Column1 「マジ」はいつから使われた言葉か

 今回は「マジ」の時代背景について取り上げてみようと思います。


     ☆


 皆さんは、「マジ(まじ)」という言葉を使っているでしょうか。


 例えば、


 ——来週、英単語の抜き打ちテストがあるらしいよ。

 ——え、マジで?


 というような使い方だったり、


 ——仕事でやらかしたぁ。まじで聞いてくれない?


 というふうに使うかなと思います。


 意味は「本気・本当であること」(『明鏡国語辞典 第三版』より引用)です。

 そのため、「まじめ(真面目)」の略語と言われています。


 くだけた言い方であるため、案外新しい使い方であると思っている方も多いかもしれません。

 しかし「マジ」は江戸時代からある言葉なのです。


 さらに言うと、「まじめ」も同じ江戸時代から使われている言葉のようです。その点について、辞書編纂者へんさんしゃである神永曉氏の著書では次のように書き記されています。


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 この「まじ」だが、本当だとか、本気だとかという意味であることは容易に察しがつくと思う。ふつう「まじ」は「まじめ」の略だと言われている。だが、「まじめ」も「まじ」も使われ始めたのは同じ江戸時代からということはご存じだろうか。

『日本国語大辞典』によれば、文献に現れた最初の例は、百数十年の違いはあるものの、どちらも江戸時代の小説なのである。

「まじめ」の例はというと、主に上方で広まった仮名草子と呼ばれていた小説『仁勢物語にせものがたり』(1640年頃成立)のものが現時点では一番古い。(中略)

「まじ」は、洒落本しゃれぼん『にゃんの事だ』(1781年)の例が最も古い。(中略)

 文献例では百数十年の違いがあるものの、「まじめ」も「まじ」も、ともに江戸時代から使われたとすると、どちらが古いかはにわかに決めがたい気がする。

(『悩ましい国語辞典』より引用)

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 上記の引用にもあるように、「まじ」も「まじめ」も江戸時代から使われていることが分かるかと思います。

 そして現時点では、「まじめ」と「まじ」のどちらが本筋なのかどうかが、実は分かっていないということなんですね。


 もちろん、現在使われている「まじ」と江戸時代の「まじ」の用法は少々違います。

 しかし、「まじ」が江戸時代から使われていたと知ると遠い時を経て今もあることのすごさは感じられるのではないでしょうか。


「マジ」が会話の中で多用されるようになったため、「若者言葉」とか「ボキャブラリーが足りない」となげく声も聞きますが、言葉は使わなければ消えていってしまいます。そう考えると、江戸時代に生まれ、現在では沢山の人に使われている「マジ」の人気ぶりはすごいものがあるなと個人的には思います。

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