませんでした。
こうして、卑劣な策略が繰り返され、キジたちの苦しい籠城戦はなおも続いていきました。
一方そのころ、桃太郎農園では、主人である桃太郎が眠りに落ちる直前に言った「青梨亜成が巨大樹に向かっているかも」という一言が気になっていた柿万次郎が、巨大樹のもとに到着したところでした。
そこには、桃太郎の予感があたり、天まで伸びる巨大樹を見上げる青梨亜成がいたのでした。
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