第14話 雉桃猿合戦⑤
少し時間は戻り、場所をキジの森、時間は桃太郎農園と貿易関係が結ばれたところまで戻ります。
桃太郎農園からもらったきびだんごの貢ぎ物はキジの森の民たちの宴会の中で振舞われ、それを食べたキジたちは湧き上がる高揚感と力に舞い上がりました。その様子をみて、キジの女王もきびだんごを一つ食べると、みるみる陽気になり、
「桃太郎農園にはこんなに美味なものがあるとは思いもしませんでしたわ!」
と称え、歌いだしました。
この日の宴会は大いに盛り上がり、幕を閉じました。
問題が起き始めたのは宴会の翌日になってからでした。
キジの女王は、身体がきびだんごを食したときの高揚感を求めていることに気づきました。この食欲とは違う違和感にキジの女王は危険だと考えました。キジの女王は急遽会議を開き、桃太郎農園とのきびだんごの貿易の禁止を決定しました。
しかし、キジの民たちはこの決定に反発しました。この時、キジの民たちは、阿片はおろか依存性のあるものを認知していませんでした。そのため、キジの朝廷はきびだんごの危険性を説明することができず、また、民たちはおいしい食べ物を国の利益の関係で規制しているに過ぎないと感じたのでした。
このような状況が一カ月半続きました。その間に、きびだんごの依存性はキジの森を支配していました。キジの民は、きびだんご欲しさに禁じられた貿易を続けました。きびだんごは表の市場には出ないものの、裏では多くのキジの民に流通し、依存性を増していきました。この状況を朝廷側ももちろん把握し、きびだんごの密貿易を行う首謀者をとらえ、処刑を行いましたが、捕えてはまた別の首謀者が現れるというのを繰り返すだけで、成すすべがありませんでした。
このような状況にキジの女王は困り果てました。しかし、その時に、救いの手がかりとなる一報が届きました。この一報は北の猿の山に手配されたキジの偵察者から伝えられました。
「北の猿の山は、桃太郎農園と同盟を結びました。我々との貿易関係も同時期に結ばれていることから、桃太郎農園は鎖国を取りやめ、周辺国との関係を強化しようとしているようです。」
ここで、視察者は一息置き、そして、キジの女王の目を見つめ言いました。
「そして、その同盟締結時、猿の山にきびだんごが振舞われたそうです。」
これを聞き、キジの女王は立ち上がり、
「桃太郎農園は周辺国にきびだんごを配り、そして、混乱に陥れようという策略だったのですね。なんと愚かさ作戦なのでしょう!桃太郎農園も堕ちたものですわ。」
と言い放つと、また台座に座り込み、目をつむり、これから打つべく戦略に向け、思案に耽けました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます