15.けついあらたに

「ごちそうさま」



「は~い。あっ、ルーシャス様、今日もキレイに食べられましたね~♪」



「うん、いつもありがとね、ミーナちゃん」



「いえいえ~」



もう何日繰り返されたか分からないいつもの会話。いや、頑張ったら分からないでもないな…。

毎日のことでも当然ミーナちゃんへの感謝は忘れない。早起きして俺だけのために朝ごはん作ってくれてんだもんな。…なんか新婚みたいだな。


俺が食べ終わった皿を嬉しそうに片付けるミーナちゃんを見て少し頬を緩めながら、しみじみと感慨にふける。


















この世界に転生して1年とちょっと。

早々に言語をマスターしたり、魔法スカートめくりを使ったり、ネコ耳メイドちゃんがいてもなんとも思わなくなったり……。

いつの間にかすっかり慣れてしまった自分に驚く。

まあ慣れやすい環境ではあったんだが。

時間や重さなんかの単位も全部一緒だし、服装も地球と何ら変わらない。まあ中世ヨーロッパ風ではあるが。

ここの環境が地球と近かったからこそ、今平然としていられるんだ。


もちろん違うこともたくさんある。

まず季節だ。日本前世と同じ様に春夏秋冬はあるが、この世界では1月が春だ。

日本でいう4月くらいにあたる。

だから俺が生まれたのも新学年が始まるのも1月。なんともキリのいいスタートだが、4月が当たり前の俺にとっては随分と不思議な感じがする。

ちなみに俺が生まれたのが1月15日。お姉様が高校へと出て行ったのが1月10日。…なんかマジで同情してきた。


それから、この世界は地球とは違って魔法が発達した世界だ。

家や街の機能は全て魔法によるものだ。一見地球にもあったようなものでも、その仕組みは全然違う。


さらに、身分制がある。

奴隷こそいないが、一般市民、3等貴族、2等貴族、1等貴族、王族と明確に分けられている。貴族の1等2等3等というのは、貴族という大きなくくりの中での格付けだ。だから大雑把に分ければ一般市民、貴族、王族となる。この格は王国の騎士団で成果をあげたり、政策会議で出した案が成功したりすると上がることがある。どっちをやるにしても、優れた武力か頭脳がないとできない。結果として優秀な者が残っていく訳だ。

ちなみにうちは2等貴族。代々続く騎士の家系だそうだ。

元々は3等貴族だったが、数年前に魔獣の群れが襲ってきた際、休みだった父さんと母さんが真っ先に討伐に向かって、騎士団が来る前に殲滅したんだとか。その活躍で2等貴族にあげられたんだってさ。

ちなみに魔獣討伐数は大体父さんが10で母さんが20。…母さんパねえ。



イーナさんとミーナちゃんは一般市民からうちのメイドさんになることで3等貴族になった。メイドさんの身分は主人の1つ下になるらしい。

元々父さん付きだったメイドさんが父さんの知り合いの1等貴族に気に入られてそっちのメイドさんになったため、代わりとして長女のイーナさんが父さん付きに、次女のミーナちゃんが俺付きになったんだとさ。

ややこしい事情ですなぁ…。











そんな地球に似ていながらも全く違う世界で俺は生きていく。パニクったら走り回る父さん、パニクったらフラメンコを踊る母さん、パニクったら機械的に笑いながらタップダンスを踊るジュリアお姉ちゃん、パニクったらしばらく硬直するイーナさん、可愛くてしっかり者のミーナちゃん。……あれ?ミーナちゃん以外ヤバい人じゃね?

……。え、ええっと、とにかく生きていく。見た目は子供、頭脳は大人を地でいく俺が将来どうなっているのか想像もつかないが、他の転生者には負けたくない。

前世みたいな半端な生き方はしたくない。

せっかくやり直しのチャンスを貰ったんだ。とことんまでチート化してやるぜ!









グッと拳を握る俺を見て、ミーナちゃんは首を傾げるのだった。

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